IdPとは?SAML認証における役割やSPとの違い、メリットなどを解説


最終更新日:2025年1月22日

IdPとは?SAML認証における役割やSPとの違い、メリットなどを解説

企業内でクラウドサービスやSaaSの利用が増加した動きを受け、近年、アカウント管理や認証の効率化が課題となっています。複数のサービスを利用する際に煩雑になりやすいログイン作業やセキュリティリスクの対策が求められるなか、注目されているのがIdP(Identity Provider)です。

本記事では、IdPの基本的な仕組みやSAML認証での役割、IdPを活用して実現できることについて詳しく解説します。

目次

IdPとは

IdP(アイディーピー)とは、Identity Provider(アイデンティティプロバイダー)の略称で、ユーザー認証と認証情報の提供を担うシステムやサービスを指します。SAML認証の仕組みにおいて中心的な役割を果たし、認証情報を一元管理することで、シングルサインオン(SSO)やセキュリティ強化を実現しています。

IdPは、ユーザー認証やシングルサインオンの機能を備えたシステム、IDaaS(Identity as a Service)に欠かせない存在です。企業の効率化とセキュリティ向上を支える重要な仕組みとして、以下のサービスが代表例に挙げられます。

IdPの代表的なサービス

  • Okta
  • PingFederate
  • Azure AD
  • Auth0

IdPは認証情報を提供する役割を通じて、企業のITインフラを安全かつ効率的に運用する基盤を築きます。

SAML認証におけるIdPの役割

SAML認証とは、ユーザーが一度認証を行えば複数のシステムを利用できるシングルサインオンを実現する仕組みです。SAML認証を採用すれば、ユーザーはログインのたびにIDやパスワードを入力する必要がなくなり利便性が大きく向上すると同時に、セキュリティ面でもメリットを得られます。

この認証は、IdP(Identity Provider)とSP(Service Provider)が連携することで成り立っています。ユーザーがSPを利用する際、まずIdPがユーザーを認証し、その結果をSPに提供します。SPがこの情報をもとにユーザーの認証を確定し、サービスを利用可能にする仕組みです。

処理フロー

ユーザーがSPにログインするまでには、2つの処理フローが存在します。IdPを起点とする場合は「IdP initiated」、SPを起点とする場合は「SP initiated」と呼ばれ、それぞれが柔軟な運用を支えています。

SAML認証については以下の記事でも詳しく解説しているため、参考にしてください。

関連記事SAMLとは?仕組みの概要や目的、認証を取得するメリットを解説

IdPとSPの違い

IdPとSPは、SAML認証のプロセスにおいて相互補助的な役割を果たします。SPは、ユーザーが実際にログインして利用するアプリケーションを指します。以下が代表的なアプリケーションです。

SPの代表的なアプリケーション

  • Google Workspace
  • Microsoft 365
  • Salesforce
  • Dropbox

IdPが認証情報を提供する側であるのに対し、SPはその認証情報を受け取り、ユーザーがログインしてサービスを利用できるようにする側です。このように、認証を提供する役割と、それを受け取って処理する側で明確に役割が分担されています。

IdPが注目される背景

IdPが近年注目されている背景には、主に以下の3つの理由が存在します。

IdPが注目される3つの背景

  • アプリケーション活用の推進
  • テレワークの普及
  • コンプライアンス意識の向上

それぞれの背景について詳しく解説します。

アプリケーション活用の推進

近年、企業では業務効率を高めるために、さまざまなアプリケーションやクラウドサービスを活用する動きが一般化しています。これに伴いアカウントの管理が煩雑化し、社員が複数のシステムにログインするたびに発生するIDやパスワードを入力する手間が課題となりました。

IdPは、こうした状況を改善するために活用されています。シングルサインオンの機能を提供することで、ユーザーが一度ログインするだけで複数のアプリケーションを利用できる環境を整え、業務の効率化と生産性向上を支えています。管理者も、アカウントの一元管理が可能になり、管理工数の削減が図れます。

テレワークの普及

新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけに、多くの企業でテレワークが普及しました。これにより、従業員が社外から社内システムやクラウドサービスにアクセスする機会が増加しました。一方で、リモート環境でのアクセスは、情報漏えいや不正アクセスなどのセキュリティリスクを伴うため、これらを防ぐ対策が急務となっています。

