歯科在宅医療サービスとしてグレースデンタルクリニックを開業した医療法人社団 慶実会。2018年には医科在宅医療サービスのグレースホームケアクリニックを開業し、訪問看護ステーションや在宅ケアサービスなど、幅広い医療サービスを展開しています。
スタッフの年齢層が高く、なかなかデジタル移行が進まないのが、現在の医療業界の悩み。アナログ作業による「ムダ」を見直し、作業効率を向上するためにfreee導入を決めたという同社の金子眞子氏に、導入前の課題と、導入後の変化についてお話を伺いました。
- 【課題】
- 多拠点かつ出勤が不定期な従業員とのコミュニケーションが取りづらく、業務効率が低下
- 給与計算業務にアナログ作業が多く、作業工数が膨大になっていた
- 【導入の決め手】
- サービス内容とコスト感のバランス
- 導入支援を受けられるのはfreeeだけだった
- 【導入後の効果】
- アナログ作業がなくなり、給与計算にかかる時間が半減、残業時間も削減
- 新卒採用や異動などの他の業務に時間を有効活用できるようになった
連絡手段の一元化 freee導入がもたらした副産物
ーーfreee導入前に抱えていた課題について教えてください。
人事労務と給与計算に携わっているので、それぞれの業務に分けてお話ししますね。まず人事労務について、当社は事業所が21拠点あり、直接面識のないスタッフ同士でやりとりをする機会が多いんです。医療スタッフにはパソコンを貸与していませんし、メールアドレスも付与していないので、これまでは電話しか連絡手段がありませんでした。
スタッフの出勤日数も、週1から週5まで人によってさまざまで、特に週1出勤の人には連絡が取りにくかったんです。労務関係で連絡したいことがあっても、なかなか連絡が取れず仕事が進まない……といったことが、頻繁に起こっていました。
一方、給与計算では、もともと使っていた会計ソフトが月締めのシステムだったため、次月以降の数字をあらかじめ入力できないことが課題でした。紙に出力してデータを管理していたため、処理に時間がかかることも、大きな課題でしたね。
――各スタッフへの連絡手段は電話がメインとのことですが、各月の勤怠管理や年末調整など、社内全体への連絡はどのようにされていたのでしょうか?
各事業所の事務長にメールで連絡事項を送り、事業所内に掲示してもらっていました。freee導入に伴い、バックオフィスがスタッフ全員のメールアドレスを管理する ようになり、連絡手段がデジタルに移行しました。これによって、情報の抜け漏れがかなり減りました。
――課題が複数あった中で、何を優先して解決していきたいと考えていましたか?
処理時間の短縮が、第一優先でしたね。以前は、タイムカードを出力したり、給与明細を印刷して郵送したりするなどアナログ作業が多く、1カ月丸々、給与計算にかかりきりだったんです。
特別手当などイレギュラー対応があるときは「◯◯事業所の△△さんにいくら支給」など、ノートに記録をしていました。freee導入後は、そのノートを開くことがなくなり、いまではノートをどこにしまったかも覚えていません(笑)。
――freee導入前は、どのようなシステムを使用されていたのでしょうか?
勤怠管理に関しては、タイムカードに打刻する形式のものを使っていました。記録を後から修正したり、有給の申請をしたりするときは手で記入してもらい、月末になると全スタッフのタイムカードを印刷して、エクセルに手入力していたんです。
ただ、そのやり方だと、どうしてもミスが発生しやすいですよね。そのため、自動計算できるシステムに替え、その後、クラウドシステムへの移行を決めました。
――さまざまなクラウドシステムを比較検討したと思いますが、選択する際は何を重視しましたか?
サービス内容とコストのバランスですね。もっと簡単にいえば「作業が楽になりそうか」と「会社がお金を払ってくれそうか」の掛け合わせ です。いくらクオリティが高いソフトでも、単価が高ければ、社員数が増えるに従って金額が増額していきますから。
――導入の際、社内で何か稟議は発生しましたか?
