株式会社メドレーは、テクノロジーを活用した事業やプロジェクトを通じて医療ヘルスケア分野の課題解決を目指すベンチャー企業です。現在は、「ジョブメドレー」「MEDLEY」「介護のほんね」「CLINICS」の4事業を展開して います。
同社はサービス拡大に伴い顧客数が倍増。より複雑化するバックオフィス業務を効率化するため、2017年にfreeeを導入しました。その後、既に社内で活用していたSalesforceと連携すべくfreee for Salesforceを導入。エクセルやスプレッドシートに頼らない管理体制を構築していると言います。
どのように営業とバックオフィスの仕組み化を実現しているのでしょうか。
今回は株式会社メドレーの執行役員 田中大介氏、CLINICS事業部 小川光栄氏、財務経理部の坂本彩香氏に、freeeへ切り替えるまでの経緯と、同社で活用しているSalesforce、そして連携導入したfreee for Salesforceについてお話を伺いました。
――設立の経緯や御社サービスへの想いを教えてください
凡事徹底、当たり前のことを非凡な水準でやりきる
田中 医療ヘルスケア分野にはさまざまな課題が存在します。弊社は誰もが納得できる医療の実現を目指し、情報の非対称性と非効率性を解決するサービスを4事業展開しています。
主力事業であり創業以来続く「ジョブメドレー」は、医療介護従事者のマッチングを行う人材採用プラットフォーム。医療ヘルスケア分野における人手不足解消を目指し運営しています。
オンライン医療事典「MEDLEY」では、医療に関する情報を一般の方々にも分かりやすく届けることをモットーに医療情報を提供。医師が責任編集し、「医療に向き合う力を」を合言葉に、情報の非対称性を解消しようとしています。
「介護のほんね」は、介護施設の口コミ 、写真などを掲載し、入居前の不安を解消して納得できる介護施設選びのサポートをしています。3年前にスタートしたクラウド診療支援システム「CLINICS」は医療機関向けのSaaSです。サービス開始当初は、ビデオチャットで診察できる遠隔診療システムでしたが、現在は予約管理やカルテ、レセプトなどの機能も含んだ、医療機関と患者様をつなぐプラットフォームとして成長しています。
執行役員 CLINICS事業部 副事業部長 田中大介 氏
Googleにてクラウドの部門のセールス(SDR、オンラインセールス、フィールドセールス、パートナーセールス)を経験。最終的にエバンジェリストとして各地で講演を行う。2016年、CLINICS立ち上げのタイミングでメドレーにジョイン。現在は事業責任者としてCLINICS事業全体に関わっている。
小川 メドレーの行動規範に「凡事徹底」という言葉があります。 たとえば私の所属しているカスタマーサクセスグループでは、CLINICSのオンライン診療システムを医療機関が迷いなく使いこなせるよう、お客様への操作方法のレクチャーや設定作業のご支援をしっかりと行っています。1人の担当が受け持つ医療機関が増えたとしても、お客様にとっては、その担当が当社 の顔となるため、当然のことながら、お客様への対応の一挙手一投足が満足度に直結します。メールの返信を丁寧かつタイムリーに行うなど、価値基準の中でも特に「凡事徹底」を重視し、当たり前のことを非凡な水準まで極めていくことで、お客様の信頼をしっかり勝ち取っていくことを強く意識しています。
CLINICS事業部 カスタマーサクセスグループ グループマネージャー 小川光栄 氏
グリー株式会社にて、ソーシャルゲームプラットフォーム事業のサポートからディレクター、事業開発と多角的に経験。「介護のほんね」を新規事業として立ち上げ、メドレーに出向、転職。メドレーでも管理部門の責任者や、求人サイト事業の制作に関わる。現在はCLINICS事業部のカスタマーサクセスグループでマネジャーを務める。
――freee導入のきっかけとご利用状況を教えてください
1,000件を超える人材採用事業の仕訳が短時間で終わり、請求書業務の手間も半減
坂本 当社の主軸事業、ジョブメドレーは事業所と求職者をつなぐ人材採用プラットフォーム事業です。1件当たりの売上金額が細かく積み重なって会社の屋台骨を支えているのですが、月末には1,000件を超える入金があり、大量の仕訳計上が集中して発生してしまいます。
freee導入以前は他社のクラウド会計システムを使用していました。しかし、1度のデータインポート件数に上限があり、何回も細かくインポートする必要があるなど、作業効率に課題がありました。試算表のデータ抽出の際にも時間が掛かり、作業に支障をきたすこともしばしば。細かい点での不満が蓄積していました。
freeeに切り替えてからは会計の基本的な機能により課題解決。短時間で仕事が終わるようになりました。
