愛知県に本社を置き、自動車関係のゴムや樹脂を製造している新光ゴム工業株式会社。創業70年を越える老舗のメーカーです。
バックオフィスでは、紙を使った非効率な業務が多いことが課題でしたが、脈々と続いてきたやり方を踏襲することも多いのが実情でした。そんななかで、どのようにfreee導入を実現したのでしょうか。また、導入したことによる成果はどのようなものだったのでしょうか。
総務部 部長代理の見廣智史さん、総務部の高村やよいさんにお 聞きしました。
創業70年を超える製造業がバックオフィスの課題とは
ーー貴社の事業内容と、お二人のプロフィールを教えてください。
見廣智史さん(以下、見廣) 当社は愛知県を拠点に、一貫してゴム・樹脂製造を行っています。特に自動車関係のゴム、樹脂類を製造していて、オフィスや工場の拠点が複数あります。
私は総務部の部長代理ですが、現在は部長が空席のため責任者となっています。本社には私を含めて4名、工場に3名のメンバーがいて、7名で経理や人事などの業務を担っています。freeeの導入も総務部が担当しました。
高村やよいさん(以下、高村) 総務部の本社メンバーで、経理業務のなかでも特に仕入れの領域を担当しています。freee導入に際しては、情報収集や導入の提案をして、実際に導入を推進しました。
ーーfreee導入前、バックオフィスにはどんな課題がありましたか?
見廣 とにかく業務が煩雑になっていました。社内で発生する紙の伝票を税理士事務所に渡して、事務所で会計ソフトに入力してもらい、財務会計の決算を組んでいました。一方で社内では、別の会計ソフトに情報を入れて、管理会計に使っていました。
二重になってしまっている会計情報を後から突合する必要があり、私がチェックしていました。社内でまとめていた管理会計では、極端に言えば1,000円単位で計算していけばいいものです。大きな数字がずれることはないですが、1円単位の精度で「これは課税だ、 非課税だ」などの判断をする財務会計の数字と比べれば、正しい数字とは言えません。
だから、試算表の残高が合わないことがよくあり、この差異を調整するために、決算書を見て答え合わせをしているような状態でした。今から考えると本当に無駄で、大変でしたね。
高村 社内ではその管理会計に使用するソフトのほかに、買掛金・売掛金を管理するシステムも持っていました。日々の業務では、私たちはシステムに入力をして、できあがったデータを紙で出力して、それをまた管理会計用のソフトに入れたり、紙をもとに伝票を起こしたり……。「何をやってるんだろう」と、ずっと疑問に思っていました。手間がかかるし、ミスの原因になります。自分でミスをしてしまって、それを修正する時間を取られるのが苦痛でした。
見廣 要するに、当社の70年以上の歴史のなかで、継続することを重視しており、変化には慎重になっていました。今までの方法を教えられたまま踏襲しているので、自分たちがやっている業務を自ら作っていないわけです。
そこで、経営層として「変えていかなければならない」とメッセージを発しました。さらに、コロナ禍になって、リモートワークを推進していく必要が生じ、「このままではできない」と感じていたとき、高村がfreeeの情報を持ってきてくれたんです。
「いい加減、ここをなんとかしなきゃいけない」の解決にfreeeを導入
ーーfreee導入の経緯を教えてください。
高村 名古屋で開催された総務系のイベントに参加したとき、freeeさんが出展していました。名前は聞いたことがあって興味はあったのですが、イベントで詳しくお話を聞いたときに「これは良いな」と。
特に、会計と人事労務がつながっていることを魅力に感じました。もともと当社の人事労務はすべてアナログ的に処理していて、「いい加減、ここをなんとかしなきゃいけないよね」「全部まとまっていたらいいよね」と話していたんです。freeeを導入すれば初めて一歩前に進めると感じ、会社に持ち帰って提案しました。
見廣 イベントには私が行けなくて、メンバーに参加してもらったんです。高村が積極的に情報収集をして、具体的な提案をしてくれたので、話を聞いたときには、もう変える意識が強くなっていました。高村がいたから変えられたという部分は大きいですね。
ーーfreeeを選んだ決め手は何でしたか?
見廣 freeeの営業・橋本さんが親身になって相談に乗ってくれたのが大きかったです。私としては、ずっと変えてこなかったものを変えるとなると、やはり不安なこともあるんですよね。そういうことに関して、「これはできるんですか?」と尋ねると、テンポ良く回答してもらえて、非常に助かりました。他社製品との比較もしていましたが、導入サポートはfreeeの魅力でした。
ーーどのような流れで導入を進めましたか?
