武蔵小金井を中心に、ベーカリーカフェを7店舗展開する株式会社クラウンベーカリーは、2021年に創業90周年を迎えます。パンや焼き菓子を中心に小売りを行うほか、不動産賃貸業も行う企業です。
小売店舗を多く抱えるため、従業員の多くは、入れ替わりが激しいアルバイト雇用。店舗が増えるに伴い、従業員数は増え続け、紙を中心としたアナログな運用に限界を感じ、freee人事労務プロフェッショナルの導入に踏み切ります。
現在は正社員とアルバイト合わせて160名ほど。全員分の事務処理を創業者家族を中心とした4名が担っています。その中でも、人事労務を担当されている鈴木貴子さんに、freee導入までの経緯とその後の変化について伺いました。
- 【課題】
- 勤怠集計・給与計算を手作業で行っているがゆえに、業務量は増え続けミスも頻発するように
- アルバイトの入退社が多く、紙で情報を収集・管理するためのやり取りに時間がかかってしまう
- 【導入の決め手】
- 複数の店舗を経営するゆえの複雑な給与計算をミスなく行える
- 従業員の情報管理・マイナンバーの管理が、freee人事労務を利用することで簡単に行えるようになる
- 【導入後の効果】
- 忘れがちだった介護保険料も、freeeが自動で反映してくれるからミスがなくなり、安心できる運用に!
- 書類の回収だけで1ヶ月かかっていた年末調整も、従業員が入力したものを確認するだけになり、チェックだけで済むようになった
- 会計士・社労士とのやり取りもfreeeやKOTで作成したデータをそのまま渡すだけでよくなり、紙の書類を作成する時間や手間が削減された
freee導入前はすべて紙でやり取り。従業員の増加で手計算の処理が限界に
ーーfreee導入前の貴社のバックオフィスはどのような状況でしょうか?
鈴木貴子さん(以下、鈴木)当社は家族経営で、事務作業は社長と義理の母、義理の姉、私の4名で担当しています。さまざまな業務の中、経理と総務、労務は、私と義理の姉が主な担当です。
以前から紙のやりとりを中心としたアナログな作業を行っており、私が担当するようになってからも、以前のやり方をそのまま行っていました。また、創業時からの紙の書類が大量にあるため、どんどん増えていく書類を「どこに保管すればいいのか」という問題も同時に抱えていました。
給与計算も手作業でした。従業員全員分のタイムカードをすべて集め、電卓で時間の計算を叩いていましたが、2~3年前に150名を超えてきた段階で限界に。手作業でのミスも多かったため、知人に相談し、タイムレコーダーを導入したのです。
ーータイムレコーダーを導入したことで負荷が軽減されたのですね。
鈴木 手計算からは 解放されましたが、打刻忘れやミスに対しては、手動での修正が必要でした。修正したときに、入力ミスを起こすことも。早朝手当や土日手当は店舗によって異なるため、その計算をし直したり、保険料について表を参照しながら入力するなど、ミスの原因は引き続き残り続けました。
加えて、作業を行うスケジュールの厳しさも問題でした。タイムカードを締めてから、給与計算の〆切までは、およそ10日間。土日や祝日も考えると、さらに厳しくなります。タイムカードの打刻について本人に確認する必要が出た場合、正社員とはLINEでつながっているので連絡がつきやすいのですが、いつ出社するかわからないアルバイトに電話で確認を取るのは大きな手間となっていました。
ーー従業員情報の管理もアナログだったと聞いています。
鈴木 そうです。特にマイナンバー制度の管理を行わなければならなくなったことは、大きな負担でした。預かったマイナンバーをどこに保管すればいいのか困り、結局金庫に入れていたのです。
また、法定三帳簿にあるような従業員情報を管理しておかなければならないのですが、アルバイトは情報を記入してもらう前に来なくなってしまう人も多く、情報収集とその管理に苦労していました。
下準備に苦労するも、細やかなサポートで知識がなくてもスムーズに導入
ーーそこからシステムを導入するにあたり、どのような経緯で進めていったのでしょうか?
鈴木 当時のバックオフィスの状況について、取引のある銀行の担当者に話したところ「独自のシステムを開発したらどうか」と提案されました。そこで一度、見積もりを取ってみたのですが、何百万円という金額になったため、導入を断念したのです。
同時期にCMなどを通して便利なシステムがあることを知り、5~6社から資料を取り寄せ、最終的にfreeeさんを含めて3社まで絞りました。
導入にあたり必須の条件は、複数の店舗を経営するゆえの複雑な給与計算、従業員の情報管理、マイナンバーの管理がシステムを利用することで簡単に行えるかの3点。他社のシステムは、検討を進めるうちに実現できないことがあると判明しました。freee以外にも当社の状況をカバーできるシステムがあったのですが、最終的には価格面でfreeeの導入を決定しました。
ーーシステムを検討するところから、実際にfreeeを導入するまではどのくらい時間がかかったのでしょうか?
