顧問先の経営力を引き上げる「freeeレクチャー型顧問サービス」開発ストーリー

柏木大吾税理士事務所 代表 柏木 大吾 様

課題
顧問先のコンサルに注力したい

記帳代行をはじめとする作業案件をメインとする収益体系から脱却しようと、新サービスの開発を模索している会計事務所の経営者は多いのではないでしょうか。


そんな方々にとって、柏木大吾税理士事務所が提供する「freeeレクチャー型顧問サービス」の開発ストーリーは参考になるかもしれません。代表の柏木大吾様に、開発経緯や具体的なサービス内容、そして顧問先に起きた変化について伺いました。

従来の会計事務所業務のあり方を変えて、本当に価値あるサービスを提供したい

ーー現在の事務所を開業するまでのご経歴を教えてください。

柏木 独立する前は、大原簿記専門学校の専任講師を務めたり、税理士法人と都内の会計事務所に勤務したりしていました。前の事務所には7年ほど勤めていて、クラウド会計の導入推進担当としてfreeeの導入を推進した時期もありました。


ーー前職の頃からfreeeを知ってくださっていたのですね。

柏木 永井孝尚 著「100円のコーラを1000円で売る方法」という書籍をきっかけにfreeeに魅力を感じ、導入を進めました。 ただ、前職では1種類の会計ソフトで業務を進めていたので、周囲からはわざわざ新しいソフトを併用することに対する嫌悪感を持たれながらの導入でした。職員にも顧問先にもfreeeを導入する価値を十分に伝えられず……。当時の事務所では、freeeの導入件数は思うように伸びませんでした。


ーーとても悔しいご経験だったと思います。

柏木 そうですね。以前から抱いていた会計事務所の業務に対する違和感が強くなった出来事の一つです。


経理資料を預かって、記帳して、試算表を納品するだけの作業案件をメインでずっと続けていたら、低価格化や顧客満足度の低下といった負の循環から抜けられない。先を見据えた会計事務所業務のあり方を考えると、「これからの会計事務所は社長の想いに寄り添い、最適な意思決定をサポートする存在になるべきだ」と考えるようになりました。


ーーこのとき感じた違和感が、独立開業を考えるきっかけになったのでしょうか?

柏木 そうとも言えますね。独立開業するからには、新しい社会をリードする存在になろうと思っていました。私が今まで会計事務所業務に対して感じていた違和感を払拭し、お客様にとって本当に価値のあるサービスを創造しようと決めていました。


ーー現在の事務所では、freeeをメインの会計ソフトにしています。前職での厳しい経験があったにも関わらず、なぜfreeeを選ばれたのでしょうか?

柏木 経営に寄り添うためであれば特段システムを限定する必要はないと考えていたため、はじめは「freee専門税理士」と打ち出すことに抵抗もありました。
ただ、社長と向き合う時間を創出するためには、入力作業を要する今までのツールを使い続けるより、クラウド会計を活用した方が良いことは明らかです。そのうえで、「スモールビジネスを、世界の主役に。」というfreeeさんのミッションと自分の目指す方向性が一致していたことが一番の理由でした。


実際にfreeeを使うと、他社のツールでは自動登録といっても推測までしかできないのに対して、一気に登録まで持っていけて合理的。機能の違い一つをとっても、いかにfreeeがお客様を見て構築されたツールであるかが伝わり、センスの良さを感じました。


社長が自らfreeeの操作を習得できると、経営力も向上する

ーー事務所の特色を教えてください。

柏木 月次決算、自計化支援、月次面談といった一般的な事業内容に加えて、「freeeレクチャー型顧問サービス」を提供しています。


ーーfreeeレクチャー型顧問サービスは、どのような形態で提供しているのでしょうか?

柏木 基本的には、月次面談の中にfreeeの操作レクチャーを含むかたちで提供しています。最初の3〜4ヶ月間のうちに、freeeに合わせた業務フローに改善するとともに、顧問先に合わせて操作手順をパターン化して、これまで混沌としていた業務を整理していきます。


ーーなぜfreeeレクチャー型顧問サービスを考案されたのでしょうか?

柏木 まず、プロダクトアウト的な観点で言うと「記帳屋からの脱却」。これまで税理士が対応していた記帳代行は、今後AIやITに取って代わられると想定しているので、記帳代行をキャッシュポイントに置かない事業体制にしようと考えました。


もう一つの理由は、お客様ご自身に経理を覚えていただきたいから。freeeの操作が分かれば自ずと決算書を読めるようになるんですよ。お客様が自ら記帳することによってお金の流れを覚え、決算書を読めるようになり、社長ご自身の経営力が上がる−−こうした変化が実際にいくつものお客様で見受けられました。


freeeの操作を教わるだけで、同時に決算書を読めるようになるようなサービスって、今までの会計事務所にはないサービスではないかと自負しています。


ーー逆に、記帳代行を希望する顧問先はいらっしゃるのでしょうか。

柏木 現在は記帳代行業務は受けておりません。そこは割り切っています。初回のご面談の段階でその旨をお伝えしておりますので記帳代行をご希望されることはほとんどありません。


ーーそう割り切ると、顧問先の獲得が難しくなりそうですが……

柏木 新規の顧問先の場合、最初の3〜4ヶ月月間はどうして工数が増えやすいので、あまり一気に顧問先を増やせない実情もあります。一人でレクチャー型顧問サービスを運営しているので、確かに苦戦していますね。でも、私がfreee好きであることを知る同業者や協業者さんなどから紹介していただいているおかげで、少しずつ案件を増やせている状況です。


ーー新たに顧問契約を結ぶお客様には、どんな傾向がありますか?

