「生体認証で生活をより便利に安全に」を企業理念に、生体認証・行動解析・体型解析の3事業を展開している。 とりわけ生体認証関連では、総務省主催の先進的情報通信技術実用化支援事業採択企業、経済産業省主催のIoT Lab Selection 第1回グランプリ企業などに採択。Society 5.0の実現に欠かすことのできないIoT分野を牽引しています。
2013年の設立以降、会社の急成長にともないサービス数とグループ会社の増加、それを支えるバックオフィスのコストが爆 発的に増加。状況を変えるために選んだのが、API連携による柔軟なカスタマイズが可能なfreeeでした。バックオフィスのコスト削減のため、どのようにfreeeを使いこなしているのか。freeeの導入とKintoneとの連携による効果、IoT分野の最前線にいる生体認証関連企業が目指すバックオフィスの理想像について伺いました。
御社の企業理念やサービス内容などを教えてください
認証の形を変えることで、新たな消費行動を生み出す
弊社は「認証の形を変えることで、新しい消費行動を生み出す」を理念に、生体情報を活用した本人認証サービスを主軸に事業展開しています。これまでの本人認証の場合、例えば銀行口座を開設する際は、居住地へキャッシュカードを配送、キャッシュカードを有していることをもって本人であると認証してきました。これは住所を基軸とした本人認証です。しかしながらこの認証方法では、郵送費や配送に関わる人件費、キャッシュカードが届くまでの時間等のコストがかかるだけでなく、あくまで住所を基軸としているため、マネーロンダリングに利用される危険性もあります。
弊社ではこれらの社会課題を解決するため、指紋、顔といっ た生体情報による本人認証が当たり前の世界を実現すべく事業を展開しています。
生体認証・行動解析・体型解析が事業の柱
認証の仕組みを変えることで新たな消費行動を生み出すべく、主に生体認証・行動解析・体型解析の3分野で事業を展開しています。
生体認証事業では、顔認証による銀行口座の開設や指紋認証による決済等、生体認証技術を利用した事業を展開。高セキュリティとユーザビリティを両立しています。
行動解析事業では、不動産の物件価値の向上や生産性向上に寄与するサービスを提供。体型解析事業では、3Dスキャニングサービスと人体の体形(型)・足型データに特化したAIエンジンでアパレル・フィットネス産業のデジタライズを支援しています。
生産性の高いバックオフィス体制を構築するために
必要だと考えていることを教えてください
筋肉質な管理体制を構築する
激しい外部環境の変化に応じて、経営活動も速い変化と決断が求められます。 弊社は、5社のグループ企業を有しており企業体制が複雑です。加えてベンチャー企業として日々PDCAを高速に回しており、柔軟なスケーリングが生じるため、これらに耐えうる管理体制と生産性の高い組織体制を構築する必要があります。私はこれを筋肉質な管理体制構築と呼んでいます。
筋肉質な管理体制の構築には、業務の適材適所化と設計思考の組織が重要です。業務の適材適所化とは、内製化すべきものと外注化すべきものを振り分けて、リソース配分を最適化することです。これにより高い生産性と柔軟でスケーラブルな組織体制の構築を目指しています。
設計思考は仕事の速さや効率性ではなく、変化や例外対応のために積極的に現場が設計・開発していく考え方です。設計思考の組織を目指すことで、一人一人のメンバーがただ単に与えられた業務をこなすのではなく、自身に与えられた業務内容を深く理解し、どのようにしたら最適化を図れるか、常に意識してもらえるようになります。
この業務の適材適所化と設計思考の組織により、必要最小限の人数で筋肉質な管理体制の構築が可能となると考えています。
生体認証関連企業の目指す筋肉質な管理体制は、柔軟かつ迅速にPDCAを回すことができるアジャイル的な管理体制だ
freeeを導入したきっかけについて教えてください
速い変化とバックオフィスの複雑化
ベンチャー企業として高速にPDCAを回す以上、バックオフィスの複雑化は避けられません。とりわけ部門別会計に複雑化の波が押し寄せます。 例えば、経理に届く請求書がどの部門のどの費用として計上すべきかわからないというシーンは当然出てきます。事業スピードの関係上、1か月前には正しかった判断が、現在も正しいとは限りません。部門別会計には、絶対的な正解がないのです。
当事者のそのタイミングでの判断を最適解として考えていきます。しかしそれを経理の人間が全て把握することは困難です。ここには膨大なコミュニケーションコストをかけざるをえません。さらには経理側で膨大な時間をかけて判断をした部門別会計が、結局誤っていたということも生じます。当社ではこれらの課題を解決すべく、新たなクラウド会計ソフトの導入を検討することになりました。
freeeの導入によって現場設計・現場開発が可能に
これまで利用していたクラウド会計ソフトは、手入力による仕訳の計上、発生と消込の紐づきがないなど、管理の難しさに課題がありました。さらに、内部統制の厳格化に耐えうるソフトという観点で、比較検討した結果freeeを導入することにしました。
freeeは、部門別管理会計が利用でき、タグも柔軟に利用できます。バックオフィスの自動化を進めるうえで、クラウドERP、KintoneなどとのAPI連携・APIによるカスタマイズが可能な点に大きな期待を持ちました。
先ほど申し上げた設計思考の組織を実現するためには、現場での設計・開発が欠かせません。会計やエンジニアリングの専門知識なしに、理想の組織を作るには、ノーコーディングでの実装が必要になります。ですからfreeeのみならずKintoneのようなノーコーディングで連携・開発ができるSaaSによって現場での開発・設計が可能になり、設計思考の組織が実現しました。
設計思考の組織という考えに至るまでの変遷を「働き方の変化」とともに図示。ユニークな図が印象的だ
freeeのご利用状況について教えてください
バックオフィスリソースを大幅に削減