見廣 2020年2月に高村がイベントに行って、5月までには導入を決めました。8月から導入支援が始まって、11月から本稼働させました。freee会計とfreee人事労務を入れ ています。
実は、こんなにスピーディに進むとは私たちも思っていなかったんです。当社で何かを変えていくときには、担当者や税理士などとの調整含めてかなり時間がかかるので、最短でも1年はかかると思っていました。でも、ちょうどコロナ禍になり、早めにリモートワークができる体制を構築しておく必要がありました。結果的に、導入支援が始まってから3カ月で導入することができました。
ーー導入時に大変だったことは何ですか?
見廣 やり方を変えたいと思っている人ばかりではないので、変わることへの抵抗は少なからずあります。その際に大事なことは、変えた後の業務をイメージできて、そちらにメリットを感じられるかどうかだと思うんです。このようにイメージを共有していくところが大変でしたね。
実際には、橋本さんからいただいた資料を使いながら「こういう連携ができる」「こういった効果がある」と伝えて、社内でリードしていきました。
属人化した業務を見える化しfreeeを導入 会計コストを3〜4割削減
ーーfreeeを導入したことによる変化や導入して良かった点を教えてください。
高村 経理では、書類一枚ごとにハンコを押すような作業から解放されたのは大きかったです。
また、freeeの導入に向けて、全員が業務を見直せる機会になりました。費用担当者は費用のこと、売上担当者は売上のことというように業務を細かく分担しているので、それぞれの業務だけを見て進めて しまっていました。そうした業務を棚卸しできただけでなく、「どんな気持ちで取り組んでいるのか」を共有し合えたのは良かったです。
見廣 経理は明確に業務分担をしてきた分、属人的になっていました。それがいまでは、自分の業務だけではなく前工程・後工程について、完全ではなくても把握することで、周りへの気配りができると思います。そうした効果は定量的に計ることはできませんが、会社の文化として広がっていくと良い効果が生まれるだろうと感じています。
また、コスト削減にもなりました。それまでと比べると、会計ソフトの支払額だけでもfreeeに変えたことで3〜4割削減でき、さらに業務負担も減っているので、実質的にはより大きなコスト削減になっています。
それから、freee人事労務導入の効果は圧倒的でした。導入前と比べると、作業時間が10分の1以下になっています。
以前は紙のタイムカードを使って勤怠を管理していました。打刻されたタイムカードに、残業時間などの情報を書き込んでいて。ベンダーや税理士事務所との間では、ファックスやメールで紙の資料をやりとりしていたんです。そして、税理士事務所で給与計算をしてもらって、終わるとまた紙で届く。今度は、それを社内の担当者がインターネットバンキングに手入力して、振り込み作業をしていました。
今回、freee人事労務を導入したことで自動計算になり、振り込みデータも自動で作られます。これは非常に楽になりました。導入も非常に簡単で、私と担当1人が少し触ってシミュレーションをした程度で、 スムーズに移行できました。
会計・人事労務ソフトの導入前にまずは業務の棚卸しが重要
ーーfreeeの導入を検討されている企業の方にメッセージをお願いします。
見廣 特に製造業の企業はこれから会計・人事労務ソフトを導入するところも多いと思いますが、新しいソフトを導入さえすればいいとは限りません。先ほど高村が言ったように、業務の棚卸しが重要だと思います。まずはそれぞれがやっている業務を整理してみて、「freeeを導入するべきかどうか」「本当に導入するつもりで見てみたときにどうなのか」を考えていくと、業務を改善する良いきっかけになるのではないでしょうか。
高村 freeeは簿記の知識がなくても簡単に使える分、もともと持っている簿記の知識とは合わないところもあり、戸惑うこともありました。私と同じように、変えることに抵抗があったり、freeeに最初は戸惑ったりする方もいると思います。
ただ、実際に導入してみて、簿記の知識も持ちつつfreeeの観点でも理解ができたら自分にとってプラスだ、と感じるようになりました。新しいことを学んでいくことが私には良いチャレンジになったので、おすすめしたいですね。
ーーこれからのバックオフィスにどんな展望を持っていますか?
高村 昨年にfreeeを導入し、まだ活用しきれていない機能があります。せっかくfreeeを導入したので、「なぜいま使えていないのか」を検討して、使える部分はきちんと活用していきた いです。
見廣 freeeは会計データのインポート・エクスポートをしやすいかたちにしてくれているので、他のソフトと比べてもデータベースとして扱いやすいです。分析をしやすくなったので、数字だけを出すのではなく、数字を見ながら「時系列で見て、どうしてこうなったのか」「何をしたらここを伸ばせるのか」と考える時間を増やすことができました。そして経営層や部門長に対して、的確な情報を渡せるようになっています。これからも、的確に情報提供していく機能を担っていきたいですね。
(取材・執筆:遠藤光太 編集:ノオト)