システム開発の会社員から税理士にキャリアチェンジした異色の経歴を持つ鈴木美帆様は、独立1年目から多くのご相談に対応して売上を伸ばしてきました。しかしご本人は、「当時は仕事に追われるばかりで、利益を思うように伸ばせず苦しんでいた」と語ります。
鈴木様はこの苦悩を、いったいどのようにして乗り越えたのでしょうか。鈴木様が税理士として独立した想いや、税理士として関わって見えてきた「成長する企業と伸び悩むお客様の違い」も、併せて伺いました。
会社の倒産がきっかけで税理士にキャリアチェンジ
ーー最初に、事務所の方針を教えてください。
鈴木 私どもは、普通の記帳代行ではなく、創業支援・相続・事業承継などのご相談パートナーとしてお客様のビジネス発展に貢献することを目的とする税理士事務所です。
この想いは、事務所のロゴマークにも反映させました。帆をイメージした形状のロゴに、「追い風を受けてお客様のビジネスが順調に進むように」との願いを込めており、シンボルカラーに「バラ色」を採用しました。
▼実際のロゴ
ーー「お客様のビジネスに貢献」という意思が強く伝わります。この方針を定めるまでに、どのような経緯があったのでしょうか?
鈴木 実は私、税理士になる前はシステム会社に勤めていました。ところが、その会社が資金繰りの悪化で倒産してしまったのです。社長は自宅を失い、奥様は心労で倒れてしまう……そんな悲劇を目の当たりに しました。
どうして会社が倒産に追い込まれたのか、考えれば考えるほど、悔しさや許せない気持ちが湧き上がってきました。そして、こうした事態を二度と繰り返さないために、私自身が税理士になって経営者をサポートしていこうと決めたのです。
ーー異業種から税理士へのキャリアチェンジは大変ではありませんでしたか?
鈴木 簿記の基礎知識も理解していなかった30代後半から勉強を始めたので大変だと思うこともありました。でも、前職の倒産が本当に許せなくてたまらなくて……その気持ちが勉強に奮起する原動力になっていたので頑張れました。
税理士試験の勉強と並行して、相続に強い会計事務所で働き始めました。所長は、勉強時間を配慮してくださったり、資格取得後に独立したいという私の希望にも理解を示してくださったりして、本当にありがたかったです。この会計事務所での経験は、今の仕事や今後の事業展開を考えるうえで大変役に立っています。
すべてのお客様に応えるのは困難。「経営のことを一緒に考える」お客様を選ぶ勇気
ーー独立してから一番苦労した時 期は、いつ頃でしたか?
鈴木 独立して最初の1年間が、一番苦労した時期だったかもしれません。売上は伸びているものの、常に仕事に追われる日々が続いていました。
当時は、お客様からお声がけいただいた仕事を断る怖さもあって、いただいたお仕事は全部引き受けていたんですよ。引き受けた仕事の利益率を考える余裕もないくらいに、慌ただしく日々が過ぎていたように思います。
ーー仕事に追われる日々から、どうやって脱却できたのでしょうか?
鈴木 「経営のことを一緒に考える」という事務所の方針を打ち出しました。そうすると、私たちが支援するお客様の線引きができるようになるんですよね。
たとえば、新規問い合わせで記帳代行だけを望むお客様は、私どもの方針には沿いませんから、他の事務所を紹介します。
既存のお客様との契約も見直しました。一部のお客様は、1年間のサービス内容を振り返ったうえで値上げ交渉をして承諾していただきました。
また、利益率が低いお客様からの記帳代行依頼は思い切って断りました。ただ「スポットでの相談はいつでも受け付けます」と一言添えて、お声がけいただける関係性は継続している状態です。
ーー鈴木様の場合、お客様の数を減らすことが、事務所の経営にとってはプラスに働いたのですね。
鈴木 はい。お客様の数を減らしても、事務所の売上は減らないような体制に変えていきました。独立してから1年間、仕事を通して自分たちに自信を持てるようになったからこそ、勇気を持ってお客様との関係性を見直せるようになったのだと思います。
事業が伸びるお客様とは、経営戦略相談に踏み込みやすい
ーーいま支援しているお客様の傾向がありましたら教えてください。
鈴木 事業の成長度合いによって、「順調」「伸び盛り」に分かれるかと思います。
ーー「順調」「伸び盛り」それぞれの特徴はなんでしょうか?
