人事労務の基礎知識

休職とは?欠勤や休業との違い・期間・給与・手当の条件などを分かりやすく解説

休職とは?欠勤や休業との違い・期間・給与・手当の条件などを分かりやすく解説

休職とは、従業員の個人的な理由で、雇用契約を維持しながら労働義務を免除されることを指します。国が定める制度であり、勤務先の就業規則の内容に関係なく取得できます。

本記事では、休職の主な理由や休職中のお金まわり、診断書のもらい方など詳しく解説します。実際の手続きについては、休職を希望する従業員と労務担当者それぞれの立場別に解説しているので、ぜひ参考にしてください。

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休職とは

休職とは、従業員の個人的な理由で、雇用契約を維持しながら労働義務を免除されることを指します。

休職と欠勤の違い

休職は、会社が従業員の労働義務を正式に免除する制度です。そのため、事前に面談や申請などが行われたり、休職の理由に応じた手当や給付を受けることができたりします。

一方、欠勤は就労の義務がある日に従業員の自己都合で仕事を休んだ場合を指します。そのため、基本的に欠勤した日の賃金は発生しません。また、欠勤が長期間続くと雇用関係に影響を及ぼす可能性があります。

休職と休業の違い

休職は従業員の個人的な事情を理由としますが、休業は会社側の都合や育休や産休などの法的な制度によって会社を休むことをいいます。

たとえば、店舗の改装や設備の点検でお店を開けることができず、従業員を休みにした場合は会社都合による休業です。また、育休や産休は法的な制度による休みなので、休業に該当します。

休職では会社に給与の支払い義務はありませんが、休業では労働基準法第26条により、休業手当が発生します。

使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の百分の六十以上の手当を支払わなければならない。
厚生労働省「労働基準法第26条で定められた休業手当の計算について」

休職期間はどれくらい?

休職期間は会社ごとに異なりますが、一般的に最短3ヶ月から最長3年の範囲内で設定されています。

ただし、休職理由や従業員の勤続年数、企業規模などによって変動するため、具体的な期間については、各社の就業規則を確認しましょう。

休職中の給与について

休職中の給与や手当について

一般的に休職中の従業員に給与は支払われません。

ただし、一部の企業では、独自の休職規定に基づいて休職中でも給与が一部支給される場合があります。特に、会社都合の休業では、法律に基づき「休業手当」として平均賃金の6割以上を支払う義務があり、従業員が不利にならないよう、法的に保護されています。

また、給与支給がない場合は、様々な手当支給を受けることができます。例えば、病気や負傷による休職の場合、休職開始から4日目以降は、日本の健康保険制度に基づいて「傷病手当金」を受け取ることができます。

他にもさまざまな手当があり、以下で詳しく紹介していますので、ぜひ参考にしてください。

給与(賃金)

上述したように、一般的に休職中の従業員に給与は支払われません。

労働基準法24条では、労働時間に対してのみ賃金を支払うことが定められており、休職中の従業員に賃金を支払う義務はないためです。これを「ノーワーク・ノーペイの原則」といいます。

出典:e-Gov法令検索「労働基準法」

賞与・ボーナス

休職中の従業員には、給与と同じく賞与も発生しないことが一般的です。

ただし、就業規則で賞与の評価期間や支給基準が定められている場合、休職前の就労期間が対象となって賞与を受け取れる可能性があります。

休職中の社会保険料・税金について

社会保険料や税金は給与の支払いがなくても納付義務があります。

社会保険料

社会保険とは、健康保険・介護保険・厚生年金保険・雇用保険・労災保険の5つの保険の総称です。

その中で健康保険料・介護保険料・厚生年金保険料は、無給の休職期間中でも支払義務があります。

労働保険である雇用保険・労災保険は、支給される給与額に基づいて算出されるため、無給の場合には発生しません。


出典:埼玉県「休職中の保険料について」

社会保険料が免除になるケース

育休を取得する場合、会社が「育児休業等取得者申出書」を提出することで、子どもが3歳になるまでの期間において、健康保険・厚生年金保険の保険料が会社負担分・労働者負担分ともに免除されます。


