飲食事業を展開する株式会社パッションギークスは、2017年に設立されました。直営店14店舗、海外1店舗、フランチャイズ2店舗を運営しています。
パッションギークス設立の母体となったのは、創業90年を誇る卸問屋の株式会社中庄商店です。2021年7月には、株式会社mum Holdingsを設立して持ち株会社とし、パッションギークス、中庄商店、株式会社中庄センターの3つの事業会社を傘下に持つホールディングス体制に移行しました。
長い歴史と新たな事業が混在するグループにおいて、経理業務を正確かつ迅速に行うための工夫や、飲食事業ならではの難しさとその解決法、そしてfreeeの活用方法などについて、グループ全体の財務会計を担う鈴木公章さんにお話を伺いました。
増えていく店舗の経理業務を少人数でカバー
――まずは貴社の事業内容や規模について教えてください。
鈴木公章さん(以下、鈴木):グループの母体となっている中庄商店は、創業90年の歴史を持つ食材の卸問屋です。そして、2017年に飲食店を展開するパッションギークス、2021年にセントラルキッチンを事業を運営する中庄センターを設立しました。これらの3つの事業会社が、今年設立した株式会社mum Holdingsにぶら下がる形で、ホールディングス体制に移行したところです。
グループ全体の売り上げは数十億で 、中庄センターはまだ立ち上がったばかりのため、これからですね。従業員は、グループ全体でアルバイトの方を含めて220人ほどいます。社員は70〜80人程度です。
――各社に経理業務を担当する方がいるのでしょうか?
鈴木:実は、グループ全体の経理を僕が担当していて、僕 のアシスタントが1名、営業事務が2名のメンバーだけで経理業務をまわしています。
もともと僕は公認会計士の資格を持っていて、11年ほど前に会計事務所で働いていた経験がありましたが、1年ほどで辞めてしまいました。なぜなら、オンプレの会計ソフトや納税システムは、数字の手入力の手間、エビデンスとなる証憑が紐づかないなどの点が非効率で、「このシステムを使い続けるんだったらこの仕事はやらない」と思ってしまったんです。
freeeと比較すると、「全部手入力しなければならない」「入力した数字に対してエビデンスが紐づかない」「常に紙との突合がある」と不便が多すぎると感じました。
ただ、そのあとにクラウド会計ソフトが世に出てきて、時代が変わるなと思いました。僕は当社に入社する前に、IT企業を営んでおり、そこでfreeeを2014年ぐらいから使い始めていたんです。
当時から僕はfreeeの可能性をずっと感じていました。今はfreeeを使って、少人数で経理業務を担うことができています。
100店舗に増えても対応できる経理体制を
――パッションギークス様、中庄商店様でfreeeを導入いただいたのはどんな流れでしたか?
鈴木:オンプレではなくて、クラウドであることが前提でした。クラウドの中で、UIの良いfreeeになったのは自然な流れでしたね。
今では笑い話ですが、僕がパッションギークスの立ち上げに参画するときに、もともと幼馴染だった代表の阿部と食事に行くと、彼がいつも リュックを背負っていたんですよね。「なんで毎日同じリュックを背負ってうろうろしているんだろう」と思ったら、銀行に行って支払いを終えた後どうしていいかわからない請求書などを入れていたんです。
立ち上げ期はそのぐらい混乱していて、僕が「これを続けたら会社がめちゃくちゃになるから、freeeを使って一緒に整理しよう」と言って導入しました(笑)。
パッションギークスを設立した段階で、同じく僕が経理を担当することになる中庄商店も合わせてシステムを移行しました。
――貴社の経理業務の特徴と、工夫されている点を教えてください。
鈴木:パッションギークスの飲食事業は、毎日の入金確認が経理業務として大きな特徴です。また、どんどん従業員が増えていくので、その管理も重要です。
ただ、これらは全部細かくタスク化できていて、いま150タスクほどありますが、毎月順番に進めていくと完成する状況ですね。
毎日の入金について、飲食事業でよくあるのは本部口座を使う方法です。本部口座に各店舗の入金があって、経理担当者が朝出社したときに「どの店舗からの入金があるか」とチェックしています。そして、入金がなかったら「入金してください」 とアナウンスをする。しかし当社では、全ての店舗の口座を用意して、freeeで口座をリアルタイム連携しているので、確認が最小限で済んでいます。
また、従業員が増えていくことに対しても、freee人事労務を利用しているので、タスク化してデータを連携させていればそんなに難しくないです。
高度な会計処理というよりは、物量に対してどれだけ効率的に処理していくかが問題で、いまはその枠組みを組めているので、売上20億円の規模があっても僕とアシスタント1人で対応できています。100店舗に増えても、いまの体制のままで対応できるようになっています。
300枚の請求書作成作業を、freeeで削減
――freeeを導入して良かった点を教えてください。
鈴木:今までは、日々大量に届く納品伝票をもとに請求書を作っていたんですね。請求書を作るためだけのシステムにカタカタと入力して、それを印刷して郵送していました。事務の担当者が毎月300枚ほどプリントして、300枚全てを封筒に入れてのりづけして切手を貼って……。机の上に封筒が山積みで、その作業だけで丸1日はかかっていました。
freeeはありがたいことに、請求書の作業がクラウドでほぼ完結するので、ものすごく省力化できています。翌月5営業日までには全ての売上が確定して、以前のままだと10日から15日まで請求書作成にかけていましたが、今はないです。
全体として、締めが5〜10営業日ぐらいは早まっているうえに、以前は2.5人ほどで対応していたものが1人でもできるようになっています。
――freeeのタグ機能などは活用されていますか?
鈴木:部門タグや取引タグで集計して分析をしていて、大きく活用しています。
また、勘定科目を細かく設定して利用しています。飲食では、売上金額だけでなく、その構成比率もすごく大事なんです。フードがいくら、ドリンクがいくら、テイクアウトがいくら、と。それぞれの勘定科目を用意して、簡単に分析できるようにしています。例えば、「フードの仕入れ原価」「ドリンクの仕入原価」「テイクアウトの仕入原価」と分けて、売上と紐づけています。
またB/Sでは、借入金も勘定科目を細かく設定しています。飲食事業はどうしても借り入れが過多になりがちなので、それも含めてキャッシュフローをウォッチしないといけません。例えば「長期借入金」で全てまとめてしまうと分析が大変なので、僕は借り入れごとに勘定科目を立てて、借入の状況が一目瞭然でわかるようにしています。
――今後の展望について教えてください。
鈴木:90年続く老舗の中庄商店と、新しい飲食事業のパッションギークス、中庄センターのそれぞれの強みを生かして、上場を目指しています。
規程を含め、内部統制や連結決算などをいま詰めているので、引き続きfreeeを活用して効率的に事業を展開していきたいと思います。
(取材・執筆:遠藤光太 編集:ノオト)