株式会社ディ・エス物流は、運送を中心とした物流業全般において多くの実績をもつ企業です。食品の配送を得意とし、関東および中部地方に13の営業所をもっています。
同社では、2024年1月から本格的に始動する、改正電子帳簿保存法(以下、電帳法)への対応に迫られていました。また、請求書の処理をはじめとする債権・債務管理や社内稟議申請など、多くの業務フローが紙ベースで行 われているため、その一つひとつに時間がかかり、経理部門では残業が多くなっているという悩みも抱えていました。
こうした課題を解決するために、2023年にfreee経理を導入。その狙いや導入後の運用状況などについて、経理部課長の坂倉敏之さんに話を聞きました。
電帳法の改正をきっかけにシステムを導入し、アナログ対応が多い業務の効率化を進めたかった
ーー御社の事業概要と、坂倉さんの業務について教えてください。
坂倉敏之さん(以下、坂倉) 当社は2004年に設立され、食品を中心とした運送業を担っている会社です。最近では運送だけでなく、構内作業も含めた物流全般にも携わるようになりました。
飲食店の「庄や」などを運営する、大庄グループの一社であり、グループ各社の運送を行うほか、外部企業の運送・物流も承っています。
私は経理部の課長として、4人のメンバーとともに勤務しています。前任から引き継ぐ形で経理部に異動したのは1年ほど前です。それまでは、営業所で現場の経験を長く積んでいました。
ーーfreee経理を導入することになった背景をお聞かせいただけますか。
坂倉 電子帳簿保存法の改正により、帳簿書類の電子データ保存の義務化が2024年1月に始まるため、当社でも対応が必要になっていたことが検討のきっかけでした。
そして、私が経理部に異動して最初に感じたのが、メンバーの残業が多く、忙しそうなことでした。ただ、仕 事の内容には定型的な作業も多かったため、システムを入れて改善できれば、業務が効率化され、社内の人員配置ももっと最適にできるだろうと思ったのです。
当社に限らず物流業界はアナログな慣習が多く残っており、書類は紙媒体が中心で、連絡もメールより電話やFAXを好みます。これは長年かけて培われた文化なので、そう簡単には変えられないものだと感じています。当社も例に漏れず、大半の業務は紙ベースで行われていました。
請求書の処理や経費精算などお金周りの業務は、経理部門に提出された紙の書類をもとに、メンバーが一件ずつ手作業で会計システムに入力していたのです。ちなみに、会計システムは、グループ会社共通のものを使っています。
社内稟議も紙の稟議書に上長の捺印をもらって提出するフローだったため、稟議を上げてから決裁されるまでに、1週間以上かかってしまうことも珍しくありませんでした。
そこで、できるところから部分的にでもシステム化を検討し始めたのです。私は前職でシステム関連の仕事をしていたため、経理部でデジタル対応を進めてほしいという会社からの期待もあったのではないかと思います。
ーー導入を検討されるにあたって、他社製品とも比較されたと思います。freee経理を選んだ決め手を教えていただけますか。
坂倉 まず、当社は関東・中部地方に13の営業所があるため、物理的に離れた各拠点の業務をシステム化していくことを考えると、クラウドサービスであることは必須だろうと考えていました。
その中でfreeeに興味を持った理由は、「AI OCR」の機能があることでした。紙ベースの帳票が多い当社にとっては活用できる場面が多いと考えたのです。帳票を読み込めば、そのまま会計伝票を作成できる点に魅力を感じました。また、freeeは機能を絞って導入できたり、後から機能追加できる柔軟性があるのも良いと思いました。
他社製品も検討したのですが、機能同士が連携していなかったり、コスト面で折り合いがつかなかったりしたため、機能面と費用面からfreeeが最適だと判断しました。
まずは請求書処理とワークフローからfreeeを活用
ーーfreee経理を導入した現在の状況についてお聞かせください。
坂倉 数カ月前に導入し、freeeのカスタマーサポートや顧問税理士の方にも相談しながら、現場での運用に向けて準備を進めています。
最初に進めているのは、請求書の処理と、ワークフローを活用した社内稟議申請です。freee経理で作成したデータを既存の会計システムに取り込むことは親会社にも了承を得られたので、あとは各現場でしっかり運用できることを目指したいと思います。
ーーfreeeのシステムを操作してみて感じることはありますか。
坂倉 直感的に操作できるインターフェースだと感じます。
当社では、社歴が長い人ほどアナログで業務を行うことが習慣になっているため、パソコン操作に慣れていないケースが多くあります。しかしながら、長く勤めている上層部の方々に使いこなしてもらうことは、freeeを全社に浸透させるためには避けて通れません。こうした当社の状況を考えると、使いやすい画面であることは大切なポイントですね。
ーー現場の皆さまがfreee経理を使っていただくのは、いつ頃の想定でしょうか。
坂倉 年末の繁忙期を避けることと、2024年1月の電子データ保存の義務化には間に合わせたいことを考え、2023年11月頃からを予定しています。
経営陣と営業所長にはfreee経理の導入について説明し、そのメリットも含めて納得してもらっています。11月以降、使い始めた直後は多少の戸惑いや不明点が出てくると思いますが、まずやってみないことには何も変わりません。運用フローはほぼできあがったので、この先は現場への落とし込みに注力したいと思います。
一気にやるのではなく、少しずつ業務のシステム化を進める
ーー今後の展望をお聞かせください。
坂倉 それぞれの現場が請求書の処理やワークフローの運用に慣れてきたら、次に経費精算もfreee経理を活用してシステム化したいと考えています。経費精算の作業も、今は各自が申請書類を作って印刷し、領収書を貼って紙で提出してもらっている状況です。経理部ではその書類をもとに、会計システムにデータを手入力しています。この手間を省いていきたいですね。
そして、freeeは経理に限らず人事労務などもありますので、徐々にfreeeに統合していけるといいのではないかと考えています。
ーー御社と 同じように、業界の慣習などが壁になり、業務のデジタル化が進まないことに悩んでいる企業は少なくないと思います。こうした課題感をもつ企業様へ、ぜひアドバイスをお願いいたします。
坂倉 業界全体でアナログから脱却するのは、一社だけでできることではありません。取引先の運用ルールに従わざるを得ないこともありますから、紙ベースでの業務が早急になくなることは起こりにくいと思います。
そう考えると、各社で取り組めることは、できるところから徐々に効率化していくことではないでしょうか。紙ベースの業務が中心で、デジタルに慣れていない社員も多い会社では、一気にシステム化するのではなく少しずつ変えていくのが得策だと思います。社員にとっては「いつの間にか」業務でシステムを使うようになっていた、という状態を目指すのが大切だと感じています。
(執筆:御代貴子 編集:ノオト)