世界的なデザイナーのNIGO®氏が代表を務めるオツモ株式会社は、2016年に創業したスタートアップ企業です。アパレルブランド「HUMAN MADE」などで、世界への展開を推し進めています。
バックオフィスは、かつて店舗ごとに勤怠の方法が異なり、場所によっては紙のタイムカードを利用していたところも。勤怠管理の業務が煩雑で、データの集約に膨大な時間がかかっていました。
そこで2019年からfreeeを導入し、人事労務の効率化・仕組み化、そして内部統制の強化を実現しま した。freee導入の経緯や成果について、CFOの柳澤純一さん、人事労務を担当する出沼靖仁さんにお話を伺いました。
- 店舗や事務所によって、勤怠管理に使用しているシステムがバラバラだった
- タイムカードを見ながらExcelに手作業で入力していたケースもあり、勤怠のデータ集計だけで3、4日かかっていた
導入の決め手
- 勤怠管理、給与計算、会計を含めた一気通貫の基幹システムを構築したいと考えていた
- 他のシステムとは設計思想が異なり、業務が最も簡単になるような設計で作られていると感じた
導入後の効果
- 給与計算がスピードアップし、勤怠の状況もリアルタイムで可視化。3〜4日かかっていたデータ集計をほぼ自動化できた
- 手作業を大幅に減らしたことにより、効率化だけでなく、ミス防止・内部統制の強化にもつながった
- 事務担当者は日頃の作業から解放され、より付加価値の高い業務に従事できるように
店舗や事務所によってバックオフィスのシステムがバラバラだった
――貴社の事業内容について教えてください。
柳澤純一さん(以下、柳澤) アパレルブランド「HUMAN MADE」などをEC主体に展開している会社です。店舗は、フィッティングやショールームなどブランドを体感してもらう場所という位置づけになっていて、売り上げの大半をオンラインが占めているのが特徴です。コロナ禍です が、オンライン主体という事もあり急激な成長を続けています。
マーケティングには主にSNSを活用しています。株主にはファレル・ウィリアムスがいることもあり、全世界の数千万のユーザーにリーチできることも強みです。
フランスにはLVMH、アメリカにはウォルト・ディズニーのように、それぞれの国の文化発信装置があります。日本における彼らのような企業を作っていくことをビジョンにしています。
(右) 自社プロダクトのサンプルを保管・展示するプレスルーム
(左)様々なプロジェクトの企画やデザインなどを行うオフィススペース
――freee導入前は、バックオフィスにどんな課題がありましたか?
柳澤 当社のメンバーは現在約70名で、うち約20名がアルバイトの従業員です。人員は年間30〜40%程度のペースで増えています。ただ、売り上げの拡大に増員のペースが追いついていない状態なので、採用に力を入れています。
そんな状況で、freee導入前は店舗や事務所によって、勤怠や給 与計算に使用しているシステムがバラバラだったのが課題でした。それぞれが現場判断で無料のソフトや紙のタイムカードを使用するといった、個別最適・部分最適の状態で、全体最適は考えられていないような状況で……。
それぞれ異なるシステムで集めた勤怠情報を、担当者が手作業で集計して勤怠表に仕上げ、社外の社労士に依頼して給与計算をしてもらう仕組みになっていました。社労士にデータを投げたり、戻ってきたりといったやりとりも多かったです。
出沼靖仁さん(以下、出沼) 私が入社する前の話ですが、従業員が25名ほどだった頃でも、勤怠のデータ集計だけで3、4日かかっていたと聞いています。タイムカードを見ながらExcelに手作業で入力していく時間が多かったと。
柳澤 さらに、Excelに入力する過程で、書類を見ながら「8時間を超えているからこれは残業で処理する」というように、人による判断が入っていました。残業申請が紙で提出されていることとの突き合わせもしていて、時間がかかりました。
私が本格的にバックオフィスを管掌するようになってからこのような状況を詳細に把握し、業務の効率化だけでなく、BCP(事業継続計画)の観点からも改善が必要だと感じて、2018年頃から仕組み化に取り組み始めました。
設計思想を評価し、freeeを導入
――freee会計、freee人事労務の導入の決め手は何でしたか?
柳澤 まずは勤怠情報と給与計算をつなげたいと考えていました。また、BCP(事業継続計画)の観点から考えても、オンプレミスではなくクラウドのシステムが欲しかったのです。なおかつ、会計も含めた一気通貫のクラウド基幹システムを構築したいと思っていました。
freeeは、設計思想を高く評価して導入を決めました。当時比較していた他のシステムでは、昔ながらの紙の会計処理を電子化したような設計思想のものがほとんどだったように思います。
一方でfreeeは「業務が最も簡単になるのはどのような方法か」という発想で作られているインターフェースであるのが、よくわかったんです。実際に使ってみても、とても使いやすかったです。
また、足りない部分は外部のシステムとAPIでつなげて、エコシステムを総合的に作る発想で設計されているのもわかりました。さらに、コストパフォ-マンスも圧倒的でしたね。
freee会計を導入したあと、freee人事労務を導入しました。決め手は、会計と給与のつなぎ込みが瞬時にできて、当然ながら連携の面が優れていたことでした。
出沼 私はfreee導入後に入社し、人事労務担当になりました。freeeは初めて使いましたが、会計側と一元管理できる点で、非常に効率的なシステムだと感じました。また、仕様も徐々にアップデートされているので、入社当時と比べてだんだん使い勝手が良くなってきているのも感じています。
柳澤 給与計算や勤怠管理など単品比較になると他にも優れたプロダクトがあったと思うのですが、どんどん改善されているという印象を私も受けています。改善スピードが速いですね。
――導入を検討されてから導入を決める までどのような流れで進めましたか?