鈴木 「順調」なお客様は、自ら事業計画を立てたうえで、私たちの話に耳を傾けてくださいます。「伸び盛り」のお客様は、行動力や営業力が優れていますね。新しい取り組みをする際には私たちに相談・報告してくださります。
ーー「順調」「伸び盛り」のお客様は、ビジネスを支援するうえで最新状況を把握しやすい行動をしていますね。
鈴木 まさにその通りです。
あともう一つ、「順調」「伸び盛り」なお客様は、経営者がfreeeをきちんと活用して経営状況をお互いに把握できていることも共通しています。freeeの画面で資金繰りを見える化をしたうえで、高 利益を得るための経営戦略を相談できる関係ができていると感じます。
freeeによる自計化を推進したお客様から「便利」「楽になった」と好評の声
ーーお客様のうち、実際にfreeeの入力を担当する方々からは、どんな反応がありますか?
鈴木 「順調」「伸び盛り」のお客様は、かなりfreeeを使い倒していただけています。
特にご好評いただいている機能は、請求書関連。作成から請求先への送付、帳簿付け、入金までシームレスに処理できる点が喜ばれています。あるお客様からは「会社から一歩も出ないで業務ができる!」とおっしゃってくださって、今ではすっかりfreeeのファンになっていますよ。
ーーお客様もfreeeのファンになっていただけて嬉しいです。他に活用している機能があれば教えてください。
鈴木 ファイルボックス(レシート類を取り込んで記帳する)を、スキャナと連携させて使う方法は、お客様だけでなく事務所の従業員からも好評です。証憑の処理スピードが格段に上がり、従業員からは「手入力がほとんど不要になって業務が楽になった」との感想があがっています。
実際にお客様の目の前で、freeeとスキャナを連携させてレシート類を取り込むと、取り込みスピードと効率の良さに驚かれます。利益が上がっているお客様のほとんどは、スキャナも購入して経理業務の効率化を進めていますね。
法人・個人問わず、世の中のお困りごとに応えられる存在でありたい
ーー今後の事業展開について、どのようにお考えでしょうか?
鈴木 大きな軸として「世の中のお困りごとに応えていきたい」とう気持ちがあります。そのうえで、対法人では引き続き経営アドバイスに力を注いでまいります。
対個人については、介護や相続に関するお悩みについて、早い段階からご相談いただける体制を整備しているところです。
ーー介護の領域にも踏み込んだサービスを展開する税理士事務所は、珍しいように感じます。
鈴木 もともと月間2件程度で相続のご相談を受ける機会があったのですが、これまで私が相続のご相談を受けていると「元気なうちに対策を施していれば、こんなに損せずに済んだのに……」と感じることがほとんどでした。なので、早い段階から相続のことに限らず、老後のさまざまな不安を相談できる場所として私どもがお役に立てればと思っています。
当事務所には介護職の経験がある元ケアマネージャーで、認知症のケアを専門とする社労士が在籍していますので、介護についても気軽に相談していただきたいと願っています。
ーー個人の老後にまつわる相談サービスを強化するために、どんな取り組みをしていくのでしょうか。
鈴木 税理士と社労士の価値を掛け合わせて、お客様のお困りごと解決に役立つセミナーを開催しています。最近では、空き家対策特別措置法の施行に伴って私たちが今から備えるべきことをお話ししたセミナーが好評でした。空き家の放置は社会的問題の一つにもなっているので、参加者の関心が高かったです。
▼セミナーイメージ
個人向けサービスの広告宣伝にも力を注いでいます。市役所のモニタ放映するCM枠を獲得できたので、今後はCMをきっかけに相続関連のご相談件数が増えていくことを期待しています。
ーーありがとうございます。最後に、これからfreeeの導入を進める方へのメッセージをお願いします。
鈴木 私たち税理士がきちんとお客様にアドバイスできるようにするためにも、入力しやすさに優れたfreeeを使ってお客様に自計化を進めていくのが良いと思います。
税理士がAIにとって代わらずに提供できるサービスは、経営の数字を見ながら問題点がどこにあって、それをどう改善するかをアドバイスすることです。今後より一層経営アドバイスをしっかりやっていくうえで、ますますfreeeの価値は高まるのではないでしょうか。
Company Profile
鈴木美帆税理士事務所
神奈川県小田原市城山1-28-25 UDビル102号室
TEL:0465-55-8304
https://suzuki-miho.com/
事業概要
2018年10月開業。相続対策、事業継承、創業支援を強みとする。関連する士業と連携して、お客様の課題にワンストップで対応。介護職経験者の社労士が在籍しており、老後にまつわる相談も受け付けている。