東京きらぼしフィナンシャルグループに属する株式会社きらぼしコンサルティングは、ICTコンサルティング事業を手掛け、クライアントの業務効率化や生産性向上に貢献しています。そのきめ細かなコンサルティングは、クライアントのみならず、クライアントの顧問税理士との関係深化といった面にも表れています。
きらぼしコンサルティング担当者の嶋岡真理 氏、山川徹氏、そしてクライアントである明光設備株式会社専務の吉澤泰子氏、同社を担当する島森税務会計事務所の稲垣隆志氏の4名を迎え、ICTコンサルティング導入の経緯や成果、freee会計が業務にもたらした変化について話を伺いました。
ファーストコールを受けられる銀行へ
ーーきらぼしコンサルティングがICTコンサルを始めた経緯をお聞かせください。
きらぼしコンサルティング・山川徹氏(以下、山川)
弊社はグループ会社にきらぼし銀行があり、金融系コンサルティング会社として活動しています。私たちきらぼしグループでは「ファーストコール」、つまり「何かあったら、まず銀行に相談しよう」とお客様に思っていただける存在を目指しています。
多くの企業では、生産性を上げたいと考えたときに、どのようなサービスをどうやって導入したらいいのか迷うことがあると思います。生産性の改善についてお悩みがあるお客様にご提案する際に、銀行と親和性のあるツールがあると良いと弊社では考えていました。弊社のお客様はきらぼし銀行のお客様でもあるケースが多いのですが、特に中小企業におけるバックオフィスの業務改善、管理体制構築に対するニーズは以前から感じていたので、バックオフィスのなかでも、まずは銀行に強みがある財務会計の部分からコンサルティングを始めていこう、と。会計から始めて、いずれはバックオフィス全体に展開できるツールとして、銀行口座と自動同期もできるfreee会計を活用したICTコンサルを始めることになりました。
ーークライアントである明光設備には、どのような課題があったのでしょうか。
きらぼしコンサルティング・嶋岡真理氏(以下、嶋岡) 明光設備様は、きらぼし銀行の支店長が定期的に往訪するなど、もともと深いお付き合いのあったお客様でした。業績はとても堅調に推移していらっしゃるものの、経営状況のリアルタイム把握や財務分析などに課題があり、「ぜひ改善したい」といったご要望を、たびたび社長や専務から伺っていたんです。
明光設備・吉澤泰子氏(以下、吉澤): 当社は、消防設備のメンテナンスと工事を行なっています。インフラ系の事業のため業績は安定していたほか、経理については税理士の先生が何でも対応していただけることもあり、お任せ状態に近かったんです。私自身、経営状況を100%把握できないままでいいものかと悩みながらも、日々の仕事に忙殺され、変わるきっかけがないまま、ずっと会社がまわってきていたんですよね。
嶋岡 そうでしたね。例えば売上と費用が、案件ごとに紐づいていないといった状態でした。備考欄に案件名は記載してあるものの、経費精算の紙にしか名称やコードの情報がないため、紙を目視して、いちいち集計し直して分析をしなければならなかったんです。
税理士・稲垣隆志氏(以下、稲垣) 今振り返ると、すべて任せていただいていた分、逆に言えば吉澤専務とのコミュニケーションが十分に取れていな かった面があったのかもしれません。
信頼関係があったからこそ、「やめようかな」を乗り越えられた
ーー明光設備へのコンサルの流れと、ポイントについて教えてください。
嶋岡 経理業務に工数をかけず、自社で経営分析ができる仕組みを提案してさしあげることが重要だと思い、バックオフィスのICT化のツールとしてfreeeをご紹介しました。freeeで対応できるサポートの一覧やデモをお見せして、「こんなことができるので、ここが楽になります」というように、細かく擦り合わせをしながら進めていきました。吉澤様に実際にデモを触っていただきながら、銀行のAPI連携で明細が自動で入ってくるのをお見せすると、その場で「え、こんなこともできるの?」と驚かれていましたよね。
山川 銀行窓口業務の経験もある嶋岡の柔らかいキャラクターと、クライアントである吉澤様自身がこちらを向いてくださったことがポイントでした。freeeにはチャットボットやコールセンターが設けられていますが、吉澤様からは、まず嶋岡にメールや電話がきました。それを受けてfreeeさん側に機能を確認しながら、一方で、自分たちでもトライアンドエラーを繰り返しながら、すぐにその結果を吉澤様に提示する流れを繰り返しました。
ーー吉澤さんは、きらぼし銀行からの提案を受けてどう感じられましたか ?
吉澤 freeeをご提案いただいてからすぐに飛びついたのですが、聞けば聞くほど良いものだと感じました。ただ正直なところ、最初は理解するまでにものすごく時間が掛かってしまって……。新しいツールを導入するというのは、紙の運用に慣れている私たちの世代にはハードルが高かったですね(笑)。
「もうやめようかな」と迷った時期もありましたが、一方で、きらぼしさんとの信頼関係が築けていたので、「変なことにはならないだろう」という安心感もありました。
稲垣 私も初めてfreeeを本格的に触ってみて、正直難しさは感じていました。ただ、とにかく数字が出てくるのが早いので、驚きましたね。
吉澤 稲垣先生も、私と一緒に学んでくださったんですよね。次第に、稲垣先生から「じゃあ私がfreeeで修正しておきますね」と言ってもらえることも。そんな風にしながら、気づいたら経理について理解が深まっていきました。
ーーやり取りの中で、担当の嶋岡さんがこだわったのはどんなところでしたか?
