のれんFC店舗を増やすにあたり、大きな課題だったのがバックオ フィスの省力化。FCオーナーは、店の運営には自身があってもバックオフィス業務は全くの素人。彼らの業務負担を軽減し、店舗の運営・営業活動に注力してもらおうと、freee会計を中心としたシステム化を進めています。
今回はFC本部側の管理本部で経理部 部長 兼 主計グループ グループリーダーの堤 俊之様に、本部側とFC加盟店、それぞれにfreee会計を導入した経緯やその利便性についてお話を伺いました。
――設立の経緯や御社サービスへの想いを教えてください
写真を中心に事業を多角化。従業員数は2,600名を超える
弊社のビジョンは「幸せを手から手へ──from hand to hand」です。ここ数年は事業展開のキーワードを「一枚の写真から」とし、写真を中心に事業を多角化させています。
事業の柱は2本。一本目は 街の写真屋としてDPE商品(Development Printing Enlargement;写真の現像)を扱う事業、二本目が携帯ショップです。 私たちは携帯電話・スマートフォンを「日常に溶け込むカメラ」として捉えています。スマホ利用者が広がれば、写真を撮影し現像する方も増えるはず。携帯電話・スマートフォンで撮った画像をDPEでプリントしたりフォトブック(簡易的な写真集)にしたり、お客様に写真のある暮らしを楽しんでほしいと考えています。
グループ全体の従業員は2,672名(2017年1月31日現在)。社員665名、アルバイト2,007名で構成されています。私の所属する管理本部は19名。人事・経理・総務の機能を担っていますが、経理チームは私を含めて9人です。
直営店から店舗設備や場所を移譲。好条件で独立を支援する
DPE事業の加盟店は350店舗、携帯ショップ事業は100店舗(2018年3月末現在)です。 それぞれにFC店が存在しますが、全体の60%、120店舗ほどをFC店が占めています。2017年からはじめた独立支援のための制度「のれんFC制度」により、弊社で経験を積んだ正社員やアルバイトの方々が、続々とのれんFC店としてのれん分け・独立しています。
もともと社長が抱いていた「10年、20年と長年貢献してくれたスタッフに、店舗運営を任せられる環境を作りたい」という想いが元になり生まれたこの制度。現在では「のれんFC」により独立した店舗が60店舗を超え、今後さらにFC店、とくにのれんFC店を増やす計画を進めています。
従業員の間では将来独立したいというニーズも強く、彼らが夢に向かう応援もしたい。直営店から店舗設備 や場所を移譲し、好条件でオーナーの方を支援しています
のれんFC制度を使い独立する年齢層は幅広く、複数店舗の店長やエリアマネージャーを経験したベテラン社員、店長を2〜3年経験した若い社員もいます。 本来、お店や写真が好きで入社してくれた社員にとって、経験年数が増えるに従い現場を離れ、だんだん管理職(エリアマネジャー)になる・お店を離れるのは望ましくありません。 仕事をする上ではオーナーシップを持って働くことが重要ですが、そのためにはFC化が有効だと考えています。
ROAを意識し、のれんFC店を増やしていきたい
FC化を推進することで、会社の経営的な課題も解決しようしています。
優秀な社員がオーナーシップを持って店舗運営するので管理コストも減少。結果的にROAもよくなり、上場企業として株主価値の最大化もはかれる。のれんFCとして独立を促し、店舗が自由な裁量を持ちながら経営できる体制を、本部としても支援していきたいです。
嬉しい副次効果もありました。直営店ではどうしても会社のルールに縛られてしまいますが、のれんFC店に挑戦する元社員たちは皆意欲的。お店の飾り付け・売り方など自分の考えを試しています。社員の時には時間のゆとりがなくできなかったことに挑戦するケースが非常に多く、店舗の売り上げも増加しています。
――freee導入のきっかけとご利用状況を教えてください
FC店オーナーにはバックオフィスを省力化し、店舗運営に集中してほしい
のれ んFC店を増やすには、バックオフィス的観点から課題が2つありました。 一つ目はのれんFC店のオーナーさんが経理業務に手を出しやすくすること。二つ目は本部との連携です。
オーナーさんは今まで直営店の店長やエリアマネジメントをしていた人が中心。店の運営には自身があってもバックオフィス業務は全くの素人です。帳簿の付け方も、どの数字がどんな経営的意味を持つのかも分からない。しかし、店長でなく経営者(オーナー)になるのだから、お金や経営数値の見方や考え方は意識して身につけて欲しいです。一方、本部としては事務などのバックオフィス業務ではなく、本業に集中して欲しい。そんな相反する思いもありました。
そこで考えたのが、FC店へのfreee導入支援。FC店にバックオフィス体制構築を丸投げするのではなく、freeeを提供し効率的に自分で取り組める体制づくりをお手伝いしようと思ったのです。本部では2017年から1年ほどかけ、経理サポートの仕組みを整えてきました。
一般的に、FCの業界ではオーナーが個々に会計ソフトを用意したり、税理士の先生に丸投げするもの。弊社は本部側でfreee会計とfreee人事労務を用意し、環境を整えました。導入によりオーナーの方には、店舗運営に集中してもらえる環境が作れたと考えています。
