株式上場の前後でfreeeを導入する企業が増えています。
2013年にサンフランシスコで米国法人として創業されたKAIZEN platform, Incは、同年、日本支店を開設。2017年には日本法人となる株式会社Kaizen Platformを設立し、2020年に東京証券取引所マザーズで株式を上場しました。
同社は、Webサイトの改善、営業資料の動画化など、企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)を支援する事業を多数展開しています。
日本法人設立当初から上場を目指すなかで、2018年8月にfreeeを導 入しました。株式上場前の企業が抱える問題を、freeeを活用することで解決できたのでしょうか。また、導入後の業務はどのように変化したのでしょうか。
経理財務部部長を務める朝井秀尚さんに、freee導入前の課題や導入後の変化、今後の展望について伺いました。
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改善のご提案を差し上げます。まずはお気軽にご相談ください。
内部統制の整備に向けた課題を解決したい。freeeを導入し、株式上場へ
――貴社の事業内容を教えてください。
朝井秀尚さん(以下、朝井) 企業のDXを支援するプラットフォームとサービスを提供しています。もともとWebサイトのA/Bテストなどのツールの提供から始まり、UX改善の人的なサポート、そしてさらに上流の部分も手がけています。また、動画のソリューションも 事業のひとつです。動画広告以外にも、チラシやパンフレットなど紙の販促物をデジタル化し、動画にするプラットフォームがあります。
これらのUXと動画の事業における蓄積を生かして、営業やマーケティングのDXをトータルでサポートしていく事業も開始しました。例えば、営業資料を動画にして、非対面でも商談ができるようにするサービスがあります。
――freee導入前の経理業務で、上場準備企業としてどんな課題がありましたか?
朝井 上場時には必須となる経理財務での内部統制の整備が課題となっていました。支払い申請や請求書が、部門長の承認を経由せず直接経理に来て、そのまま支払うなど、経理の妥当性が検証できないような状態だったんですね。
また、当時の会計システムには仕訳の承認機能がなく、担当者が入力した仕訳がそのまま会計データに反映されてしまっていました。さらに、仕訳の入力画面に2人以上同時にはアクセスできない点にも苦労していました。例えば2人で同時にアクセスして入力すると、2つの帳簿ができ上がってしまうような状況です。
担当者同士で「これから仕訳入力するので、触らないでください」と口頭やSlackで言ってから作業をしていましたね……。もし2つの帳簿が作られてしまったときには、遡って修正する作業が発生していました。
アップデートの早さや拡張性の高さに魅力を感じ、freeeを導入
――freeeを選んだのは、なぜですか?
朝井 プロダクトのアップデートが早いことと、他のアプリやサービスを使って拡張していく思想はもともとお話しいただいていて、魅力を感じていました。当社の代表・須藤憲司がfreeeの佐々木社長とよく知っている関係だったこともあり、社内での導入の意思決定もスムーズでしたね。
――導入時に大変だったのはどんな点ですか?
朝井 当社は、2017年の8月に導入を始め、1年ほどかかって2018年の8月に完了しました。本来は2018年の初めに完了させる予定だったのですが、上場準備があり、決算・監査対応もあったため、リソースが十分には割けませんでした。導入時だけはどうしても力技に頼らざるを得ないところがあったので、時間を捻出するのが少し大変でしたね。
従来の会計ソフトとの並行稼働の期間はなく、freeeへと一気に切り換えました。さまざまな業務を抱えていたので不安を感じる間もなかったんですよね(笑)。前月と比較してどうかといった総括的なチェックをして、乗り越えていました。
また導入時には、部門と勘定科目を見直し、新しく定義づけをしてデータ移行を行いました。当社はもともと勘定科目に部門を入れることになっていて、例えば「広告宣伝費(A事業部)」「広告宣伝費(B事業部)」のように、種類が大量にあったんです。
freee導入を機に、それらの勘定科目を再確認し、あまり使われていない科目をどうするか、もう少し細かく見たい部分の勘定科目を分けるかどうかなどを整理しました。
ただ、このように大変だった部分はあったのですが、導入に際して、freeeさんに勉強会を開いていただいたり、疑問があればすぐに答えてもらったりしていたので、技術面で苦労することはありませんでしたね。
――freeeの導入時に工夫した点を教えてください。
朝井 支払い申請の承認ルートの最初を経理にしています。経理がまず勘定科目やタグを確認してから担当者の部門長に回すことで、承認が全て終わってから間違いに気付くことがないように運用しています。
また、タグの使い方は工夫しました。例えば、株主総会や全社でのマーケティングイベントなど、勘定科目をまたいで集計したいケースがあります。これらはタグでまとめて、会場費や外注費などがトータルでいくらかかったのかを集計しやすくしています。
当社の場合、社員全員が申請を行うわけではなく、営業アシスタントの方々が担当してくれています。そのみなさんに導入の説明を徹底し、わからなければいつでも聞いてください、と。
最初は、「勘定科目をどれを選べばいいのか」「タグを付けるのはどれか」といった質問が多く、スプレッドシートにまとめた資料を共有して、内容をすりあわせながら進めていきました。今はもうなじんでいて、スムーズに入力してもらえています。
上場企業としての内部統制を
――freeeを導入して変わった点を教えてください。
朝井 上場に適合する内部統制、監査対応ができるようになった点はやはり大きかったです。仕訳の承認、支払い申請の承認については、freeeのワークフローをそのまま使っています。ログが残ることもあって、内部統制は格段に強化されました。
私たちはfreeeのワークフローに合わせて業務を作っていけば、上場審査でもきちんと説明できましたし、監査法人からも「問題ない」と。
ほかには、振込業務にかかる時間が大幅に減りました。以前は、会計システムで振込データが作れなかったので、担当者が毎月Excelを使って作っていました。毎回数時間かかっていて、単純作業に対する精神的な負荷が大きく、支払い漏れのリスクもあったのですが、freeeではほとんど自動的に振込データを作れるようになりました。
――貴社はクラウド監査アシスタントアプリ「kansapo」も使われていますが、どのように変化しましたか?
朝井 当社の場合、勘定科目を組み直したり、組織変更で部門が変わったりして、使用不可としている勘定科目や部門が多くありました。しかし、使用不可の勘定科目や部門に誤って数字を計上してしまうことがありました。kansapoでは、そのチェックをしています。税金のチェックにも使っていて、「この勘定科目でこの税の項目が付くのはおかしい」といったことをkansapoの月次のチェックで出しています。