嶋岡 マニュアルはfreeeの画面をハードコピーして作成し、そこに手書きのコメントを加えました。銀行窓口にいたこともあり、オペレーションのマニュアルはあくまでマニュアルであって、規定として書いてあること以外でも、実際にはもっと別のところにポイントがあることを、経験上知っていたので。吉澤 様にとっても、手作りのマニュアルのほうが抵抗なく読めるはずだと考えました。
今回のプロジェクトを経て、税理士と“数字で話せる”関係に
ーー具体的には、どのような業務を改善できたのでしょうか。
嶋岡 私どもとしては、請求書や売掛金の管理、入金の消し込みは、すべてExcelからfreeeに移管を提案しました。さらに、もともと税理士さんにお願いしていた損益管理を社内でも行える仕組みにしました。
吉澤 おかげで、それまで技術や工程の話ばかりだった経営ミーティングの場で、今では数字をベースにした話もできるようになりました。
社長のパソコンから経営状況が見られるようになったことで、数字にうるさくなりましたね(笑)。他の会社では一般的なことかもしれませんが、これまで当社にはそこが少し欠けていたんです。数字という事実をベースにすることで、自信を持って現場に具体的な情報伝達ができるようになりました。
稲垣 嶋岡さんからの提案でバックオフィスをシステム化させたことで、会議のときには資料が全て出そろうようになって、経営の話をするためのコミュニケーションに時間を割けるようになったんですよね。それはとても良いことだと思っています。私は途中から担当を引き継いだのですが、freee導入前は決算を締めるのに時間が掛かり、コミュニケーションに割く時間がなかったと記憶しています。
以前は経理を一任されていて、私たち税理士の立場をメインに作られたソフトを使用していたんですね。 しかし会社にとって良いツールであれば、私たちが合わせていくべきだと。今回のプロジェクトによってこれまでと支え方の角度が変わり、会社が進めていく経理業務をフォローしていく立場になったと感じています。
ーーコンサル側と、クライアントの顧問税理士さんの関係が密になる状況も珍しいのでは?
嶋岡 そうですね。顧問税理士の先生と仲が良くなることは滅多にないのですが、本件に関しては例外でした。稲垣先生も吉澤専務も、「こんなことができるんだ!」「便利だね!」とポジティブに捉えてくださったので、全体として「仲良し度」が深まったのが印象的でした。
山川 「きらぼしはこんなことまでできるんだ」とわかっていただけて、「最終的には嶋岡に相談すればなんとかしてくれるでしょ」みたいなフランクな関係性が築けたのが良かったと思います。
吉澤 以前は、稲垣先生に世田谷の事務所まで出向いていただいて、書類を一緒に見てもらっていました。でも今はfreee上にデータがあるので、わざわざ事務所まで来ていただかなくても問題ないんです。
稲垣 納税意識も含めて経営者が数字を早く知ってくれると、私たちも非常にやりやすい。例えば申告期限が近づいた時点で、「税額はこのくらいです」と言うと、会社にびっくりされることもあります。しかし会社と私たちがリアルタイムに数字を共有・把握できていれ ば、決算前に「税額はこのくらいなので準備しておいてください」とお知らせできますから。
「税理士の先生がわかっていれば大丈夫」を超えて
ーー明光設備としては、今後どのようなことに取り組みたいとお考えでしょうか。
吉澤 当社としては、今後きらぼしさんにお手伝いいただきながら経費精算なども電子化し、社員の働き方をより改善したいと考えています。もともと経理については、「税理士の先生がわかっていれば大丈夫」という少し人任せ的な部分もありました。でも今では、稲垣先生と一緒に関わっていけるようになり、さらに社長も加わって、3人で主体的に経営の話ができるようになるという大きな変化がありました。今後は、きらぼしコンサルティングさんから紹介頂いたfreeeの知見を一層増やして、たくさんの機能を使いこなしていければと思っています。
ーー最後に、きらぼしコンサルティングのICTコンサル業務の現状と、今後の展望を教えてください。
嶋岡 コンサル目線に加えて、きらぼしグループ全体として、「お客様にとって、何が本当にメリットになるのか」を考えた上で、柔軟に対応していきたいですね。融資だけではなくコンサルでお客様の課題解決ができる、そして満足度の高いコンサルが巡り巡って、融資やリース、その他の証券に跳ね返ってくることがあれば、さらに理想的だと思っています。
従業員が数十人規模のお客様の中には、会計、顧客、案件ごとにデータの蓄積ができていないケースが多いと伺うので、今後も提案のしがいがあると考えています。ICTは非常に範囲が広いのですが、バックオフィス業務全体の向上を考えて、課題解決に尽力したいです。
(取材・執筆:遠藤光太 編集:波多野友子/ノオト)