ラクスル株式会社は、BtoBに特化した印刷・広告のシェアリングプラットフォーム事業「ラクスル」、物流のシェアリングプラットフォーム事業「ハコベル」を運営しています。2018年には東証マザーズに上場、さらに2019年8月には東証一部への市場変更を果たすなど、今もなお成長中です。
創業時から「仕組みを変えれば、世界はもっと良くなる」をビジョンに、企業が持つ遊休資産を活用し、付加価値の高い印刷・広告・物流サービスを展開することに成功しています。インターネットやバリューチェーンが急速に進化する昨今、既存の20世紀型産業を再検証し、掛け合わせたことが成功の鍵となりました。
成長企業のバックオフィスには一体どのような秘密があるのでしょうか。経営管理部長 西田真之介氏、経理担当の平佐賢宗氏に、事業とのコミュニケーションで変化しつつあるバックオフィスの役割と事業にコミットするコツ、freee導入までの経緯とその後の変化について伺いました。
設立の経緯や御社サービスへの想いを教えてください
事業とバックオフィスに根付く「仕組みを変えれば、世界はもっと良くなる」
西田 弊社では「仕組みを変えれば、世界はもっと良くなる」をビジョンとして掲げ、「印刷」「広告」「物流」の3つの産業に対して事業を展開しています。具 体的には印刷と広告の「ラクスル」、物流の「ハコベル」、2つのBtoB向けシェアリングプラットフォームを運営しています。
私たちが印刷や物流など分野で事業展開するのは、既存の大きな産業をテクノロジーの力によって変革できるチャンスがあると考えているからです。「ラクスル」は古くからある「印刷」という業界に「インターネット」を掛け合わせて生まれた事業です。印刷機の非稼働時間を活用することで、高品質な印刷物を低単価で提供しています。「ハコベル」も同じく「インターネット」の力で、トラックの非稼働時間をすばやく見つけて活用することで、低価格の物流サービスを実現しています。
結果としてお客様はより安く、より早く印刷や物流サービスを利用できるようになり、印刷会社や運送会社などのパートナー企業側も取引コストを削減しながら、遊休資産の有効活用が可能になるなど、双方にメリットのある事業運営を実現できています。
弊社の「仕組みを変えれば、世界はもっと良くなる」というビジョンはバックオフィスにも反映されています。日々一定のオペレーションが発生する経理業務では、その作業が本当に必要か問題提起し、日常的に検証しています。事業が拡大するフェーズでは人員増加で解決しがちな作業を、私たちの場合は、週1で経理のメンバーだけの振り返りミーティングをするなど、細かいスパンの仕組みの改善で解決しています。
エンジニアやデザイナーはアジャイルなどの取り組みをやる企業が多いですが、バックオフィスでもこのような細かい仕組み化を積み重ね ているのが弊社の特徴です。
freee導入のきっかけとご利用状況を教えてください
バックオフィスを効率化したい。共通する思想からfreeeを信じた
西田 以前は大手の会計ソフトを使っていましたが、安価なプランを採用していたこともあり、上場準備をはじめる上で会計システムのアップデートが必要でした。当時の選択肢は2つ、1つは使っていたソフトをアップグレードして使い続けるか、もう1つは別の会計システムに切り替えるかのどちらかでした。もちろん大手のソフトであれば、お金を払ってアップグレードすれば安心のクオリティが手に入ることは分かっていました。
しかし弊社のビジョンに照らし合わせて考えると、正しい会計処理だけでなくバックオフィスの効率化を実現するという思想面を重視したい。その想いからfreeeを選択しました。導入時の2017年春頃は、まだfreeeも発展途上というタイミングでしたが、freeeがより進化することを信じて導入に踏み切りました。
多くの会計システムがある中でfreeeを選んだ理由の一つには、色んなメンバーに使ってもらいやすいことがあります。バックオフィスのメンバーだけでなく事業部の方々にも使えるような会計システムが理想だったので、事業部の方々の使いやすさや連携のしやすさ、費用も重視しました。
データ抽出にかかる20〜30分の処理が数秒に。Excelでの加工も不要になった
平佐 インプットでいうと、伝票の仕訳入力が非常に直観的でわかりやすいところが気に入っています。私が前職で扱っていた会計システムでは、8桁の勘定科目コードを暗記する必要があったのですが、freeeではそれも必要なく、画面を沿って適切に選択できます。
アウトプットでいうと、月次推移や試算表の機能でP/LとB/Sをタブの切り替えで確認できという操作性が良いですね。以前は他部署の方にデータを共有する際、Excelで都度データを抽出・加工していましたがその作業がなくなりました。現在はこちらで条件を抽出、URLを送るだけで完了します。これまで1件の対応に20~30分かかっていた処理が、秒単位で完了するようになりました。freeeは経理以外の人でも操作しやすいので、全社規模で作業の効率化と円滑な社内連携に大きく寄与してくれています。
西田 freeeではインプットしやすいのはもちろん、アウトプットで知りたい情報を簡単に拾うことができます。特に月次推移に関しては、内訳の表示が明快で仕事が快適に進みます。経理は数字を見るだけでなく「この数値は何か変じゃないか?」と気付 き、考えることが会社の守りにつながります。freeeの導入によって数字を把握しやすくなったことは、我々にとっても大きな進歩ですね。