IdPは、アクセス制御や多要素認証を組み合わせることで、リモートでのアクセス環境におけるセキュリティ強化を実現します。従業員は安全にシステムへアクセスでき、管理者はリアルタイムでアクセス状況を監視できるため、セキュリティ対策と利便性の両立が可能です。

コンプライアンス意識の向上

企業にとってコンプライアンスの遵守は、社会的な信用を維持するための重要な課題です。不正アクセスや情報漏えいが発生した場合、対応が適切でなければ企業イメージが大きく損なわれるリスクがあるため、法規制への対応や内部統制の強化も求められています。

IdPは、アクセスログの記録や認証プロセスの可視化を通じて、コンプライアンス対応を支援しています。たとえば、ログイン履歴を簡単に追跡できるため、不正アクセスの原因究明や再発防止策の策定がスムーズに行えます。

また、認証情報の一元管理で人的ミスを防ぎ、トラブル発生時の迅速な対応を可能にする役割も果たします。

IdPが実現できること

IdPの仕組みを活用すれば主に以下の3つが実現し、DX化をより安全かつ便利に進められます。

IdP活用で実現できる3つの項目

  • シングルサインオン(SSO)
  • セキュリティ強化
  • 多要素認証

それぞれの項目について詳しく解説します。

シングルサインオン(SSO)

シングルサインオン(SSO)は、従業員が一度ログインするだけで、複数のアプリケーションやシステムを利用できる仕組みです。シングルサインオンを導入すれば、従業員は複数のIDやパスワードを覚える必要がなくなり、アカウント管理に伴う負担が軽減されます。

また、情シス担当者にとっても従業員の入退社やアクセス権限の変更時にアカウントを一元管理できるため、管理作業が効率化します。従来はパスワードを忘れた場合、ヘルプデスクへの問い合わせ対応が必要でしたが、IdPの導入により、これらの対応コストも削減可能です。

さらに、シングルサインオンによって業務のスムーズな進行が可能となり、結果として企業全体の生産性向上にもつながります。

セキュリティ強化

IdPは利便性を向上させるだけでなく、セキュリティを強化する役割も果たします。従来の認証方法では、IDやパスワードの漏えいが重大なリスクとなっていましたが、IdPはこれらの問題を解消できます。

たとえば問題が発生した場合でも、IdPを利用してアクセスログを確認すれば、不正なアクセス経路や原因をスムーズに特定可能です。そのためコンプライアンス対応が強化され、トラブルが早期に解決できます。

さらに、IdPは複数の要素を組み合わせてユーザー認証を行うため、単一の認証方式に依存するリスクを回避します。こうした仕組みによって、不正アクセスや情報漏えいといった脅威を未然に防ぐ環境が整います。

多要素認証

多要素認証は、知識情報や所持情報、生体情報といった異なる種類の情報を2つ以上組み合わせて認証を行う仕組みのことです。

知識情報ユーザー名やパスワードなど
所持情報ユーザーが所持するスマートフォンなどのデバイスや持ち物
生体情報ユーザーの指紋や静脈、網膜など

IdPは前述のとおり、複数の要素が組み合わさってユーザー認証を行うため、多要素認証が実現できます。

近年、多要素認証は多くのシステムやサービスで採用されており、セキュリティ強化に欠かせない手法として認識されています。IdPを活用すれば多要素認証の導入と運用が容易になり、企業全体で安全性を高められます

よくある質問

IdPとは?

IdPとは、ユーザー認証情報を一元管理するシステムやサービスを指しており、シングルサインオン(SSO)やセキュリティ強化に欠かせない役割を果たします。

詳しくは記事内「IdPとは」で解説しています。

IdPのメリットは?

IdPの導入により、認証作業の簡略化やセキュリティの向上、多要素認証の実現が可能になり、管理者の業務負担軽減にも役立ちます。

詳しくは記事内の「IdPが実現できること」を参考にしてください。

まとめ

企業のIT環境においてIdP(Identity Provider)は、認証作業の効率化とセキュリティの強化を実現するシステムです。シングルサインオン(SSO)や多要素認証の導入により、従業員の利便性を高めつつ、情報漏えいや不正アクセスを未然に防ぐことが可能です。

ITツールの導入による業務の効率化と安全性向上を同時に実現するため、自社でもIdPの導入を前向きに検討してみてください。

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