柳澤 導入はほぼ私1人で進めたんです。2019年の5月に契約し、一部でテスト稼働を行いました。その後、全社で年末までテストをして、問題がなかったので2020年1月から既存の給与計算と並行稼働を開始。そこでも問題なかったので、2020年の2月からフル稼働を開始し、今に至ります。
給与計算のセッティングから打刻機の設定まで、私が行いました。給与計算の専門知識を持たない私でも、調べながら設定できた点は、freeeの良いところです。
そもそも全体の業務プロセスが整っていない状態だったので、一からの構築でした。システムの仕様にプロセスを合わせにいくことを意識しながら調整していきました。
――freeeを従業員のみなさんに浸透させるときには、苦労はありましたか?
柳澤 導入当初は出勤時間の打刻忘れが多かったですね。PCでシステムにログインした状態で「出勤」ボタンを押せば済むのですが、そうした風土がなかったんです。まだまだ新しい会社で、それぞれが多様な会社から来ているので、カルチャーがまちまちで。
今は、SuicaやPASMOなどの交通系ICカードでタッチすると「出勤」ボタンが押されるfreee対応の打刻機を導入していて、打刻忘れはあまりなくなりました。
出沼 そのほかは、非常に使い勝手が良く仕様もシンプルなため、従業員に浸透させるときの苦労は特にありません。システムの入れ替えも簡便にできたので、スムーズに移行することができました。
3〜4日かかっていたデータ集計をほぼ自動化
――freeeを導入前後で、どのように変化しましたか?
柳澤 導入前の課題は、基本的に全て改善したんです。給与計算、勤怠情報、会計がダイレクトにつながっているので、給与計算がスピードアップしました。勤怠の状況もリアルタイムでわかります。
しかも、各作業をほぼ自動的に終えることができます。手作業を大幅に減らしたことにより、効率化できただけでなく、ミスを防止できて内部統制の強化につながりました。
そもそも、なぜ店舗や事務所ごとに異なるシステムを使っていても、なんとか運用できていたかと言うと、担当者がたまたま事務作業のすごく正確な人だったんです。なので、複雑で手間のかかる業務フローでも、なんとか運用できていました。
ただ、それは非常に属人的で、担当者の能力に依存していますよね。freeeを導入し仕組み化させた結果として、その担当者は日頃の作業から解放され、より付加価値の高い財務経理の業務で、仕事の正確性を活かして活躍してくれています。
――freee人事労務の機能で、特に活用している機能はありますか?
出沼 社会保険手続きに係る各種申請フォームが従業員データと連携しているため、自動的に申請書が作成され、従来Excelで作成していた頃より飛躍的に生産性が向上しました。
柳澤 給与計算をした結果がほぼ自動で会計へとシームレスに反映されるのが便利ですね。この点も、効率化と内部統制の強化が実現できているところです。
グローバル展開を支えるバックオフィスの構築を目指す
――バックオフィスの今後の展望を教えてください。
柳澤 グローバルに向け会社を大きく成長させていく計画なので、その成長を支えられるように、freeeのようなシステムを活用して、効果的かつ効率的なバックオフィスを構築していきたいですね。
人事労務領域では、会社を成長させるような優秀な人材を採用する必要があるので、働きやすい環境、仕組み、評価制度、教育研修制度などを整備していきたいです。
出沼 2022年2月から、新たな人事評価制度も導入しています。今後は教育研修制度、福利厚生制度の拡充等、従業員の成長をバックアップできるような制度を構築し、グローバルな成長を支えていきます。
――freee人事労務の導入を検討されている企業の担当者に向けてメッセージをお願いします。
柳澤 全体感を持って取り組むことが大切だと思います。当社はかつて、店舗や事務所ごとに目先の意思決定をして、部分最適になってしまっていました。しかし、freee導入を通じて全体最適となるシステムを構築できてきています。
技術の潮流を知ることや、外部システムとの連携も重要です。freeeでは、足りないところはAPIで外部システムにつないで、エコシステムを発展させていく設計思想かと思いますので、外部も含めた全体感を持って自社に最適なものを導入していくのがよいでしょう。
出沼 全体最適を考えると、会計の導入を考えている会社は一気通貫で勤怠給与まで導入検討するのがよいのではないでしょうか。freee人事労務を単体で見ても、仕様がシンプルで使い勝手が非常に良く、人数にかかわらず導入がしやすいと感じています。
業務プロセスの設計は難しいところもありますが、freeeの場合は業務プロセスを一緒にデザインしてくれるカスタマーサクセスがあるので、それを活用するのも良いでしょう。
(取材・執筆:遠藤光太 写真提供:オツモ株式会社様 編集:ノオト)