FCオーナーさんは、年度終わりにまとめて入力・申告の準備をすることが多いもの。freeeは会計初心者でもとっつきやすいUI設計ですので、忙しいFCオーナーにも日々の隙間時間をつかって会計入力をしてもらいやすい。心理的ハードルの低さと、入力の簡単さがFCオーナーにも好評です。
これからFCオーナーには経営者として、数字を見て判断できるようになってもらいたいです。せっかくfreeeで定量化できた会計数値。数字の意味や見方を学んでほしい。バックオフィスが省力化できた分、FCオーナーの会計意識を一段上に持って行くのが理想です。
加盟店と本部をつなぎ、店舗運営に役立つレポートを提供
freee会計をFC店に導入した重要な目的が、本部との連携です。
現在弊社では、本部の持つ会計データをオーナーさんに向け情報提供しています。
本部から加盟店へ、卸し売った請求書と、全店舗のPOS売上情報をfreee会計を使って情報提供しています。freee株式会社へ依頼し、API経由で本部の会計データを取り込み閲覧できる仕組みを開発して頂きました。これにより店舗側は本部のレポートを簡単に閲覧し、店舗運営へ迅速に反映できます。
加盟店向けの会計・人事労務勉強会を開催。FCオーナーをサポートしたい
FCオーナーさんへのfreee導入を支援するために、FC本部でfreee勉強会を定期的に開催しています。
実際にfreee会計とfreee人事労務を使い、会計面からは帳簿の付け方・会計数値の意味をレクチャーする勉強会、労務面では年末調整の手引きの読み合わせ会を開催しました。FC本部やFC店舗のシステムが統一されたことで、一同に会して 会計の考え方や使い方を伝えることができる。教えるFC本部側としても楽でした。
FCオーナーになると、経理事務のほかにも従業員への給与関係の手続きや源泉所得税納付の手続きなど、事務作業は多岐に渡り多忙を極めます。特にお店の立ち上げのフェーズでは役所に幾度も通う必要があり、バックオフィス業務は複雑で困難です。今後はそういった開業系手続きも本部が積極的にサポートしていきたいです。
FC本部自体へのfreee導入で本部業務も改善
FC加盟店と本部の卸売の請求管理も工夫をしています。請求データと入金データをfreeeに統一したことで、加盟店に電子申請してもらうだけで入金まで一気通貫でシステムが走るようになりました。従来は、加盟店の申請を受け、その都度本部が請求書を作成。請求書をもとに伝票を起票、入金の管理まで行っていたのです。
freeeにより、申請から入金確認までのフローが劇的に改善しました。
今は請求期日に近い取引があると、freeeから経理担当者へ通知が飛びます。通知が出たら本部の経理チームがワンクリックするだけ。今まで手作業で行っていた入金の消し込みもfreeeがやってくれる。本当に楽になりました。
ゆくゆくはfreeeが経営情報をまとめて見れるような、バックオフィスのプラットフォームになってほしいと考えています。本部の財務諸表をFC店も直営店も関係なく加盟店の販売データまで含めて閲覧できるようなシステムが理想。オーナーさんが自分から地域別・ベンチマークしている他店の販売動向を見れたらさらにいい店舗経営ができるようになると思います。
――今後の展望について教えてください
毎月同じ作業を繰り返す定型業務を圧縮できた
経理チームのメンバーは複式簿記もできて、従前の会計の仕組みに慣れている事務能力の高い人たちばかり。外から見えると、freee会計が寄与する自動化のメリットは少ないと思われるかもしれません。しかし、私はfreee会計を使って楽になりそう、という予感にワクワクしているのです。freeeになったらワンクリックで済みそうな作業がとにかく多いんです。それこそ、今まで会計システムリプレイスまでの10年間、何をやっていたんだろうと思うほど。
経理の仕事は定時定額の支払い・入金など、毎月同じ作業を繰り返す定型業務が多いもの。
弊社は銀行口座が多く、FC加盟店舗の分の各口座、融資を受けている銀行の口座、手数料を管理して月に数行しか記帳されない口座など、百件単位で複数に分かれています。従来はそれらの口座を毎月起票しなければならなかった。これを自動化できるのは非常に大きなメリットでした。
経理部が本質的な分析業務に集中できるよう
定型業務を効率化・圧縮し、その分の時間を遣って取り組みたいのが、経理のスペシャリストとして判断を下したり分析したり考えるタスクです。
前年との対比など、経理が本当に取り組むべき分析業務に時間を割けなければ、正しく経理業務が回っているか検証ができません。
今までは定型業務に押され、会計分析に十分な時間を割くことができませんでした。その影響で監査法人 に払う報酬も膨れあがっていました。 監査報酬は監査工数に比例します。業務が効率化すれば経理部で当期の数字の背景をしっかり分析し、対監査法人用の資料を事前作成できる。あらかじめ監査に耐えうる資料を提出できていれば監査手続きも楽に済み、監査法人への支払いも下がるわけです。
今後は分析の質をより向上させる、経理部としての本質的な業務に集中し取り組んでいきたいと考えています。