自動ドア関連事業を広く展開する茨城寺岡オートドア株式会社は、親会社である寺岡オートドア株式会社へのfreee導入も視野に入れ、先行してfreeeを導入しました。
導入前には、FAXや紙のタイムカードなどのアナログな業務に課題がありましたが、複数のfreee製品や他社ツールを連携させることで、業務の効率化を成功させてきました。また、ベテラン社員が新入社員にfreeeの使い方を聞くなど、コミュニケーションのきっかけが生まれる副次的な効果も。
freeeの導入をどのように決め、どんなメリットがあったのか、寺岡オートドア株式会社取締役、茨城寺岡オートドア株式会社専務取締役を兼任する吉田健太郎さんにお話を伺いました。
紙のタイムカードでの管理、FAXでのやり取り、「メールを送った」確認に電話……アナログ業務が課題に
――御社の事業内容とご担当者様のプロフィールを教えてください。
吉田健太郎さん(以下、吉田): 当社は、自動ドアの販売、施工、保守、メンテナンスの事業を展開している会社です。東京に本社がある寺岡オートドア株式会社の100%子会社で、茨城県内を中心に50年以上にわたって事業を続けてきました。設置先は、国・県・市区町村などの各官公庁施設をはじめ、金融機関や各種店舗、医療・介護施設、大型ショッピングモール、マンションなど、多岐にわたります。
私は茨城寺岡オートドア株式会社の専務取締役で、親会社である寺岡オートドア株式会社の取締役を兼任し、バックオフィスのDX化を推進しています。freee導入の頃、東京から茨城に拠点を移し、茨城での販売に注力してきました。
――freeeの導入前、バックオフィス業務にはどのような課題がありましたか?
吉田: 全国におよそ100拠点の営業所があるうち、直営の営業所は10拠点しかなく、およそ90拠点は各地域の代理店・販売店の方たちが運営しています。そうした拠点では、紙のタイムカードで勤怠管理をしたり、FAXを使ってやり取りしたり、「メールを送った」と確認の電話をかけたりなど、アナログ的に業務を行っていることが多くありました。転記作業にも無駄が多かったです。歴史の長い会社なので、担当者たちが代々続けてきたやり方を踏襲してきた面があったんです。
freee導入前は「そもそも自分たちの業務についての把握・洗い出しがこんなにもできていないんだ」とあらためて痛感しました。私にもわからないところがあり、「この人に聞かないとわからない」と属人化してしまっている部分が大きく存在していたんです。
あとは、情報システム業務の専任者がいないことも課題ですね。今もまだいないのですが、それでも業務をまわせる仕組みを構築したいと考えていました。
創業100年を目指す上で「今のやり方ではいけない」と危機感
――freee製品を導入することになった経緯や決め手を教えてください。
吉田: 当社グループは現在第60期で、創業100年を目指そうとしているなか「今のやり方ではいけない」と危機感を抱きました。そう考えるきっかけは、法改正とお客様からの要望です。当時、電子帳簿保存法の改正に伴う対応への期限が差し迫っていて、お客様からもデジタル化の要望が高まってきてい ました。
そこで、まずはsalesforceを導入しました。ただ単に基幹システムを置き換えるだけではなくて、業務改革を考えていきたいと考え、誰が担当してもシステムに沿って行えばある程度の業務標準化ができている状態にしたいと思っていたんです。
そして、salesforceと連携させることを前提条件として、会計や人事労務のシステムを検討した結果、salesforceとスムーズに連携できる「freee for salesforce」というサービスが用意されているfreeeを導入することにしました。
さらに、社内で業務をまかなうのではなく、アウトソーシングできることも重視していました。情シスの専任者がいないままDXを進めて業務効率化する上で、「本当に社内の人員だけでバックオフィス業務をまわす必要があるのか」を考えました。
その点、freeeは社労士や税理士との協業がしやすく、選定の決め手になりました。
――まず茨城寺岡オートドア様で導入し、1年後に親会社の寺岡オートドア様で導入されています。どのような流れで各社・各製品の導入が進んだのでしょうか?
吉田: 親会社の寺岡オートドアは100名以上の会社で、拠点が全国に複数あるため、いきなり導入して業務がうまくまわらなくなるリスクが気になりました。一方で、茨城寺岡オートドアは従業員数が約20人の上、拠点がまとまっており、なおかつ私が現場に近いところで見 ながら導入を進められる環境だったため、まずは茨城寺岡オートドアで導入することになりました。
稼働までのスケジュールは、電帳法の期限が迫ってきた2021年7月に、freeeさんとの打ち合わせを始めました。2、3カ月準備をして、同9月に本格稼働、そして10月にはもうfreee人事労務で給与計算をして明細を出していました。freee会計、freee for salesforceも同時期に導入しています。
手伝っていただいている社労士事務所は大変だったと思います。freeeを触ったことのない方が多かったのですが、担当者の方も勉強しながらfreeeを触って、テストをしながら一気に導入を進めてくれました。
茨城寺岡オートドアで、給与計算や年末調整、そしてアウトソーシングする部分なども含めて問題なく仕組み化できたので、これを拡大して、親会社でも導入を進めました。2022年9月から、寺岡オートドアでも同じく3製品を導入しています。
freeeによって、“ベテラン”社員と新人の風通しが良くなる
――導入時に大変だったのはどんな点でしたか?また、どのように乗り越えてきましたか?
