株式会社N-Village CSO(Chief Strategy Officer)の佐々木 俊典 氏と野村證券株式会社 主計部 エグゼクティブ・ディレクター 吉川 太郎 氏、主計部 吉川 尚孝 氏に、導入までの経緯や利便性を伺いました。
――設立の経緯や御社サービスへの想いを教えてください
野村グループの新ビジネス創出を目指して2017年4月に設立
佐々木氏 : 株式会社N-Villageは、既存の金融サービスを根本から変える新しいサービスやテクノロジーの調査、ベンチャー企業などの他企業と連携したサービス開発、得られた知見を野村グループに共有するなどの活動を通じて、グループの事業開発を促進しています。対象とする事業領域は多様で、様々な分野の企業との協業を行う予定です。現在、証券業は大規模な企業・業態が多く、機動力に乏しいのが事実。N-Villageでは将来的に、証券業の現状を破壊してしまうような、イノベーティブなサービスを開発するのが目標です。
企業等との連携や支援に際し、野村グループは資金提供ためのファンドを設立しています。ファンドの規模は100億円程度。我々はファンドの運営には直接は関わりませんが、様々なステージのスタートアップやベンチャー企業と協業プランについて話し、ファンドに紹介します。
吉川(太)氏 : 野村證券創業者の言葉「証券報国」(「証券を通じて国家に貢献する」という意味)が示すとおり、野村グループのミッションは「金融資本市場を通じて、真に豊かな社会の創造に貢献する」こと。「すべてはお客様のために」というメッセージの源流にもそうした「証券報国」の精神があります。
佐々木氏 : 野村グループの「金融資本市場を通じて、真に豊かな社会の創造に貢献する」ことと、freeeの「テクノロジーを使って人事・会計を効率化し、企業をサポートする」こと。この2つの企業ミッションには通づるものがあります。価値観など、我々の考えとリンクする領域が大きいので、freeeを選ぶのは自然な流れでした。
――freee導入のきっかけとご利用状況を教えて下さい
経理業務の改革余地は十分にある
吉川(太)氏 : 野村ホールディングス株式会社 主計部では、現在国内のグループ会社4社の経理業務を本社で受託。グループ財務会計業務の効率化を行っています。特に、ここ3年間は本社も含めた経理業務の改善に注力してきました。
私自身は十数年前に一社員として財務会計に携わった後、転属・海外転勤を経て本社に戻ってきました。しかし、野村ホールディングスおよび野村證券の財務会計責任者として戻ってきて驚いたのは、業務内容について。決算プロセスやシステム環境が当時と抜本的には変わっておらず驚くとともに、「これでいいのだろうか?」と疑問を抱きました。
先輩に「他社を見てみなさい」とアドバイスを受けたこともあり、それからは何か得るものがないかと、藁にもすがる思いでさまざまな業種の企業を訪問してきました。その中でも特に衝撃を受けたのが、数百の連結子会社を持ち、数万人の従業員数が働く企業。たった3-4人でそれだけの規模の連結決算を行っていたのです。システム統一やアウトソースの積極活用、ITテクノロジーの導入など、様々な学びを得ることができ、自社のアドバンテージと改善点を明確に認識しました。長年慣れてきた手法に疑問を持ち、他社のやり方を積極的に取り入れる。freee導入前の背景には、そうしたバックオフィスに対しての思いがありました。
金融機関こそ「すべてをクラウド化」すべき
吉川(太)氏 : 経理業務を最適化し、効率化をはかるために、他部署の方々や国内外のグループ会社の経理担当者などに複数のインタビューを実施。他社のやり方もベンチマークし現状の問題点をまとめ、「今、どういう経理が必要か?」を模索する中、freeeを使うことが選択肢の一つに入り、導入に至りました。
佐々木氏 : 株式会社N-Villageでは、「すべてをクラウド化しよう」というコンセプトに基づき、基本的にすべての社内業務をペーパーレスで行っております。極論ですが、紙で情報をやりとりした場合、外部に流出してしまう可能性が発生しますが、デジタルであればアクセス権の設定等で情報のコントロールが利きます。
いまだに紙のやり取りが多い我々金融業ですが、そうした意味で、金融機関こそペーパーレスにすべきだと考えています。freeeをきっかけに、我々は「ノートPCひとつでどこまで仕事できるのか」を追求する。証券業界では異質な社風を持った会社かもしれません。
他の会計システムと比べて実感したfreeeの優位性。
銀行口座自動連携機能、消し込みマッチング自動化で効率化
吉川(尚)氏 : 株式会社 N-Villageにfreeeを導入して感じたのは、その使い勝手の良さ。freeeは操作性が高く教育コストも低いため、社員が容易に使えることに加え、外部委託先にも導入しやすいと感じています。
佐々木氏 : 当社のスタッフは皆、ビジネス開発やITが専門。経理専任ではないスタッフ全員が使うものだからこそ、簡単なインターフェースでなければ根付きません。私自身、CSOという立ち場でfreeeを実際に使ってみたのですが、他社会計ソフトに比べて圧倒的にUIが優れています。会計・経理初心者の私が見ても特段悩みどころがなく、分かりやすい作りなので助かっています。
吉川(尚)氏 : 当社に入社前は、経理業務はオートメーション化・効率化が進んでいるのだろうと思っていました。しかし、実際は手作業の業務も多く残っていますし、グループ会社の中には市販会計ソフトを使っているところもあります。市販会計ソフトと比較して、freeeの機能である銀行口座との自動連携、消し込みマッチングの自動化など、とても効率的な仕組みが充実していることが分かります。会計業務の品質を維持しつつ、経理業務を効率化するのに、freeeは最適なツールだと思います。今は導入段階ですが、うまく機能することが実証できた際には他のグループ会社にfreeeを横展開していくことも視野に入れています。
金融業には複雑な会計処理が必要な取引もありますので、freee導入の障壁が高い部分もあります。しかし、一部の事業会社では、freee導入による業務効率化が可能だと考えています。会社規模・事業内容により今後freeeを導入するか否かを選別して、より効率的な会計処理の仕組みへと刷新していきたいです。
佐々木氏 : 今後、freeeを利用しているベンチャー等のデータを様々なステークホルダーがシームレスに共有できるようになると、金融業に軸足を置く我々としても魅力のある新しいサービスを開発できるという期待があります。協業先の会計業務に口を出すことはありませんが会計ソフト選びに悩んでいるならば、今後、freee導入を勧めていきたいと思います。
――今後の展望について教えて下さい
単純な定型業務を減らし、経営アドバイスや会計ガバナンスの構築に優秀な人材を投入
吉川(太)氏 : 野村グループとして、理想の経理業務の姿を考えてみますと、業務効率化もさることながら、アウトソースの活用とテクノロジーの導入をうまく使い分けることが大切だと考えております。
そのうちのテクノロジーの導入が目下の課題ですが、freeeに期待している部分でもあります。株式会社N-Villageにおけるfreeeの事例を元に、RPAの活用と併せて経理業務の完全なるオートメーション化を行うのが当面の目標です。単純な定型業務、ルーチンワークを可能な限り減らし、社内の人材リソースを会計・開示ガバナンスの構築や経営アドバイス、ビジネスへの会計的支援など代表される高付加価値業務に投入したいと考えています。freeeを一つのモデルとして、より効率的かつ高品質な経理フレームワークを構築していきたいです。