柏木 ご自分でfreee会計を使って経理をされている方が初めて決算を締める段階になって会計処理に悩まれてしまい、決算間際にご相談に来られるお客様は、一定数いらっしゃいますね。意外に思われるかもしれませんが、こういうお客様こそ、短期間でがっちりと信頼関係を築きやすいんです。


ーー確かに、意外な傾向ですね。

柏木 駆け込みで私の元を訪れるお客様は、freeeをうまく使いこなせずに苦戦している方々です。「freee会計を導入すれば経理業務の手間がなくなる」と思い込んで安易に使っている方も見受けられるのですが、それは違うんですよ。実際には、「freee会計を使いこなせれば経理業務の手間がなくなる」わけです。


ですから、お客様の目の前で、実際にどう使いこなせばよいのかを実演するんです。私が画面をチェックして一つひとつ問題点を見つけ出し、具体的な解決方法を操作してお見せすると、自社の経理をどんどん修復してくれる税理士として私のことを一気に信頼してくださいます。


月1回の面談で、freee操作習得から売上アップ戦略相談まで実施

ーーレクチャーを受ける社長の反応はいかがでしょうか?

柏木 まず、これまでの経理業務がいかに煩雑であったかを体感します。例えば、月次の口座利用料を支払ってまで複数の銀行口座を所有する意味があまりないと気づいたり、購入ルートをAmazonに切り替えるだけで入力操作が格段に楽になるとか……


ーー自分ごととして操作方法を習得なさっている様子が伝わります。

柏木 そうですね。煩わしさをなくす方法が分かると、多少手間がかかってもfreeeに合わせた業務フローに改善してくださいます。


お打ち合わせイメージ
お打ち合わせイメージ


ーーレクチャーがある程度進んだ後の面談は、どんな流れで進めていますか?

柏木 全体の面談時間は90分程度です。最初の30分間で、社長と一緒にfreeeの画面を確認しながら、前月の試算表を締めます。後半の60分間では、前月の試算表と顧問先別に作成している損益計画表を見ながら、将来の売上予測の話題を中心に議論します。


ーー後半60分間の議論について、もう少し詳しく教えてください。

柏木 議論を通して、社長の頭の中を可視化することを心がけています。そうした背景もあって、freeeで出力した試算表の数値と、翌月から決算月までの予算値を合算して、その場で今期の最終着地を把握できるExcelテンプレートを用いるなどの工夫をしています。


主な話題は売上について。取引先ごとの売上推移だけでなく、売上の内容や今後の拡販見込み、行動計画なども議論していき、必要があれば予算値もその場で更新します。


月次の面談を通して、今期の最終着地を確認し、そこから逆算して3ヶ月後や1ヶ月後の目標や計画を整理し、それに基づいて実際のアクションに移していただきたい。早くアクションに移すためにも、顧問先には当月末までに記帳を済ませていただき、翌月の早いタイミングで面談日程を組んでいただくようにしています。


ーーfreeeレクチャー型顧問サービスの手応えはいかがでしょうか?

柏木 社長に会計数値への関心を持っていただくことから始まり、レクチャーを通して会計リテラシーを高めていただけている手応えはあります。


面談を重ねるにつれて社長との距離が近くなり、事業の情報をたくさん話してくださるようになりました。最近では、相続や事業承継など顧問サービス以外のご相談を受けることが多くなってきています。今後はこのようなご相談事項を積極的に深堀していく流れを構築していきたいですね。


今後の展開

ーー柏木さんのように脱・記帳代行に向けて動いている方がいる一方で、今なお記帳代行を主サービスとする事務所もあります。

柏木 申告書や決算書は自動作成されるようになる時代は、そう遠くない時期に来るであろうと想定しています。そうなると、今は記帳代行などの作業案件でも売上を確保できている事務所でも、いずれ案件数自体が少なくなり、低価格化せざるを得なくなって苦しい経営状況に追い込まれるのではないでしょうか。


したがって、会計事務所としては、作業案件が収益の柱とならなくなることを想定して、将来の売上をどう作っていくかを考えるべきだと思います。私の場合、将来の売上をつくるサービスの一つが「freeeレクチャー型顧問サービス」になるわけですが、他にも新しいサービスを考案する必要があると考えています。


ーー新しいサービスの案も、ぜひ伺いたいです。

柏木 当社は税務顧問業以外に講師業にも力を入れているので、日々の税務顧問業務の中で考案したノウハウをオンラインセミナーを通じて発信していこうと検討している段階です。


リモートワークが定着した今の時代では、これまで対面必須と思われていた面談やイベントなどもオンラインに移行するでしょう。場所の制約がなくなり、より広範囲のお客様へのサービス提供が可能になりました。


セミナーのテーマは、現時点ではまだ検討中です。顧問先向けだけでなく、広く一般の方々にリーチする情報提供もしていきたいです。




Company Profile
柏木大吾税理士事務所
東京都豊島区東池袋4-27-5 ライオンズプラザ池袋204号室
TEL:03-4500-7838 https://www.office-kashiwagi.com/


事業概要
2016年7月設立。経営者のディスカッションパートナーとして、主に融資サポートや創業サポート、事業計画書作成サポートに注力する。聴く力とわかりやすい説明を基にしたコンシェルジュ的税理士としてクライアントからの信頼も厚い。

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