リサイクルショップや整骨院の運営、経営コンサルティングなど幅広い事業を手掛け、北関東エリアで計43の拠点を展開する株式会社プリマベーラ。複数の独立した会計システム同士が連携されておらず、毎回データの取り込みなどにかなりの時間がかかっていたと言います。また、「幅広い事業で多拠点展開」という経営スタイルならではの経理業務の煩雑さもありました。
新型 コロナウイルス感染症の拡大をきっかけに、会計システムの刷新に着手したという同社。会計システムの選定のポイント、かねてより抱えていた課題点にfreee会計の仕組みがいかにマッチしたかなどを、導入の主担当を務めた嶋田泰徳さんにお話を伺いました。
システム連携がされておらず、経理処理に膨大な手間と時間がかかっていた
ーーまずは、御社の事業内容をお聞かせください。
嶋田泰徳さん(以下、嶋田) リサイクルショップ運営や、DVD・書籍の販売・買い取り、整骨院の運営、経営コンサルティングなどの事業を行っています。群馬県太田市に本社を置き、北関東エリアに4事業17業態43事業所を展開しています。
近年、特に注力しているのはDVD・書籍の通販事業ですね。新型コロナウイルス感染症の拡大をきっかけに、2カ月という短期間で、2拠点から30拠点ほどまで増やしました。将来的には、さらに業態や拠点を広げていく構想もあります。
ーー事業や業態が幅広く、拠点数も多い中で、経理・会計業務に関しては、どのような課題があったのでしょうか。
嶋田 現金や預金、債権の管理が煩雑で、膨大な手間がかかっていました。従来使っていた経理ソフトでは、給与ソフトやインターネットバンキングなど他のシステムとは連携ができていなかったのです。
例えば給与情報を経理処理に反映させるためには、給与ソフトからデータを一旦CSV形式で出力し、オンプレミス型の会計ソフトに合わせた形式に修正してから取り込まなければなりませんでした。また、預金額の確認にしても、70ほどある口座の一つひとつにログインしなければならず、とにかく工数がかかっていました。
ーーそうした負担がかかっていることで、業務上の弊害としてはどのようなことがありましたか。
嶋田 総務経理課は私と3人のアルバイトからなるのですが、4人がかりでも日頃の業務は手一杯。年末調整や賞与の対応が発生する繁忙期には、経理処理の業務が滞るのが常態化していました。
「意思決定を素早くするために、できるだけリアルタイムで数字が見たい」と経営陣から要望があったのですが、売り上げなどの数値に関してはまとめて入力することしかできず、その結果、P/Lなどの経営に関する数字が月に1回しか経営層に提示できない状況でした。
freeeの柔軟なサポートにより、予定より2カ月早く本稼働へ
ーー会計システムを見直すことにしたのはいつ頃、どのようなきっかけだったのでしょうか。
嶋田 2020年春のことです。新型コロナウイルス感染症が拡大していく中、代表から、「全社的にテレワークが可能な体制を整えるように」とのミッションが課せられました。それを受け、総務経理課として行うべきことを、総務部長と話し合いながら決めていったという流れです。
ーー具体的にはどのよ うな方向性を目指していったのですか?
嶋田 まず、会社にいなくても経理業務ができる体制にするため、会計システムをクラウド化すること、ペーパレス化を目指すこと。そして、これまで煩雑化していた業務を改善すべく、データ連携によりシステムをまとめて一元管理化する、という方向性を定めました。
また、今回の変革にあたり、代表から「日次決算が可能な体制にしてほしい」との要望も受けました。さすがにすぐには難しいことですが、そこをゴールと見据えて取り組むべくシステム選定を始めたのです。
ーーシステムの選定は、どのように進めていったのでしょうか。
嶋田 最初に、目指す方向性を実現するために、必要な条件をリストアップしました。大前提として、オンプレミス型の会計ソフトからのデータ移行がスムーズに行えること、現行のシステムと問題なく連携できること、連携できるシステムの種類が豊富であること。そして、現在の業務をスリム化できるよう、金融機関取引の仕訳が自動で取り込みできること、定型仕訳を自動で行えることなどをマスト項目として挙げました。
さまざまな会計システムの中から、価格帯などが合う4社に絞り込み、総務部長と私とで1社ずつ電話をかけ、リストの条件を満たせるかをリサーチ。その結果、freee会計に絞られました。
ーー貴社ならでは の経営スタイルとfreee会計の仕組みが、特に相性が良いと感じられた点はありましたか?