出典:日本年金機構「育児休業等期間中の 社会保険料免除要件が見直されます。」

税金

給与から発生する税金は、大きく「所得税」と「住民税」の2種類に分かれます。

所得税は、毎月の給与から源泉徴収されるため、無給の休職の場合は発生しません。

一方、住民税は前年の収入に基づいて納税額が決定されるため、休職中であっても、前年度の収入に応じた住民税を毎月納付する必要があります。

休職・休業中に受給できる手当

休職中に受け取ることができる手当は状況に応じてさまざまな種類があります。

混合されがちですが、出産・育児・介護による休みは休職ではなく休業に該当し、それぞれ手当が適用されます。

ここでは、以下の手当について支給額・支給期間・支給条件について詳しく解説します。

休職中に受給できる手当
・傷病手当金
・会社の規定に従った手当
・労災保険給付金

休業中に受給できる手当
・出産手当金
・育児休業給付金
・介護休業給付金

傷病手当金

傷病手当金は、社会保険に加入している人が、プライベートの病気やケガで業務に支障をきたし、休職せざるを得ない場合に受け取れる給付金です。

傷病手当金の1日あたりの金額は以下の計算式で求められ、支給期間は仕事を休んだ日から3日を除いた4日目(支給開始日)からから通算して1年6ヶ月です。

傷病手当金(1日あたり) = 支給開始日以前の継続した12ヶ月間の平均給与 ÷ 30日 × 2/3
たとえば、休職前の平均給与が30万円の会社員に支給される1日あたりの傷病手当金は、「30万円 ÷ 30日 ×2/3 = 1,500円」となります。

会社の規定に従った手当

会社の規定で休職中に支払われる手当が設けられている場合は、それに応じて手当金を受け取ることができます。会社によって、手当の有無や給付期間などは異なるため、必ず確認しましょう。

労災保険給付金

労災保険給付金は、労働者が業務上や通勤途中に病気やケガをした場合に、補償を受けられるものです。

労災保険による休業中の経済的支援には、「休業補償給付」と「休業特別支給金」の2種類があります。これらの支給額は以下のように計算されます。

休業補償給付:給与額の60%
休業特別支給金:給与額の20%
これらを合わせると、給与額の80%に相当する金額が支給されます。医師の指示で会社を休んだ4日目から支払われます。

労災の休業補償に期間制限はありませんが、原則として、補償の要件が満たされる限り補償期間が続きます。

労災保険が継続される条件

・業務上の理由や通勤中に、負傷又は疾病にかかった場合
・療養のために労働することができない状態にある場合
・賃金を受けていない場合

出産手当金

産休する従業員は、健康保険の出産手当金を受給できます。

手当金の受給期間は、出産日以前42日(多胎妊娠の場合は98日)から出産日翌日以降56日までの範囲で、給与の支払いがなかった期間です。支給金額は給与額の約3分の2です。

出産手当金の対象となる期間
出典:厚生労働省「ⅱ 労働基準法における母性保護規定」

育児休業給付金

健康保険に加入している従業員は出産後、子どもが1歳になるまで育児休業給付金を受け取ることができます。

支給金額は、育児休業開始から180日目までは給与額の約2/3、181日目以降は給与額の約1/2です。

保育園に預けることができない場合は、子どもが2歳になる前日までの期間が育児休業給付金の支給対象となります。

なお、産休期間(出生日の翌日から8週間)は育児休業給付金の対象外なので注意しましょう。

介護休業給付金

介護休業給付金とは、2週間以上に渡り家族を介護するために休業した場合に受け取れるものです。

支給額は給与額の約2/3、支給期間は対象家族1人につき93日までとされています。

介護休業給付金を受け取るには、従業員本人が雇用保険に加入していることと、介護する親族との関係性が範囲内であることが条件です。

介護休職の対象範囲は、従業員本人の配偶者・父母・子ども・祖父母・兄弟姉妹・孫・配偶者の父母です。

介護休職の対象親族の範囲
出典:厚生労働省「介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」

休職の主な理由

従業員が休職する主な理由として以下が挙げられます。

  • 私傷病休職(適応障害・うつ病など)
  • 事故欠勤休職
  • 自己都合休職
  • 調整休職
  • 公職就任休職
  • 起訴休職
  • 組合専従による休職
  • 出向による休職

私傷病休職(適応障害・うつ病など)

私傷病休職とは、業務や通勤以外の原因による病気やケガを理由とする休職を指します。

適応障害やうつ病などのメンタルヘルス問題も、私傷病休職制度の対象となることが多いです。

事故欠勤休職

事故欠勤休職とは、傷病以外の自己都合による休職を指します。具体的には、何らかの容疑で逮捕・勾留されたケースなどが該当します。

「事故」という言葉が含まれていますが、交通事故などによる欠勤を指すものではありません。交通事故などで会社を休む場合、通勤中であれば労災扱い、プライベート時の事故であれば私傷病休職扱いとなります。

