1894年に創業し、約130年の歴史を誇る株式会社小善本店は、日本の伝統的な食品である海苔(のり)を中心とした商品の製造・販売を展開しています。
歴史ある多くの企業がそうであるように、小善本店もまた、バックオフィス業務でのアナログな作業の多さや、グループ会社間で導入しているシステムが異なる点に課題を抱いていました。
そうした課題を解消するべく、グループ企業4社で「freee会計」「freee人事労務」「freeeカード」を導入し、バックオフィスの効率化を実現しました。
導入前にあった課題、導入後の変化、複数のfreee製品を連携させるメリットなどについて、執行役員でITシステム本部長の小林祐介さんに話をお伺いしました。
120年超の歴史ある老舗企業でバックオフィスを改革
――事業内容や企業規模など、貴社の概要を教えてください。
小松 千紘さん(以下、小松):当社は1894年に創業し、現在まで129年の歴史がある企業です。「海苔を世界へ」をビジョンに据え、企業向けの卸売といった事業のほかに、コンシューマー向けにも商品を製造・販売しています。レーザーカッターを活用して細かな線を表現し、人気キャラクターとコラボする「のりあーと」などが主力商品です。
社員数は約50名で、国内の営業所や工場のほか、海外にもグループ企業や拠点を持っています。
――小林さんのプロフィールも教えていただけますか?
小林 祐介さん(以下、小林):私は情報系の大学院を卒業後、銀行に就職し、支店の営業職を経験したあと、システム部門に異動し、3年ほど勤務しました。その後、家業である小善本店へ4年半ほど前に入社しました。
私が入社した頃は、ウェブサイトやロゴなど、企業としてのブランディングに力を入れていなかったので、それらの整備を推進してきました。新社屋 の整備もその一貫です。
そして、私自身がもともと情報系が専門なので、当社でも強みを生かし、ITを取り入れ、業務効率化にも力を入れて取り組んできました。
銀行に電話をかけて明細を確認していた経理業務
――freee導入前、バックオフィス業務にはどのような課題がありましたか?
小林:私が入社した当時は、経理担当者が銀行に電話をかけて、残高や明細を聞いて経理の処理をしているような状態でした。取引先マスタなどもなく、各取引先のデータが紙にしか記録されていないといった状況でした。
業務フローがシステム化されてないため、「誰がどのように動いて、どういう操作をしてるのか」がわかっていないことが課題でした。グループ全体を見ても、各社ともそれぞれの業務で別々のシステムを使っていて、特にシステムに詳しい人もいないので、非効率なバックオフィス環境になっていたのです。
――人事労務の面では、どんな点に課題を感じていましたか?
小林:当社には工場があり、パートタイムで働いている者が社員よりも多く、300名ほどいます。社員もパートのメンバーも、勤怠の打刻は紙のタイムカードに印字していました。集計は全て手打ちで大きな手間がかかっていて、「さすがにこれはやばい」と思っていました ね。
給与明細は、ドットプリンターという古い機械を使って印刷し、手渡しで社員に配っていました。
グループ4社にfreee会計、freee人事労務、freeeカードを導入
――複数のfreee製品を導入した流れを教えてください。
小林:全て紙の状態から何とかシステムを導入しましたが、理想とマッチしているとは思っていませんでした。そこから、場所や特定のPCに縛られることなく、オールインワンであり、自分たちでカスタマイズもできるオープンなシステムであることを条件に検討したところ、freeeがマッチしたので、導入を決めました。
導入したのは、親会社である小善本店のほか、グループ会社である丸善海苔加工販売株式会社、船橋海苔加工株式会社、マルゼン運送株式会社の4社です。2022年3月にfreee会計、6月にfreee人事労務、11月にfreeeカードを導入しました。
――導入時、不安に感じていた点はありましたか?