嶋田 業態ごとに多種多様な取引先がある当社にとって、取引先の管理や取引先情報の参照がしやすい点は非常にありがたいと感じました。特に重宝しているのは「メモタグ」機能です。
例えば、最近は通販事業を拡大しているとお話しましたが、膨大に増えた出品先ごとの手数料を確認するだけでも、以前は検索結果の中から目視で探すというように、大変な手間がかかっていました。
その点、freee会計では、取引先ごとにつけたメモタグをクリックすれば一発で確認できますので、工数が格段に少なくなり、時間も短縮されています。
ーーなるほど。そのほかにはいかがでしょうか。
嶋田 以前のシステムでは、会計に関する情報は特定のPCでのみ閲覧できる状態でしたので、現場が見ることはございませんでした。その点freee会計は、クラウドな上にWindowsにもMacにも対応しているため、現在ではすべての部署でfreee会計の情報を閲覧する習慣がつきました。リアルタイムで情報を確認できるのは、今後の戦略を立てるうえでも大いに貢献してくれていますね。
ーー旧システムからfreee会計への移行作業は、スムーズに進みましたか。
嶋田 はい。というのも、freee会計はデータの取り込みにおいて、非常に柔軟性が高かったんです。以前のシステムでは、例えばエクセルデータを取り込む際、システムに合わせて項目を並び替えるといった手作業による下準備が多く面倒でした。
freee会計は、項目名さえ合っ ていれば並び方がバラバラでも自動で最適化して取り込んでくれるので、手間が大幅に軽減されます。当社はさまざまな事業で複数種類のシステムを使用しており、なおかつ今回の移行は急務だと代表から言われている中でしたので、移行作業が想像以上にスピーディに進み、大変助かりました。
ーー移行に際し、freeeからのサポート体制はいかがでしたか。
嶋田 群馬と東京で距離が離れていますし、新型コロナウイルスの影響もありましたので、一度もリアルで会うことなくチャットやウェブ会議システムを使ってサポートを受けました。説明がわかりやすく不明点も気軽に質問できましたので、不便に感じることはなかったですね。
特にありがたかったのは、freeeとは直接関係のない、当社が従来使用していた会計ソフトに関することでも丁寧に調べ、レクチャーいただけたことです。そうしたサポートのおかげで、私たちはfreee導入への準備をどんどん進めることができ、結果として当初の予定よりも2カ月ほど早く本稼働をスタートできました。
作業時間の大幅カット、人員の0.5人分削減を実現
ーーfreee会計の導入により、具体的にどれくらいの作業時間を削減できましたか。
嶋田 日常の経理業務において、3名のアルバイトの方と私の計4名で1日(8時間)かかっていた分の作 業時間が、まるごと削減できました。 時間にすると32時間分に相当しますね。当初は操作に戸惑っていたパートの方たちも、特に口座残高の確認や取引の自動登録がワンクリックで処理できる点については「早い!」「楽になった」と好評でした。
個別の作業で言うと、例えば口座から資金を移動する作業時間は10分の1ほどに、月次決算の会議用資料のためのデータ作成も、以前より3~4時間は早くなりました。総務経理課としてマンパワーに余裕ができたことで、アルバイト3名のうち1名を他部署との兼任にすることもできました。
ーー作業時間を大幅に削減できたおかげで、部署の運営上ではどのような良い影響がありましたか。
嶋田 データ処理から閲覧までfreee会計内ですべて完結するので、従来のように一旦エクセルで吐き出して変換する作業がなくなりました。P/Lなどの経営に関する数字もこまめな出力が可能になりましたし、経営会議で使用するレポートなどもワンクリックで表示させてレポート用のフォーマットにコピペするだけで良いので、格段に早くなっています。懸案だったペーパレス化も実現できました。
ーー当初の目的だったテレワークの推進についてはいかがでしょうか。
嶋田 アルバイトの方の出勤状況は変わりませんが、私自身は週1日在宅勤務にすることができました。freee会計が本稼働して4カ月ほど経った現在、私がいなくても業務に大きな支障はなく、アルバイトの方がfreee会計の使い方でわからないことがあっても、チャットでやり取りすれば済むレベルです。ユーザーインターフェイスがわかりやす ので誰にでも馴染みやすいですし、指示を出すときも「その処理であれば、画面の〇〇というボタンを押せばいいですよ」などと伝えやすいので助かっていますね。
ーー総務経理課以外での状況はいかがですか?
嶋田 リサイクルショップなどの店舗では、POSデータをfreee会計に自動で取り込むことにより、いつでもリアルタイムで売り上げの状況が確認できるようになりました。店長たちは必ずしもパソコン操作に長けた者ばかりではありませんが、最低限必要な経理の基礎知識を覚えてもらうことで、難なく操作できていましたね。当社は店舗数が多いので、もし付きっ切りでフォローしなければならないシステムであれば、導入は難しかったと思います。
また、特にコンサルの事業部では入金管理が重要なのですが、今まで一つずつエクセルに手入力して管理していた売掛管理について、freee会計で請求書を作成すれば自動で反映されるので、大変便利だと感じています。
在宅ワーク、経営分析への貢献、日次決算の実現を目指して
ーーfreee会計で、今後使っていきたい機能はありますか。
嶋田 前述したように「メモタグ」機能の有用性の高さを実感しているので、今後は商品ごとの一覧など、より広い範囲で活用していく予定です。また、経費精算やワークフローに関しては現在他 社のソフトを利用しているのですが、それと同じことがfreee会計のプロフェッショナルプランでできるとわかったので、ゆくゆくは一本化したいと考えています。会計とワークフローの一体化は以前のシステムにないfreeeの魅力だと思うので、期待しています。
ーー最後に、今後の展望をお聞かせください。
嶋田 freee会計のさまざまな機能を使いこなし、効率化だけでなく分析により、さらなる経営面への貢献も目指します。例えばクレジットカードでの処理について、以前は支払い発生時ではなく、キャッシュが出た時点で経費へ反映されていました。発生ベースで買い掛けを立てられるようになれば、よりリアルタイム化に近づき、経営分析も厳密にできるようになると期待しています。当初にゴールとして掲げた日次決算をぜひ実現したいです。
また、テレワーク化もさらに推進していきたいですね。交代で毎日1名は在宅勤務にできるようシフトを組み、社員の事情や世の中の状況に柔軟に対応できる体制がつくれるようになるのが理想ですね。
(取材・執筆:北村朱里 編集:波多野友子/ノオト 撮影:波多野匠)