そのほかにも、債権回収にもうれしい変化がありました。freee導入以前は債権回収のデータをスプレッドシートとシステムの両方で別々に管理していました。債権回収のたびにスプレッドシートと会計システムを行き来し確認の手間がありましたが、freeeでは一元管理が可能です。メモタグを使って会計上のデータと、詳細な顧客情報の連携を実現していますので、手間なく管理が行えます。
freeeは基本機能が充実しており、債権回収同様、メモタグで請求書周りの負担が軽減しました。別個に存在していた会計システムと、請求書のシステムを一つにまとめられたのです。事業部側から請求書の作成依頼を受け取り、請求書を作るのですが、これまでの会計システムでは、仕訳を行うための会計データを別に作成しなければならない。同じ作業が二度も発生していたんです。今はfreeeで請求書を作成できますので、作業工数は半減しました。
コーポレート本部 財務経理部 坂本彩香 氏
株式会社じげんにて経理を担当。2018年、これまでのクラウド会計システムからfreeeに移行するタイミングで、メドレーに入社。現在は財務経理部で経理を担当。
入金確認の工数を9割削減、月末月初の心理的負担も解消
坂本 当社のお客様のなかには医療機関がたくさんいらっしゃいますが、たとえば日本全国には「サイトウクリニック」という名義がたくさんあります。振込み名義人の重複が発生しやすく、入金確認や突合のため経理4人が月末月初、3日間フル稼働で対応しなければならないほど時間がかかっていました。
この負担を軽減するため、弊社ではバーチャル口座番号(銀行が事業者に提供する振込専用の仮想口座番号)を活用。バーチャル口座に振り込んでいただくことで、すぐに入金を特定できるようになり、検索性も高まりました。今では1〜2人で3日ほど、しかも各日に2〜3時間ずつ対応すれば良いほどに入金確認の手間が削減できました。約9割もの工数削減に成功しています。
特に月末月初は、毎日が締め切りです。作業工数削減だけでなく、心理的な負担軽減にもつながっています。月次資料の作成、経費精算など、やることだらけ。多忙の中で入金確認もしなければならない。月末月初のプレッシャーは相当なもので した。以前は経理担当だけで入金確認を回していましたが、freeeでは自動で計上されますので、現在は事務担当の方に作業をお願いしています。経理経験のない、会計初心者が入社しても回るようになるほど、会計の仕組み化が整いました。
営業を仕組み化。人類が想像できることはSalesforceで必ずできる
田中 freee導入により会計の仕組み化には成功しました。弊社ではバックオフィスに対するフロントオフィス、営業の仕組み化も大切です。
当社では顧客に関する全ての情報をSalesforceで一元管理。特にCLINICS事業では全ての業務プロセスを可視化し、案件管理から契約管理までSalesforce上で全て完結させています。
私は、Salesforceの活用で一番大切なのはマインドセットだと考えています。私達のチームでは、Salesforceで表現できないことはない。あらゆることがSalesforceで絶対に表せるはずだ、と信じて、担当者が属人的に作ってしまった、個別案件管理のための「野良Excelファイル」「野良スプレッドシート」を見つけたらSalesforceに移行できないか、メンバー間でオープンに話し合うようにしています。
どのような要素が受注率に影響を与えうるのかという点について注目し、商談のタイプを「インバウンドか、アウトバウンドか」「決裁者のアポイントメントか、非決裁者のアポイントメントか」「対面か、非対面(ベルフェイス)か」の8パターンに 分け、過去数千件のデータを参照することでForecastの精緻化と定量化に取り組んでいることも弊社におけるSalesforce活用の特徴です。過去データを徹底的に活用することで、どのようなデータが事業にインパクトを与えるのか徹底的に考えるようにしています。
事業を進めていると「あったほうがよさそう」「将来使うかもしれないから集めたい」というデータや項目のアイデアがたくさん出てきます。しかし、それらを全て取得したりメンテナンスするのは得策ではありません。私は、Salesforceで表現すべきなのは「次のアクション」や「意思決定」につながるデータに絞るべきだと考えています。
どのようなレポートを作り、どうダッシュボードを構築すれば素早い意思決定やアクションに結びつくのか。そこから逆算して必要な項目を策定し実装していくことが重要です。私は、KPIの設定とどのようなレポートが必要なのか、そしてそれらをどうやってSalesforceで表現するのか、事業とツールの両方にしっかりと向き合い適切にアウトプットできる人材を育成していくことがとても大切だと考えています。
世の中の多くの組織では「事業には詳しいがツールには詳しくない」人たちと「ツールには詳しいが事業に対する理解はそこまで深くない」人たちの間で、様々なすれ違いが発生してしまっているのが実情です。その結果として、多くの使われないレポートや機能しないダッシュボードが生み出されてしまう。このような事態はなるべく避けなければいけません。