独自のWebシステムを駆使したマッチングにより、低価格の家事代行サービスを提供している株式会社CaSy。創業当初より「Omotenashi × Technology」を強みに、家事代行サービスを誰にとっても身近で安心なものに変えようとしています。
現在は家事代行市場の急拡大に伴い、利用するユーザー数・働き手であるキャスト数はともに国内最大級の規模に成長しましたが、その急成長を支えるバックオフィスへの負荷も決して小さい ものではありませんでした。そこで、管理体制を作り直すために導入したのがfreeeです。
上場を視野に入れ、freeeで変革を遂げつつある社内の体制や今後の展望について、代表取締役 CTO/CFO池田裕樹氏、経営管理グループ グループリーダー 朝倉良介氏、経営管理グループ 人事労務担当 上田美穂氏に話を伺いました。
――設立の経緯や御社サービスへの想いを教えてください
共働きのパパ3人で誓った「笑顔の暮らしを、あたりまえにする。」
池田 CaSyの設立は2014年。創業者の3人はみな共働きのパパですが、「仕事を優先するあまり、家族との貴重な時間が失われてしまう」という課題を解決するため、家事代行サービス「CaSy」を立ち上げました。
「CaSy」の特徴は、大きく分けて3つあります。価格の安さ、品質、そして使いやすさです。家事代行サービスの認知度がまだ高 くない日本では、利用者側のハードルが高く、価格と品質には特に力を入れています。業界水準を下回る価格は、テクノロジーを活用した事業運営の低コスト化によって実現。品質はキャスト(家事代行を業務委託するスタッフ)の方々のおかげで実現できています。お客様にご満足いただけるよう、キャストの方々の研修には特に力を入れています。オフィスフロアに実際の家庭を模したエリアを設け、家電の取り扱いに問題がないか、掃除は丁寧に行えているかなど研修でチェックしています。
社内にはキッチンを設けており、面接のほか実際の研修もオフィス横のキッチンで行われている。
オフィスフロアにもともとあったわけではなく、このキッチンは新しく備え付けられたものだ
朝倉 現在私たちは、「笑顔の暮らしを、あたりまえにする 。」というビジョンのもと、「大切なことを、大切にできる時間を創る。」というミッションを持って事業を行っています。
妊娠出産などライフステージの変化により、今まで当たり前にできていた家事ができなくなり、そのストレスで笑顔の暮らしがなくなってしまう。弊社のサービスCaSyは、共働き世代が増えていく昨今、笑顔がなくなってしまいそうなときに社会のセーフティネットになるのではないかと考えています。
今後、家事が仕事として社会的に認められていけば、「家事は大変なこと」という認識が家事をしてもらう側の人々の間にも広まっていくはず。とても意義のある事業だと思います。
池田 家事を他の人に任せ大切な人との時間を創る。この観点から周辺領域にビジネスを拡げ、お料理代行サービスやエアコンの分解洗浄といったハウスクリーニングまで対応できるようになっています。
――freee導入のきっかけとご利用状況を教えてください
上場を見据え、オールインワンのfreeeに期待を託した
池田 共同創業者で代表取締役CEOの加茂が公認会計士の資格を持っていたこともあり、設立からしばらくの間は、決算や管理まわりのことを彼が一人で担当していました。しかし、社員数が30名ほどに増え、会社としてもしっかり仕組みをつくっていくなかで、freeeの導入を考え始めたんです。
朝倉 上場を見据えたとき、今後社員増にともない増え続けるバックオフィス業務をいかに効率良く回すのか。 これが私たちの部署が検討したテーマでした。管理部門に割ける人員は少なく、システムやプロセスごとに人を配置する余裕はありません。そこで導入したかったのは、単なる会計ソフトではなく、証憑管理やワークフローなど稟議の仕組みづくりにも活用できるオールインワンのシステムでした。
池田 その点で、freee会計を選んだ決め手は2つあります。1つは、SaaSなので導入がスピーディーに業務を行えること。もう1つは、情報を一元管理できるところです。
それまではExcelで会計を管理するケースが多く、プロセスが属人的。しかしfreeeの場合、サービス内ですべてが完結し、証憑や稟議、仕訳といった数字の根拠を誰でもたどれるのが大きな魅力でした。他の会計ソフトも検討しましたが、内部統制的な観点で、承認機能が付いており、ログが簡単に追えること。これらトレーサビリティの考え方は上場に欠かせない大事なポイントです。freeeのほうがバックオフィスを整え、生産性をを改善していきやすいと感じました。
朝倉 既存の会計システムからfreeeへの移行は大がかりな作業になることが予想されました。しかし、上場に向けて管理部として体制をしっかり整えていくのであれば、移行してゼロから作れる上場前の今しかない。そんな思いもありfreeeを導入しました。
実際、導入後にfreee主催の勉強会にも積極的に参加していますが、APIを介して他のサービスと連携しどんどん改善が進んだり、自分たちと共に成長していくサービスだという感覚があります。
池田 会計ソフトをfreeeに移行して痛感したのは、会社や ビジネスの規模が拡大すればするほど、よりスイッチングコストが高くなること。ワークフローなどが未整備の状態だからこそ、早めにfreeeへ移行して良かったと感じています。もう少し早く導入すれば良かったかなとさえ思っています。
