freee株式会社の高橋啓太は2013年にfreeeへ入社。まだ社員数も少なかった当時から経理を担当していました。経理に加え、カスタマーサポートやマーケティングなども兼任。組織を多方面から支えてきました。現在は経営管理本部の経営ナビゲーターチームに所属し、経理の傍ら経営サポートを行なっています。
今では社員数400人を超えたfreee。その成長過程を見守ってきた高橋の、経理に対する思いと、バックオフィスが経営をサポートする本質的な意味を掘り下げます。
――経理としてどんな仕事をしているのか教えてください
組織が400人超となる中、大きな組織への変革目指す
私の前職は新卒で入社したソニー株式会社。モバイルの部門会社に出向し、経理・経営企画を担当しました。
大きな会社ではシステムに任せられるところは高度に自動化されており、大規模で効率化された経理業務を経験できました。効率的な業務を経験するうちに、何のために経理という仕事があるのか、その本質的な価値を考えるようになります。私が関わっていた経理業務は、機械的にできないような難しい仕訳、会計処理にあたるのですが、それをこなすことで会社の業績にどんなインパクトがあるのか。本当にこれが経営者の意思決定を助ける材料になり得るのか。かなり悩んでいたのです。
そんな中、ソニーの同期に誘われ週末副業を始めたのが、当時まだとても小さな組織だったfreee株式会社(ジョイン当時はCFO株式会社)。小さな会社で経理をやってみたい、経理のバックグラウンドを活かし会計ソフトをつくってみたい、経理の本質的価値を今一度問うてみたいと考え、freee株式会社へ正式にジョインしました。
少し前まで、freeeの経理は300人規模の経理業務を0.8人月で回していました。freee会計を駆使することで1人月に満たない工数で会計処理できていたのです。しかし、会社が成長していく過程で、freeeが大きな組織に変革していかなければならないことを痛感。以前の経理効率を維持しつつ、バックオフィスとしてのさらなる成長 を見据え、経理に関わる人間も3名(内1名派遣)に増やしました。
freeeはいま、大きな組織に変革する時期に来ていると考えています。この成長を支えるためにも、よりロジックに基づき、データドリブンで意思決定を行えるよう、経営陣に具体的なフィードバックができる経理財務体制を構築しています。
――freee会計の利用状況を教えてください
経理を超効率的に。会計処理を社員に分散した結果、月次決算は第1営業日に終了
いま、freee株式会社の経理財務は、「普通のことを普通に、超効率的に実現する体制」を目指しています。お金の入出金や決算書・申告書の作成など、経理の業務は多岐に渡りますが、それらを超効率的にやる。これがfreeeの目指す経理です。私は効率化を「速さと質のバランスを両立させること」と定義していますが、freee会計を使うことで、大人数でも経理の定型業務を効率的に処理できます。
クラウド会計の仕組みを大人数でも最大限に活かすため、弊社ではさまざまな工夫を行っています。月次決算もそのひとつ。毎月の月次決算は大抵、数営業日かかってしまうもの。月次決算早期化の重要なポイントは、支出に関する証憑をどれだけ効率的に集められるか、という点にあります。
freeeでは社員にfreee会計のアカウントを付与しています。経費精算や支払い依頼など、社内の会計処理は各社員に分散。買掛金が発生した場合には見積書ベースで納品状況を自己申告してもらい、会計処理として取引を登録するようにしています。該当の取引に詳しい各社員が入力するので確認コストなどが減り、結果、月初第1営業日に月次決算を1人日で締められるようになりました。
承認の電子化、証憑管理、一括振込にメリット
速さと質のバランスを両立させた効率化のための取り組みは、さまざまな点に及びます。200人規模の企業で経理を勤め上場経験もある同僚は、freee会計を使うことでほとんどの業務が複合機にすら触らず、ペーパーレスで進められる点に驚いていました。
会社によっては稟議システム・販売管理ソフト・請求書管理ソフト・会計ソフトなどと複数のシステムを使う場合もあります。この体制では稟議や支払依頼を処理するだけでも紐づく取引を複数ソフトに入力しなくてはなりません。freeeがあれば入力するソフトは一つです。
freeeを使った承認の電子化も超効率化に貢献した仕組みのひとつ。書類の承認には、作成・印刷・担当者印・承認者の押印で30分程度。承認者が席にいないと一日経っても承認が終わらないことさえあります。freeeなら、担当者と承認者がどこにいてもクラウド上で稟議を回すことができます。
証憑の管理もfreee会計で簡単になります。一つの取引に対し、見積書・発注書・請求書・納品書・支払依頼書など、複数の証憑をステープラーで止めてバインダーで管理している企業は多いもの。freeeは証憑を全て電子化し、オンラインで管理・取引への紐づけや参照も簡単です。
振込の一括管理もメリットです。企業によっては、経理財務の担当者が、証憑を支払期日と銀行ごとにまとめなおし、銀行の電子サイトにログインして都度振り込んでいます。振込み時に、証憑を1枚ずつ、エクセルなら1行ずつ確認する担当者も多いのではないでしょうか。そうすると振込1件に5分は使っているでしょう。毎月100件振込むと毎月8時間超。これだけで1営業日かかります。freeeなら、すべての振込を終えるのに10分しかかかりません。
freeeアカウント発行により、税務調査準備もスムーズに
経理にとって、税務調査時の準備やVCへの報告はなるべくコンパクトにまとめたい作業のひとつ。以前、freeeに税務調査が入った際、行った作業は1週間程度の準備と当日PCを1台用意し閲覧用のアカウントを発行しただけ。これまで誰に見られても良いように日々、freee会計へ入力・整備してきたので、これだけで済みました。
税務調査のほか、社外の方にfreeeアカウントを発行して便利になったケースも。freeeでは、会社に投資していただいているVCにもfreeeのアカウントを渡しています。簡易的な財務諸表を求める方もいますが、細かく確認したい方もいらっしゃいます。freeeのアカウントを発行し必要なデータを閲覧いただける状態にすることで、コミュニケーションがスムーズになりました。
――経理としての理想の姿とは?