freeeを導入したことで、やはり工数削減効果が大きいです。freee以外の施策も含みますがバックオフィスリソースを1/3程度削減することができました。具体的には、コーポレートカードの入力・チェック作業(連携・学習)を月間約10時間程度削減。重要性の低いコーポレートカード関連の費用に関しては現金主義会計から発生主義会計にでき、カットオフエラーの検証も年間20時間程度削減。銀行口座との連携・学習・チェックも月間約20時間程度削減することができました。
またAPIによるGET・POSTによって、定型的な作業の自動化が実現。ここは、GAS、JavaScriptによるコーディングで実装しています。取引の概念に沿って発生と消込が紐づくため、freeeには自動化しやすいという特徴があると思っています。
システム間連携によって会計業務の効率化と高度な分析が可能に
システム間連携(3rd partyシステム・クレジットカード・銀行口座)によって業務が効率化されました。3rd partyシステムとしては、主にkintone、Slack、スプレッドシートとの連携。タグ付けによって、管理会計の高度な分析、他にも連結修正仕訳・分析の効率化・高度化により、開示に必要な定型情報等を一括で抽出できるようになりました。
freeeは事象をタグ付けし、RDB的に使用することで、より実態に近い会計を出せます。kintoneと組み合わせることで、BI的な使い方も可能になりました。例えば、スプレットシートにひたすらデータだけ抽出、それをピポットテーブルにすることで見たい粒度と観点でデータを見れるようになりました。
これは個人の感覚ですが、会計はあくまでも事象があって、それを数値化するもの。事象自体はもちろん無限にあります。この無限にある事象を適切な粒度でデータ化しない限りレポートに落とし込むなどの表現ができません。いったん会計の枠組みから離れて、目の前の事象を数値として上手く表現するにはどうすべきなのか。あるいは現場観点でどのようにすれば上手に処理ができるのか。このような考え方と、freeeは親和性が高いのではないでしょうか。
freeeとkintoneの連携効果について教えてください
freeeとkintoneの連携によって、コミュニケーションコストの削減・効率化(ワンインプット化)・レポーティングの正確性が向上
これまで部門の振り分けでは、経理側がExcelの稟議文書を使用していました。一方で未入力の箇所があったり、入力されていても部門の振り間違えがあったりと課題も山積み。その都度確認作業が必要になるため、膨大なコミュニケーションコストが発生していました。それがfreeeとkintoneの連携によって、入力業務のワンインプット化 、チェック作業の削減に成功。月間10時間程度の工数削減に繋がりました。
また現在は、取引先調査・登録の時間も削減できています。与信・反社のチェックは、kintone上での取引先調査が完了しないと申請まで進めないようバリデーションを入れたり。freee側への連携はシステム的な整理によって入力時間も減りましたし、システム間の整合性を確認する必要性がなくなりました。こちらは月間200分程度の工数削減です。まだ現在は半自動化の段階ですが、今後は完全自動化を目指しています。
タグを付すことで、業務要件に合わせた、管理会計業務の高度化も可能になりました。例えば、上流で管理会計の部門タグをつけ、流れてくるとします。それが間違ってないであろうとすると、それを正としてスプレッドシートでボタンを押下。すると仕訳帳とBS・PLが全部流れるため、それらが期間別にピポットで出力されます。これらのデータはアクセス権限を絞り、必要な人に対して適切な情報を提出。ピポットテーブルですからドリルダウンすることでデータを確認したい人が好きな粒度で見ることができます。
経営会議、事業責任者に対しても随時提出できるため、とても汎用的に使用できています。アクセス権限を制御した上で、必要な情報がkintoneに一元管理されるため、経理・人事とユーザー部門との間で確認工数が削減されました。これにより、管理会計用のレポート作成・チェック工数が、四半期毎に40時間程度削減できました。
事業責任者への会計に関する報告・質問対応工数の削減も実現できました。kintone上で、全て事前の承認とプロセスがリアルタイムに反 映されるため、質問対応工数が削減されました。弊社の場合、kintone側にプロダクトマスターがあります。これは一定の承認を得たうえでマスターになっているので、マスターはそのときにおける最適解です。申請者は、このプロダクトマスターに沿って入力すれば問題ありません。
例えば費用を申請する際、申請者には現段階のプロダクトが何かということを申請段階で入力してもらいます。これにより経理側が新たに精査することなく、入力されているものを正として判断をすることが可能になりました。今まではこの部分のコミュニケーションコストが膨大で、経理の人間が多くの時間をかけていました。今の例でいうとプロダクトマスターが整備されて、申請内容が間違っていなければその申請が承認されてアウトプットとして出てくる。ベルトコンベアーのような感覚で、レポーティングまで可能になりました。
これらの通りfreeeとkintoneの連携によって、コミュニケーションコストの削減・効率化(ワンインプット化)・レポーティングの正確性が向上。決してまだ完全ではありませんが、それを志向する形でPDCAを回している形です。
今後の展望について教えてください
さらに筋肉質な管理体制の構築を推し進める
設計思考の意識を持つには、全体俯瞰力が重要です。バックオフィス業務で全体俯瞰力を養うのはチェックの意識ですが、入力作業に忙殺されるとどうしても弱くなってしまいます。freee導入、kintoneとの連携により、本来注力すべき現場での設計・現場開発に時間を割けるようになりました。現場から積極的な改善提案が日々あがってきます。
最近では、freeeでタグ付けをうまく利用することで、源泉税額の算出・納付書作成を仕組化できる様にしませんかという提案がありました。バックオフィスを担うメンバー全員が全体俯瞰力を持って、現場設計を行い、アジャイル的に開発していく。事業の加速を支える筋肉質な管理体制の構築をさらに推し進めていきたいですね。