DSP株式会社は2004年設立。「一人ひとりが光り輝く事業であること」をモットーに、アウトソーシング事業、人材派遣・人材紹介事業、求人総合広告代理事業を展開しています。
従来、バックオフィス業務は、紙やExcel中心で行っていました。しかし従業員数の増加に伴い、チェック工数もかさみ、業務量が限界に。そこで導入したのがfreeeでした。問題点をどのようにクリアし、どれくらいコストカットできたのか。freee導入のきっかけや変化について、DSP株式会社 人事部主任 横山芙由佳氏と、管理部主任 敷地美穂氏、経理部 菅谷仁美氏に伺いました。
- 【課題】
- 会計・人事労務ともにアナログ作業が多く、手間が非常に大きかった
- 従業員の増加に伴いバックオフィスの効率化が急務となり、クラウド化を検討
- 【導入の決め手】
- 代表自身が「最新のものを取り入れていきたい」と考えていた
- クラウドを利用することで上場時の監査法人コストを抑えたい
- 【導入後の効果】
- 会計・人事労務のペーパーレス化により、紙400枚/月・7.5h/週の作業時間を削減
- 業務効率化により、バックオフィス人員の比率を低減できた
世のため人のため、関わる全ての人が幸せになれる社会を目指す
――まずは事業内容や御社サービスへの想いを教えてください。
横山 企業が自社の業務を専門的知識や能力のある外部業者に委託することによって、クオリティ向上やコスト削減、効率的な人材活用を可能にするアウトソーシング事業、人材派遣や人材紹介事業などを展開しています。弊社で紹介する主な業務は、介護や福祉、事務、経理、受付など多岐にわたります。
弊社は「社員を世界一幸せにする」という志向に重きを置いている会社です。経営理念は「全従業員の物心両面の幸福(しあわせ)を追求すると同時に、世のため人のために貢献すること」を事業の目的とし、「人を大切にする。人を光り輝かせる。人を愛する。」ことを主軸、判断基準にしているのが弊社の強みです。
敷地 代表の上川は、すごく腰の低い人なんですよ。代表も役員も、役職ではなく「○○さん」と呼びます。フラットで風通しが良い社風ですね。
横山 社員数は720人で、平均年齢は26歳。若手が活躍しやすい環境です。いま上場を目指して従業員数を拡大していて、来年入社予定の新卒者が250人くらい。近いうちに1,000人規模の会社になる予定です。
領収書をのり付け。アナログ作業で時間が取られていた今までのバ ックオフィス
――これまでのバックオフィス業務でどんな課題を抱えていましたか?
菅谷 会計業務の面で、いままで特に大変だったのは、たとえば稟議書なら「どこまで承認がおりているのか、誰の手元で止まっているのか分からない」といった事態が頻繁に起きていたことでした。請求書が回ってきているのに、「稟議書をもらってないから、何の支払いかよく分からない」というケースも多かったですね。
敷地 会計と人事労務に共通していた課題としては、従業員から届く領収書を紙にのり付けするなど、アナログな作業が多くて手間だったことも挙げられます。中には、締め切り間際に提出する社員もいるので、処理する期間が集中してしまうんです。月末から翌10日まではすごく忙しくて、残業も頻繁にありました。また社員数の増加に伴って、作業量も増大。紙を保管する場所もいっぱいで、過去の資料を抜いていかないとファイリングが追いつかないくらいでした。
菅谷 あと、freee導入前はインストール型のソフトを使用していたので、専用端末を一人が使っていると、他の人が 使えませんでした。過去の取引を検索したいときも、誰かがその端末を使っているときは、他の人が見られないという不便さがありましたね。
――そんな中で、freeeを導入することになったきっかけを教えてください。
菅谷 代表は「最新のものをなるべく取り入れたい」という考えを持っています。今まで紙で管理していたものをクラウド化していきたいという思いはずっとあったようです。
そんな時に代表が経営者向けの勉強会に参加して、freeeを知ったのが最初です。今後どんどん人が増えることを考えると、バックオフィス業務のクラウド化が急務だと思っていたタイミングでした。freee以外のクラウドソフトも比較して検討していましたが、上場の手助けをしてもらっているコンサルタント会社から「freeeがいいよ」と勧められたことも後押しになりましたね。
敷地 それから、上場をする上では、なるべく監査法人コストを抑えられるほうがいいという事情もありました。紙の監査提出書類の場合、監査法人にオフィスに来てもらう必要があるため、お金も時間もかかってしまいます。クラウドであれば、離れた場所にいてもリアルタイムでデータを共有することができます。
freeeのサポートで印象的だったのは、「すぐ開発部に共有します」の一言
――freee導入にあたり苦労した点は? また、どのように対処しましたか?
敷地 導入当初は、「前のシステムではこう入力していたけど、freeeではどうすればいいのか?」と戸惑うこともありました。でもfreeeのチャットサポートに相談したら、一緒に考えて回答を出してくれたのが良かったです。他社サービスなら「そういう機能はありません」で終わってしまいそうなところですが、解決策を一緒に考えてくれるので、すごく助かりましたね。
特に印象的だったのは、「すぐ開発部に共有します」と言ってくれたこと。こちらの要望に対して改善しようという姿勢を感じて、本当にありがたいな、と思いました。
菅谷 会計のほうも、取引登録の入力方法など、最初はまったく分からない状態で。そういうときもチャットサポートに連絡して、「会社の運用としてはこういう取引登録をしているのですが、どうすればいいですか?」と相談すると、一緒に考えてくれました。
――freee導入について、社内の反応はどうでしたか?