吉田: 業務のやり方を大きく変えるときには、不安を抱く人もいますよね。そんなとき、想いも一緒に伝えていかないといけないと感じました。「会社を良くしたい」「良い仕事がしたい」という想いが伝われば、代々続いてきたやり方を踏襲するのではなく、「この作業は本当に必要だったんだっけ?」と疑問を持てるようになります。
そうした気づきをみんなで 共有し、「こういうこともやりたいね」「何年後にはこうなりたいね」と言いながら、「やり方を変えた先に光があるよ」という空気感を作るように意識してきました。
――freeeの導入でどのようなメリットがありましたか?
吉田: まず紙のタイムカードがなくなったのは、現場の社員たちにとって大きなインパクトだったと思います。自動ドアの設置現場で作業をする日でも、以前なら一度本社オフィスに向かってタイムカードを押してから現場に行き、作業後も本社に戻ってタイムカードを押す必要がありました。
それが今では、直行・直帰ができます。現場に行って、始業時と終業時に位置情報を送信するだけで勤怠情報を記録できることが大きな変化でした。
また、有給休暇は全休か半休しか取得できなかったのですが、 freeeを活用して分単位で取得できるようにしました。例えば、お子さんに熱が出てしまったときや習いごとの送り迎えといった場面で、分単位の有給を取得するといった形で活用されています。働き方が柔軟になったと好評です。私自身、世の中にいろんなルールの幅があることを知ることができたし、社労士さんとも連携しながら、どのような働き方がいいか検討できるようになりました。
「二重、三重にやっていた無駄な作業がなくなった」という声も届いています。例えば、6人ほど所属している直営拠点の場合 、事務担当者が1人はいます。その担当者は、電話当番から拠点メンバーの状況把握までさまざまな業務があり、多方面に気を配る必要があるわけです。バックオフィス業務の負担が減ったことで、ほかの業務に時間を割くことができるようになったと聞いています。
それから、freee導入の副次的な効果として、社内の雰囲気が明るくなりました。新入社員や若い社員はデジタルツールを使い慣れているので、スムーズに使える傾向があります。だから、業界内で“レジェンド”と呼ばれるようなベテラン社員が、若い社員に「ちょっとやり方教えて」と聞くんです。
そうした影響で、おもしろいことに社内の空気感が変わりました。後任を育成するためにも、ベテランと新人の風通しが良い状態であることは大切です。freeeがコミュニケーションのきっかけになって、仕事に良い影響を与えてくれていると感じています。
税理士、社労士と同じデータを使ってシームレスな連携が可能に
――複数のfreee製品や他のツールを連携させて利用するメリットを教えてください。
吉田: これまでは紙を介して転記作業をしていて大きな負担になっていたのが、freee製品を連携させることによって、データをデータのまま処理できるようになりました。社外からは見えづらいかもしれませんが、連携を進めれば進めるほど業務を効率化することができ、強みになっていきます。
そして、freeeを通じて、アウトソーシング先の社労士と税理士の両方にデータを共有し ているのですが、社労士が給与計算をしたものを税理士に渡し、税金を計算してもらう流れがシームレスにできています。経費精算はこれまで現金だったのを振り込みに変えました。これは逆に、税理士から社労士にデータが渡されて、振り込みデータに反映されるようになっています。
――さまざまなツールを用いてバックオフィスだけでなく会社全体を変えている印象ですが、今後はどのようなことを考えていますか。展望を教えてください。
吉田: 長期的なスパンで考えると、これからどのような働き方が主流になっていくかわかりません。そんななかで事業を継続していく上では、良い人材がどんどん入ってくれる会社でなければならない。だからこそ、社会の流れに合わせて会社も変化させ、対応できるような体制づくりをずっと続けていきたいです。そのためには、標準化・自動化・仕組み化が必須なので、freeeを今後も活用していきたいですね。
――freee導入を検討している企業の方々に向けてメッセージをお願いします。
吉田: 当社は今回のfreee導入を通して、freeeやsalesforceを前提とした就業規則に作り替えました。freeeは、法律上必要な要件を整備しているため、会社の規則に合わせるのでなく、ツールに合わせていったほうが間違いないと考えたんです。大きな判断にはなりますが、業務の流れとしては楽 になると思います。
それは、採用にも効くと実感しています。スマホ・ネット世代の若い世代を今後も採用していくにあたって、業務の効率性は応募者が気にする点です。今後も継続的に人を採用して業務がまわるようにしていくためには、システムを一新して、規程も時代に合わせて変えていかなければいけないと感じます。
採用だけでなく、電帳法などの法改正の観点で考えても、クラウド会計・人事労務システムは今の時代には最低限必要なものだと思います。社内のバックオフィスを見直す良いタイミングがきているので、変わっていく楽しさを体感してもらえればと思います。
(執筆:遠藤光太 編集:ノオト)