経営陣と社員の橋渡しとなるバックオフィスを目指す
私がもっとも大切にしたいのが「freeeで効率化できた」ことをお客さまに喜んでもらえることです。経理や経営者は、財務数値やKPIなどの定量化されたデータばかりを見て考え込んでしまいがち。しかし、お客さまに喜んでもらえれば、おのずと売上はついてくるはずです。
お客様に喜んでもらうため、バックオフィスの「速さと質のバランスが両立されている」状態の超効率化は大前提。その上で経理から、経営陣・事業部・社員、それぞれに経理として情報をアウトプット・フィードバックし、働きかけていくべきだと考えています。
経営陣に対しては、データドリブンで意思決定を行えるよう経理の部署がサポートしています。しかし、経営陣の見ている全社数値は社員個々人にも共有すべきです。経営陣はミクロな数値を追うものですが、そうすると全体感を忘れてしまいます。むしろ顧客1社獲得あたりの広告費用などのミクロなマーケティングは現場が行い、経営陣には全体像を考えてもらうことが大切です。 freeeでは現場に数値を共有した結果、一人一人が数値を意識し、課題に感じてくれるようになりました。
中間目標を設け、重要度の高い取り組みを経営陣・社員双方が腹落ちするまで話すよう心がける
さらに大切なのは社員へのフィードバック。立ち上げ間もない企業ならば社員に大目標を与えるだけで自走しますが、freee株式会社は400人超。経営陣がひとりひとりに細かな指示を出すことはありません。組織が変革を迎える中、この規模感になりますと中間目標の適切な設定が欠かせません。
私たちはバックオフィスの立場から、社員の中間目標設定をサポートしています。たとえば経理が見ている数値をもとに腹落ち感のある目標を立ててあげる。これが私の考えるバックオフィスの役目です。「新聞図書費・広告宣伝費が高いです。下げてください」とお願いするのは簡単ですが、本当は削減しないほうが良い場合もある。経理が経営陣と社員の間に立ち数値目標を設定してあげることで、社員は最適な行動を取れるようになるのです。
そのためにはまず、社員とのコミュニケーションが欠かせません。会社として重要度の高い取り組みを、双方が腹落ちし理解するところまで話すよう心がけています。腹落ちしてない状態では、施策や目標に取り組めないからです。
――今後の展望について教えてください
業務を通して感じた経理の本質をサービスにフィードバック、組織づくりに貢献したい
freeeに入社し、経理部門の立ち上げから携わることができたのは大きな経験でした。今後、社員がより目標達成に近づけるよう、バックオフィスを超効率化し、組織づくりに貢献していきたいと考えています。
私にとって疑問だった経理の本質は、会社が成長するにつれ、生き物のように変化しています。freeeに入社して今までの5年間を振り返ってみると、経理としての私の役割が変化するポイントが2つありました。一つ目は従業員数が10人を超えるタイミング。二つ目は事業が複数にまたがったタイミングです。
社員数2~3人の頃は、経費精算に使う領収書・請求書を従業員から渡されても、他の業務を兼任しつつ把握できていました。しかし社員が10人を超えると、日頃話さない人が出てきたり、会計フローが分かれたり、物理的に部屋が分かれたりして、支出や売上が立ったことを会話の中から掴めません。文字ベースで情報伝達する必要が出てくるため、ハブ機能として経理が必要になります。
さらに複数事業が増えるタイミング。ここまで企業規模が大きくなると、持てるリソースの中で一番効率的な配置を模索する際、分岐が生まれます。単一事業であれば、人の割り振りも人材の獲得もシンプルに考えれば良かったのですが、複数事業になると事業ごとの特性に合わせた意思決定が必要になり、部門会計・管理会計の予算という概念が自然発生します
これまで会社の規模が変わるたびに得た知見をfreee会計へとフィードバックしてきました。これからもユーザー様の企業規模やフェーズに関わらず、ずっと使っていただけるようなプロダクトにするために、フィードバックを繰り返し育てていきたいです。