敷地 やはりクラウド化に対して戸惑う人もいたのは事実です。そこで、freeeの担当者からマニュアルのひな型をもらって、社内向けにオリジナルのマニュアルを作成して周知を図りました。上司がiPhone、私がAndroidを使っているので、実際の操作画面を見ながら、「ここで操作にひっかかる傾向にある」というポイントに対してスクリーンショットを撮り、細かくマニュアル化していきました。
菅谷 はじめは慣れない人もいましたが、消費税率改定のタイミングで、定期代など金額を変更する必要がでてきたので、そこで一気に社内に浸透しました。「対応しないと交通費が8%分しかもらえない」ということで、今まで対応を渋っていた人からも問い合わせがありました。
バラバラのシステムをfreeeでまとめて作業時間が3分の2に!
人事労務システムマップ
会計システムマップ
複数人で同時入力し、業務を効率化
――freee導入後の変化について教えてください。
敷地 人事労務に関しては、以前は給与ソフトからデータを抽出し、Excelの計算式でファイルに落としこんでいました。でも一つズレると大きなミスになってしまうので、すごく怖くて。いまはfreeeで一元管理できているので 、かなり助かっています。
あと、複数人で同時に入力操作できるようになったのは、かなり大きな変化です。それまでは紙を見ながら手入力だし、しかも一つの端末でしか入力できなかったので。それから、以前は入力した後に二重チェックの体制を取っていました。10人なら10人分を一つずつ画面に表示して、入力して、もう一度チェックして……という作業をしていたんです。そこから考えると、業務量は相当削減できました。
菅谷 会計のほうは、これまでの旧システムでは、前の伝票をコピーして、行ごとに金額訂正をしたり月を変えたりしていました。freeeだとまとめて置き換えできたり、数字を一気に変えられたり、他のところから貼り付けたりできる。取引登録する時間が短縮できました。
稟議書の流れも、以前はあいまいな部分が多く、「この上司がいなかったら、あの人に」と承認の経路が分かりにくかった。でもfreee導入にあたって、承認の流れをキチンと見直すことができました。いまは、どこで稟議書が止まっているのかすぐ分かりますし、紙を探す手間も省けて助かっています。
クラウド化によって、必要書類の提出率がアップ
敷地 以前は手書きで給与口座を提出してもらっていたのですが、振込の段階で書類が届いていないこともあって「至急、提出してください」というメールを頻繁に送っていました。出向している社員も多いので、紙だとどうしても提出が遅れてしまうんです。
横山 やはり紙だと提出率が低い。中には「書類をなくしてしまったので、再度送ってください」という依頼もあり、二度手間、三度手間になることも多々ありました。そのぶんコストもかかりますし、弊社は全国に社員がいるので、郵便が届くまでのタイムロスも発生します。必要な書類が期日までに集まらないことは大きな課題だったんです。freeeでクラウド化してからは、その点がかなりスムーズになりましたね。
敷地 いまは若い社員が多いので、紙よりもむしろクラウド上で入力するほうが手軽なのではないでしょうか。以前は初回提出率70%くらいだったのが、クラウド化してからはほぼ100%になっています。
紙や郵送費だけでなく、保管スペースも削減
――現場の変化で、プラスになった効果はどんなものがありましたか?
敷地 freee人事労務を導入したことで、業務で処理する紙は月200~300枚くらい削減できたと感じています。あと郵送費も削減できましたね。1通84円としても、従業員が1,000人規模だと大きな金額になりますから。
作業時間でいうと、1日当たり90分くらいは削減できたのではないでしょうか。残業日数も明らかに減りました。
菅谷 会計のほうも、月に100枚くらいの稟議書がありましたが、いま紙はゼロです。もし紙で提出されても「freeeで申請してください」とつき返すようにしています。
敷地 人事労務系の稟議書も紙はゼロだし、立替に関する申請書類もいまは全部freeeで管理しています。それに伴い、紙を保管するスペースが削減できたのも大きな変化です。
菅谷 以前は、請求書を受け取ったら紙の稟議書を探しに行ったり、そこに書き込んだりしていました。freeeでは稟議書と請求書を紐づけられるので、わざわざ紙を探しに行かなくてもすぐに確認できる。そういう細かな時間の短縮にも繋がっています。
横山 2018年のfreee採用時から社員数が300名増加していますが、バックオフィスの人員をそこまで増やさずに運用を回すことができています。freeeを導入し、かなり業務改善が図れていると思います。
社員一人ひとりが輝けるよう、バックオフィスから環境を整備したい
――今後の展望をお聞かせください。
敷地 まだ一部、外部ツールを使っている業務があります。freeeと連携して上手くいっている部分もありますが、一元化することでもう少し勤怠管理の体制を強化できれば、と考えています。
横山 人事システムのクラウド化は、どんどん進めています。1,000人規模の会社になると、手入力で管理するのは難しくなってくるでしょう。会社の規模が大きくなるにつれて、管理体制も強化しなければなりません。freeeを含めクラウド系のサービスを導入し、うまく活用していく。それは経理も人事労務も目指すところは同じです。バックオフィスの立場としては、社員の働きやすさととも に、一人ひとりが輝ける環境をより整備していきたいですね。
(取材・執筆:村中 貴士 編集:阿部 綾奈/ノオト)