基準が整っていない“会計的負債”を解消、社内全体をfreeeに最適化
池田 導入後にまず注力したのが「会計的負債」の解消です。たとえば、損益計算書(P/L)や貸借対照表(B/S)を分析するにしても、基準が一律かどうか確認しなければなりません。属人化していた過去の会計システムのデータでは、担当者により勘定科目に違いがあったり、売上計上基準や原価計算基準についても整え切れていない部分がありました。継続性の原則が整っていない状態では財務諸表を過去と照らし合わせることができず、経営判断が鈍ってしまう可能性もあります。
freeeではメモタグ機能を使って担当者間でやりとりすることで、共通認識をもちやすく、仕訳のばらつきを防止できるようになりました。
朝倉 バックオフィス側だけでなく、申請業務などを行う社員側でも、手間や不明点が減り良い影響が生まれました。
たとえば、システムを操作するのがあまり得意でない社員でも、社員自身で正しく経費申請できるようになりました。社員がルール通りに申請すれば、ワークフローの裏側で適切な勘定科目が入るように設定し ています。仕訳のばらつきも起こりませんし、確認も省けるようになりました。
池田 freeeの導入にあたっては、freeeを最も使っている企業であるfreee株式会社のやり方に乗っかりました。自分たちでカスタマイズしたり、独自の実装を行うことなく、ノンカスタマイズでfreeeを使う。まっさらなところから上場に向けて会計の仕組みを整えていくならば、これがおそらく一番いいやり方なのではないかと考えています。
上田 今回のfreee導入では、freeeの方に導入支援をしていただいたのですが、運用面のアドバイスも結構いただきました。バックオフィスの効率化には、社員一人一人の申請や入力などの社内の協力が欠かせません。社内展開前に先回りして準備でき、バックオフィスはもちろん、社内全体がfreeeに最適化したことが大きな転換点だったと考えています。
月次決算は2営業日減、給与計算も2.5営業日減。定型業務を大幅に削減できた
上田 このよう な効率化の結果、以前は取締役会のための分析業務に7営業日ほどかかっていたのが5営業日で完了するように。作業時間を2日ほど抑えられ、経理にかかる業務時間を圧縮できました。
月次決算だけでなく、給与計算の仕組みも大きく変わりました。従来は勤怠データの取り込みから給与計算、振込まで3~4営業日ほどかかっていました。freeeへの移行後は、勤怠データから自動で給与計算、振込ファイルの作成まででき、ほとんどがfreee内で完結できるので助かっています。
2019年5月には、改元にともなう10連休を挟んだなかでも給与計算が1.5日で完了。2〜3倍の効率化を達成できたと思います。
freee導入で1〜2割会計精度が向上。トレーサビリティも上がった
朝倉 スピードだけでなく、精度の面からも向上が見られました。月次決算は、少なくとも1~2割は、精度や確度が高くなった実感があります。
以前はせっかく税理士に相談させてもらう機会があっても、データの粒度が粗く見てもらうのもためらわれるほどの状態でした。前期の決算からfreeeで管理を始めて精度は向上、詳細な分析も可能となり、バックオフィスから見た会社としてのステージは上がったと思います。
池田 月次を締める作業で手一杯にならず、締めた結果の予実差異を分析できるようになったことは大きな変化です。仕訳に品目や取引先、メモをタグづけして細かく整理整頓できるので分析の軸も途切れにくく、管理会計に近い部分まで踏み込んで管理できる。また仕訳に紐付くかたちで資料や証憑を添付できるので 、トレーサビリティも向上しています。
より本質的な業務に時間を使えており、企業価値の向上につながっていると思います。
――今後の展望について教えてください
バックオフィスにも「Omotenashi × Technology」を
池田 「Omotenashi × Technology」は私たちが大事にしているバリューですが、これは社員の中で大事な価値基準になっています。バックオフィスもこのバリューにもとづき、より効率化を図っていきたいと考えています。システムがより整備され、社員に対してのホスピタリティが向上することで、社員全員が本質的な活動に注力できるようになります。
freeeの導入で仕組み化や社内規程の整備に取り組めたので、今後はfreeeを使い倒し、他のシステムとの連携をさらに進めていきたいと考えています。手作業により発生する余分な時間やミスを削減したり、社内の手続きをより簡単にしてプロセスが浸透しやすくなるようチューニングをかけていきたいです。これからさらに会社が成長しても、定型業務の増加が比例しないよう自動化したいと思います。
朝倉 freeeで使える機能をすべて使いこなすのを目指しつつ、扱う人の固定化や属人化が起こらないよう、仕組み化をさらに進めていきたいです。freeeの持つ改善の思想にのっとり、一度つくっただけで終わらずに「まだ改善できるところはどこだろう」「バックオフィスをさら に成長させたい」という視点で、バックオフィス全体の効率化を常に考えて進めていきたいですね。
上田 月初の繁忙期でも「ケガをした」「お休みに入りたい」といった突発的な人のケアに丁寧に対応できるようになったので、次は新入社員でも迷わないような仕組みづくりに注力していきたいです。弊社には、本当にCaSyが好きな社員が多いので、私はみんなが業務に対して熱量を持ち続けられるよう、さらに仕組み化を進め、バックオフィスからみんなを支えていきたいです。