事業の急拡大に伴い、日々様々なトラブルや新しい話が出てくるのですが、それに対しての相談やアドバイスに多くの時間を割けています。月次締め、支払の時間以外は経理というよりもむしろ、自ら事業側の人間として一緒に解決策を考えられている。そこまで私たち自身のあり方を変革できたのも、freee導入による時間削減が大きいと思っています。
他にもfreee人事労務の導入によって、以前は社労士事務所にお願いしていた給与計算が今では社内で完結するようになりました。freee人事労務によって6営業日かかっていた毎月の締め作業も4営業日で終わるようになりました。年に3桁規模で社員スタッフが増える中、今も変わらず4営業日で締めることができており、非常に助かっています。
仕組み化だけでは仕事が回らない。ストーリーを知る社員がいるからこそバックオフィスは回る
平佐 工数削減の他にも、freeeの導入によってメンバーの働き方がよりフレキシブルになりました。経理のメンバーの中には小さいお子さんを育てながら働いている方もいるのですが、急な事情で出社できない時でも、freeeを使えばデータや証憑はクラウドにありますので、リモートワークが可能です。家族の転勤に ともない、転勤先の地方からフルリモートで仕事を続けた方もいます。場所を選ばない働き方を推進できる点においても、freeeの存在感は大きいです。
西田 経理などバックオフィス業務は、単純な事務能力の高さだけで語れるものではありません。過去の意思決定の経緯をある程度知っていることが重要なアドバンテージだと考えています。そこに新たな知識や経験値を増やしていけば、一貫性があってよりよいものを生み出せるようになる。バックオフィスとは、ストーリーのある仕事なんです。仕組み化だけが存在し、メンバーが次々と変わるよりは、長く居続けてもらうことがバックオフィスには欠かせません。バックオフィスのメンバーが長く活躍し続けられる環境を作るためにも、freeeの存在は必要不可欠なんです。
社内システム効率化の観点から言えば、業務を標準化し誰が担当しても仕事が同等に回る仕組みを作ることは可能です。しかし業務効率を極めることがすべてではありません。それならば外部に委託すれば良いわけです。バックオフィスの人間は、事業に対する専門知識と深い理解、経験を持ちながら、その中で自分ができることを真摯に考え実行するプロフェッショナルであるべきだと思っています。会計の知識と事業理解をあわせ持ち、できるできないの瀬戸際を攻め、事業の意思決定をサポートする。それこそがバックオフィスの付加価値であり、会社の成長につながると考えています。
そういう意味でも、弊社では経理未経験者を経理チームに迎え入れています。経理の知識はこれから一緒に学んでいけばいい。それよりも今までの経験や 視野をいろいろな形でバックオフィスの仕事に活かして欲しい、というスタンスです。実際に他の部署から異動した方でも事業での経験を活かしながら、挑戦の機会や仲間との助け合いに面白みを感じてくれており、そんな「人としての良さ」がより大切だと思っています。freeeの効率の良さや使いやすさは、そんな組織づくりにも貢献してくれているのです。
今後の展望について教えてください
堅守速攻でより付加価値の高いバックオフィス構築を目指す
西田 バックオフィスとしてこれからも大事にしていきたいのは「堅守速攻」の姿勢です。よく「攻めのバックオフィス」という言葉を聞きますが、個人的には管理部が攻めることはほぼないと思っています。むしろ管理部が意識すべきリスク管理やマネジメントなど「堅守」の方。あくまで攻めるのは事業部です。私たちバックオフィスは、会社や事業部側がいつでも攻められるような体制作りを目指しています。
たとえば本当はバックオフィスが即座に潰すべきリスクを放置しておくと、それを対応するための時間的コストも上がってしまいます。いざ、事業側から求めがあっても、機敏に動くことができません。バックオフィスの定型業務を効率化して、常に事業側がコミュニケーションを取りやすい状態にしておくことが重要です。
そのためにもfreeeをもっと活用して、付加価値の高い仕事ができる環境と人材を育てていきたいです。
すでに月初の締め作業でfreeeの効果を感じていますので、今後はさらにfreeeを使いこなして経費精算や請求書発行でもうまく活用していきたいです。監査などにもすぐ対応できるように、freeeで一元的な管理を進めていきたいですね。
平佐 弊社では「Reality(高解像度)」「System(仕組み化)」「Cooperation(互助連携)」の3つの行動指針を掲げています。経理という立場でも、会社と事業を理解し、その実態や経緯といったストーリーである「Reality」をよく知ること、freeeなどの導入によってみんなが効率良く仕事できる「System」を構築すること、そして他の事業部との連携やアドバイスで「Cooperation」の関係を作っていくことを大切にしています。
今後もこの行動指針をベースに、freeeを上手に活用しながら、より事業へのコミットを高めていきたいと思っています。