自己都合休職

自己都合休職とは、個人的な事情や希望を理由とする休職を指します。

たとえば、ボランティア活動への参加や、仕事と直接関係のない資格の取得による一定期間の休職が該当します。

留学休職

留学休職とは、従業員が自己啓発やキャリアアップを目的として海外留学をする際に利用できる休職制度です。

この制度には主に2つのタイプがあります。1つは私費留学で、これは従業員の希望により行われる留学であり、通常は無給での休職となります。

もう1つは会社の福利厚生の一環として留学制度が導入されているケースです。この場合、休職中の給与・学費・滞在費・渡航費などは、会社から支給されることが多いです。

留学休職制度は会社によって異なるため、必ず事前に確認しましょう。

公職就任休職

公職就任休職とは、従業員が議員・知事・市町村長などの公職に就き、会社の業務と両立ができない場合に利用する休職を指します。

起訴休業

起訴休職とは、従業員が刑事事件に関与し被告人として起訴された場合に、一時的に休職扱いとする制度を指します。

組合専従による休職

組合専従による休職とは、労働組合の業務に専念するために、一時的に休職扱いとする制度を指します。

専従者となる従業員に対しては、専従者となった従業員の労働対価は、会社ではなく労働組合の組合費から支払われます。

出向による休職

出向による休職とは、会社と労働者の雇用関係を維持したまま、労働者が別の会社で働くことを指します。

出向には出向元企業に籍を残したままの在籍出向と、籍ごと出向先企業に移す転籍出向があり、在籍出向の場合に休職扱いとなります。

休職手続き・診断書のもらい方

休職するためには、従業員本人と労務担当それぞれで準備が必要です。

ここでは、立場別に準備するものや対応すべきことについて解説します。

休職する従業員が準備・やるべきこと

休職期間や手当の有無は会社によって異なります。従業員はまず、勤めている会社の就業規則を確認しましょう。

従業員が休職するまでに行う手続きの具体的な流れは以下のとおりです。

休職する従業員が行う手続き

① 就業規則を確認する
② 疾病が原因で休職する場合は病院で診断書をもらう
③ 診断書と休職届けを上司に提出する
④ 労務担当者と必要な手続きを行う

診断書のもらい方

休職診断書をもらうには、自分の症状に適した医療機関を受診し、医師の診察を受ける必要があります。たとえば、うつ病やメンタルヘルス不調の場合は精神科や心療内科を受診します。

医師が休職を必要と判断した場合は、病名・症状・休職期間などを記載した診断書が発行されるので、それを会社に提出しましょう。

なお、発行手数料は2,000円から10,000円程度で、従業員本人が負担するのが一般的です。

労務担当者が準備・やるべきこと

従業員が休職を希望した際の、手順は下記になります。

従急な休職申請で慌てないよう、手続きの流れをしっかりと把握しておきましょう。

労務担当者が行う手続き

① 会社の就業規則などから休職理由が妥当かを確認する
② 従業員から休職届の受領する(傷病の場合は診断書を受け取る)
③ 休職期間の決定
④ 社会保険や住民税の支払方法を確認する
⑤ 就業規則に則って休職中の給与や手当を決定
⑥ 傷病手当金や労災保険給付金の対象者の場合、必要書類を準備する
⑦ 休職中の連絡方法を確認する

まとめ

休職とは、従業員の個人的な理由で、雇用契約を維持しながら労働義務を免除されることを指します。

休職期間は会社ごとに異なりますが、一般的に最短3ヶ月から最長3年の範囲内で設定されていることが多いです。

休職期間中は基本給与は支払われません。ただし、状況に応じて手当が受け取れることがあります。また、無給でも社会保険料や住民税などの支払義務はあるので注意しましょう。

休職するには、診断書を用意したり会社側と面談をしたり、一定の準備が必要です。会社側も休職の理由に応じて、今後の対策案などを検討することが大切です。

よくある質問

休職とは?

休職とは、従業員の個人的な理由で、雇用契約を維持しながら労働義務を免除されることを指します。

就労の義務がある日に従業員の自己都合で仕事を休む「欠勤」や、会社側の都合や育休や産休などの法的な制度によって会社を休む「休業」とは異なります。

うつ・メンタルヘルス不調で休職できる期間は?

休職は法律で定められていないため、休職期間については会社ごとに自由に設定できます。

なお、メンタル不調を理由に休職した場合の平均期間は107日(約3.5ヶ月)とされています。


出典:厚生労働省「主治医と産業医の連携に関する有効な手法の提案に関する研究」

休職は何ヶ月でクビになりますか?

日本の労働法では休職者の権利が保護されているため、休職が理由で解雇することは違法とされています。

ただし、会社の就業規則に「休職期間が満了するまでに復職できない場合、雇用関係が終了する」旨が記されている場合は解雇の可能性があります。

休職期間が長引く可能性がある場合には会社側の担当者と面談を行い、今後について話し合いましょう。

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