導入コストを提示した際に、経営サイドから「ちょっと高いね」と言われました。ただし、freee導入によって作業効率が向上することは目に見えていたので、各クラウドシステムの比較表を作成し、コストとサービスを可視化して、承認していただきましたね。
freee導入で作業時間が半減! 新しい業務に取り組みやすくなった
人事労務システムマップ
――freee導入の決め手を教えてください。
検討段階でサービスについてしっかり説明していただき、営業時の印象が最も良かったのがfreeeでした。それに加えて、導入支援も受けられることが決め手になりましたね。
他社でも、Zoomを通してサービスの説明していただいたところはありましたが、導入支援を受けられるのはfreeeだけでした。初回の打ち合わせの際に、経理の担当者も同席し、freee会計も併せて導入することになりました。
――導入過程で苦労したことはありましたか?
最初のうちは、スタッフから「ログ インできない」といった問い合わせがたくさん来ました。アカウントを自分で新規作成してしまうスタッフもいましたね。また、「以前使用していたシステムと混同する」といった声も上がっていました。freee導入から3カ月ほど経って、ようやくシステム移行について理解・周知された印象です。
――問い合わせには、どのように対応したのでしょうか?
各事業所の事務スタッフにマニュアルを渡すことで、簡単な問い合わせはそれぞれの事業所で対応してもらいました。作業画面のスクリーンショットをパワーポイントに貼っただけの簡単なマニュアルでしたが、freeeは操作がわかりやすいため、すぐに理解してもらえましたね。
――freeeを導入されて、作業効率は向上しましたか?
以前は、各月の給与計算を終えるのに、20日強かかっていました。先ほども話したとおり、タイムカードの印刷や、エクセルへの入力など、アナログ作業に時間を取られていたんです。freee導入後は、そういった作業をする必要がなくなり、作業時間が半減しました。他の業務をこなしながら、10日程度で終わるようになりました。
――作業時間が半減したことで、取り組めるようになったことはありますか?
新卒採用や異動など、別領域の業務に時間を使えるようになりました。また、freeeの導入によって、早く帰宅できるようになり、プライベートの時間も増えましたね。
――コロナ禍において、freeeを導入して良かったと感じた点はありますか?
当社では、緊急事態宣言の際に、スタッフの出勤日数を減らしました。休業手当は6割でしたが、時給・日給・月給など給与体系の異なるスタッフが混在しているため、もしfreeeを導入していなければ、計算がかなり煩雑になっていたと思います。
――未来の日付でも入力できる点が、freeeの特徴の一つですが、そういった機能は役に立ちましたか?
緊急事態宣言の解除に伴い、支給額を元に戻しましたが、「ここから給与を10割に戻す」と設定しておくだけで良かったので、給与計算が滞りなく行えました。非常に助かりましたね。
アナログからデジタルへ 医療機関のバックオフィスが変わる時代
ーー先ほど、「メールアドレスを一元管理していなかった」「アナログ作業が多かった」といったお話がありましたが、医療業界ではデジタル移行がまだ進んでいないのでしょうか?
総合病院や大学病院などは別として、当社のような小規模なクリニックでは、デジタルへの移行が遅れていると思います。当社スタッフのコア層は30〜40代ですが、50代以上のスタッフも多く、デジタルでのやりとりは敬遠される傾向にありますね。
ただ、これからは、医療業界もデジタルにシフトしていく時代だと考えています。クラウドなら、毎月の勤怠管理や年末調整が楽になりますし、マイページから源泉徴収票の出力をすることもできます。事務関係の問い合わせも減りますので、その分、事務スタッフが他の業務に注力できるようになります。
一方、給与計算では、もともと使っていた会計ソフトが月締めのシステムだったため、次月以降の数字をあらかじめ入力できないことが課題でした。紙に出力してデータを管理していたため、処理に時間がかかることも、大きな課題でしたね。
――freeeの導入を検討している方に向けて、アドバイスをお願いします。
当社には、現在、約250人のスタッフがいます。スタッフの人数が多くなるほど、システムの移行作業が煩雑になりますので、できれば企業スケールが小さいときにfreeeを導入するのがおすすめです。特に医療機関の場合は、様々な勤務形態・給与体系のスタッフが入り交じりやすいため、小規模のうちに導入したほうがいいとアドバイスしたいですね。
――最後に、バックオフィスをより良くするための展望をお聞かせください。
当社をはじめ、医療系企業は、入社・退社のサイクルが早い傾向にあります。医療スタッフの場合は体力などの問題が大きいと思いますが、事務職の場合は作業の煩雑さがその一因だと考えています。私は、freeeを導入したことで作業効率が上がり、時間に余裕ができました。今後は若手スタッフのモチベーション管理など、マネジメントに時間を割いていきたいですね。