鈴 木 検討開始から導入までは、およそ1年半ほどでした。導入を決めたのは2020年3月で、5~6月は試運用、7月から実運用を始めました。運用開始までのスケジュールについては、freeeの担当者さんに設定していただいたため、それにのっとる形で進めました。
コロナ禍でしたが、メールで細かくサポートしていただけたので、やるべきことも明確化。最終振り込みの期限ギリギリの3分前という状態のときも、電話でサポートしてくださり助かりました。
導入が終わった後も、チャットでいつでも質問できるのがいいですね。最初は電話のサポートがいいと思っていたのですが、チャットだと回答を待つ間に他の作業ができるので効率的だと感じましたし、やりとりの記録が残るのも便利です。
給与計算は勤怠管理システム「KING OF TIME」をfreeeと連携 アナログ運用の危うさを再認識
ーーfreee導入後の変化について教えてください。現在のバックオフィスの状況はいかがでしょうか?
鈴木 勤怠管理については「KING OF TIME(以下、KOT)」という勤怠管理システムを併用しており、給与計算はKOTと連携したfreee人事労務で行っています。これまで誰がどの店舗に出勤しているのか、すぐさま調べることができなかったのですが、電話をかけなくとも確認することができたり、システム上で出勤スケジュ ールを確認できたりするようになりました。
また、保険料についても、これまで表を参照しながら入力していたところが、自動で入力されるように。ボーナスの保険料計算も、自分で計算したものを社会労務士の方に確認してもらっていたのですが、自動で入力できるようになりました。
freee導入前は忘れがちだった介護保険料。恥ずかしながら、翌月に「ごめんなさい!」と言いながら、徴収するといった場面もありました。お金の面でのトラブルは社員との信頼関係に響くので、非常に危うい運用だったと、freee導入後に再認識しました。
以前は、給与明細も手作業で三つ折りにして封入していたので、月末近くは休みが取れず、遅くまで帰れない状態でした。freeeを導入してからはメールやアプリで給与明細を共有できるようになったので、こういった作業もなくなっています。毎月15日にタイムカードを締めた後、店舗側でKOTのチェックが終われば、最短で2営業日後には、給与関係の作業が終わっていることも。
空いた時間に、義母が担当している業務を手伝うことができるようになりました。
頻繁に起きる入退社の手続きも軽減 従業員情報管理も一本化
ーー人事労務の作業フローが変わる場合、社内だけでなく、社労士の方にも影響があるかと思います。そのあたりはいかがでしょうか?
鈴木 現在は社労士の方にもfreeeのアカウントを発行して、状況を確認してもらえるようにしています。従業員の入退社管理が、とても楽になりましたね 。これまでは履歴書を見ながら私が情報を入力し、社労士の方にメールで「1月に○○さんが入社しました」といった情報をお送りしていたのですが、今は「○○さんが入社したので、freee上で確認してください」と伝えるだけ。従業員自身に情報を入力してもらうので、手間も省けましたし、社労士さんとのやり取りもシンプルになっています。
また、これまで紙で管理していた従業員の情報管理が一本化できたので、楽になりました。金庫に保管していたマイナンバーもペーパーレスで保管できるように。これまでオフィスに保管していた大量の書類が、電子保存で大きく減りました。
freee導入前は、大量のタイムカードを保存する必要があった
ーー導入のメリットを特に感じたのは年末調整とお聞きしました。いかがでしょうか?
鈴木 freee導入前は、書類の仕様が変わることもあるので、11月から憂うつな気分になりながら、税務署の手引きを読んでいたのを覚えています。アナウンスした期限内に全員分が集まらないため、1カ月ほどかけて従業員本人に確認することも。書類を提出してない人に電話で追いかけるなど連絡の手間も大きく、さらに、バラバラに集まった書類を従業員番号順に並べるのも、地味に大変な作業でした。
しかし、freeeを導入してから、従業員が入力したものを確認するだけなので、 最終的なチェックだけで済むように。入力ミスを指摘するときも、メールひとつで簡単に差し戻しができます。原本をもとに修正することも可能です。
これまでルーティンとして毎年行ってきた作業のため、作業量が多いことに気づくことすらできていなかったのですが、要所要所だけ準備すれば「これほど作業を省くことができるんだ!」と感動しました。
ーーこれからfreeeの導入を検討する企業に何かアドバイスはございますか。
鈴木 はじめは自分自身に知識がありませんでしたし、社内に詳しい人がいるわけではないので、どうやって導入すれば良いかもわかりませんでした。それにCMで見かけるようなシステムを導入するのは、企業規模からみてもやりすぎではと感じていたのです。
でも実際に導入してみると、当社のような規模でも大きな恩恵がありました。導入前は私自身がかなりアナログな人間のため、導入のハードルは決して低くはありませんでしたが、導入支援サービスのおかげでスムーズに導入することができて良かったと感じています。
クラウドシステムなので、時間や場所を問わずに作業できる点も良かったです。コロナ禍の状況もあり、出社せずとも家や出先などでも仕事ができるので、業務の自由度が増したのも大きなメリットです。
また、アカウントがあればfreee上でデータを見せること が簡単にできるので、社長に人事や労務の情報を共有しやすくなったと思います。
ーーバックオフィス業務の今後の展望はいかがでしょうか?
鈴木 私自身が管理する紙の書類は減ったのですが、会計業務では、売り上げやレシート、領収書、請求書など多くの紙がまだまだ残っています。今後はこういった書類を減らして、ペーパーレス化していきたいですね。
(取材・執筆:ミノシマタカコ 撮影:藤原慶 編集:杉山大祐/ノオト)