小林:高齢の社員もいるなかで、システムを変えたときについていけるのかは不安でした。ただ、freeeは経費申請などの操作もわかりやすく、システムが集約された分、簡単になりました。
以前はシステムがバラバラだったため、「経費精算はどのシステムでやればいいの?」「支払い申請は?」とわかりにくさが生じてしまっていました。現在、新入社員から社長までほぼ全社員がfreeeを使っていますが、スムーズに稼働できています。
――freeeの導入には、どのようなメリットがありましたか?
小林:銀行に電話をかけて明細を聞いていた頃と比べると、freee会計を見るだけで銀行口座の明細がわかり、自動的に仕訳へ連携されていくので、業務量が大幅に圧縮されましたね。
元々、経理部は常勤が8名いたのですが、freeeを中心に自動化やシステム化を推進した結果、常勤2名、非常勤2名の計4名まで減ったのは大きな変化でした。
人事労務の面でも、紙の給与明細は、もちろん今は配っていません。freee人事労務で好きなときに見られるようになっています。このように、不要な紙を印刷することが減り、紙にしか残っていなかったような取引先情報などをデータとして集約できるようになりました。
また、経営判断にもfreeeが役立っています。freee会計の導入前は、会計システムで売上の総額を見たり、販売管理システムで取引先別の売上・費用を見たりと、異なる複数のシステムを見ながら全体を把握する必要がありました。それがfreee会計のカスタムレポート機能では、一つのシステムでリアルタイムに数字を見ることができるので、情報を簡単に得ることができます。社長もよくカスタムレポートを見ていますね。
freeeカードも便利です。当社は出張も多く、さまざまな場面で経費がかかるのですが、以前は立替精算にしていました。例えば、九州に出張すると、15万円ほどかかることもあり、「立替の金額が大きすぎて嫌だ」といった声も上がっていたんです。freeeカードを社員に持ってもらうことによって、立替が減り、この点を解決できました。
入社当時に描いていたバックオフィス環境をほぼ実現
――複数のfreee製品や他のツールを連携させて利用するメリットを教えてください。
小林:4年前まで、300人のパートさんが勤怠情報を紙に打刻して手打ちで集計していたのですが、freeeを導入することでほぼ自動的に集約できるようになりました。それだけでなく、会計にも反映され、給与計算されて振り込みまで一気通貫で実現できています。これは大きなインパクトがありましたね。
特に、給与はセンシティブな情報のひとつで、グループ内の会社別、部署別で管理しようとすると、会社間、部署間のやり取りにも手間がかかるものですそれが、ボタンひとつで全部freee人事労務から給与関係の内訳が会計に流れてくるようになったので、とても楽になりました。
シングルサインオンで、同じアカウントで使えるのも、複数のグループ会社でfreeeを導入している私たちにとって大きなメリットですね。freeeを使うことで、バックオフィスの運用をグループ内で統一できたため、各社がそれぞれの業務で異なるシステムを使っていた頃と比べると、格段に効率化できました。
――バックオフィスの今後の展望を教えてください。
小林:入社当時に描いていたバックオフィス環境は、freeeの導入によってほぼ実現できてきました。今後の展望としては、やはりAIなどの最先端の技術を学んで使っていきたいですし、freeeもどんどんアップデートされていくはずなので、ついていきたいと考えています。
自社でカスタマイズして効率的な使い方をできる環境になったので、社会や事業の変化に応じて、素早く新しいことをしていけるバックオフィスでありたいですね。
――freeeの導入を検討している他の企業に向けてメッセージをお願いします。
小林:私が短期間に大幅なシステム変更を実現できた理由のひとつは、初期費用をそれほどかけなかったことだと思っています。これで「1億円かかります」という話であれば経営層から「それをやって意味があるのか」と問われると思うのですが、お金をそれほどかけずに基本的には自分たちでやってきたので、比較的自由に動くことができました。
そのように始めた結果として、freee導入により業務を大幅に効率化することができました。スモールスタートできることもSaaSの良さなので、DXを推進したい企業は一歩踏み出してはいかがでしょうか。
(執筆:遠藤光太 撮影:小野奈那子 編集:ノオト)