経営管理の基礎知識

BPaaSとは?BPO・SaaSとの違いや導入メリット、効率化の事例を解説

BPaaSとは?BPO・SaaSとの違いや導入メリット、効率化の事例を解説

BPaaS(ビーパース)は、自社の生産性を高めるためにアウトソーシング化が進むなか、注目度が上がっているサービスの一つです。社内ではリソースやノウハウの観点から対応しきれない業務プロセスを外部委託できるクラウドサービスのことを指します。

本記事では、BPaaSを活用できる業務から、導入のメリット・デメリット、成功事例までを解説します。

目次

BPaaSとは

BPaaS(ビーパース)とは「Business Process as a Service」の略称で、日本語では「業務プロセスアウトソーシングサービス」と訳されます。

わかりやすく説明すると、企業が社内で行っていたさまざま業務を、一連の業務プロセスごと外部企業に委託できるクラウドサービスのことです。

BPaaSの市場規模

BPaaSは、世界的に急速な市場規模の拡大が見込まれています。調査会社によって数値に多少の違いはあるものの、ある調査では2022年に56億米ドル超であった市場が、2035年までには約198億米ドル規模に達すると予測されています。

こうした予測は、多くの企業が業務効率化と生産性向上を求めるなかで、BPaaSが有効な手段として認識されつつあることを示しています。

BPaaSとBPO・SaaSとの違い

BPaaSとBPO・SaaSとの違い


BPaaSについて調べると、BPOやSaaSという言葉がたびたび登場して違いに迷うこともあるかもしれません。

BPOは「Business Process Outsourcing」の略称で、企業が有する業務プロセスを外部委託する取り組みのことをいいます。一方、SaaSとはクラウド型ワークフローシステムの一種で、事業者側のサーバー上にあるソフトウェアをインターネットを介して利用できるサービスのことです。いずれも方法は異なりますが、社内の業務プロセスに外部の技術や専門性を取り入れることを指しています。

BPaaSはいわば、これら2つを組み合わせたものであり、「クラウドシステムを通して、社内業務を外部に委託できるサービス」です。

【関連記事】
BPOサービスとは?用語の意味や導入メリットを簡単に解説

BPaaSが注目されている理由

BPaaSが注目を集めている最大の理由の一つに、多くの業界で深刻化している人手不足が挙げられます。限られた人員で従来の業務量をこなし、さらに生産性を向上させる必要に迫られるなかで、ノンコア業務を中心に外部の専門知識やリソースを活用できるBPaaSへの期待が高まっているのです。

また、SaaSをはじめとするクラウド技術の進化と普及も、BPaaSの成長を後押ししています。近年は多様な業務に対応したSaaSが多く登場しており、それらを活用することで、より効率的かつ柔軟な業務プロセスの構築が可能になっています。

さらに、BPaaSは従量課金制で提供されることが多く、初期投資を抑えながら必要なサービスだけを利用できます。そのため、リソースが限られる中小企業やスタートアップにとっても導入しやすいというメリットがあり、企業規模を問わず広く活用されています。

BPaaSを活用できる業務

BPaaSは、バックオフィス業務を中心とした幅広い業務において活用されています。具体的な例は以下のとおりです。

カスタマーサービス

問い合わせ対応やクレーム処理、テクニカルサポートなど、顧客との接点となるカスタマーサービス業務は、BPaaSの活用が進んでいる分野の一つです。

AIチャットボットやCRMシステムといった最新技術と専門オペレーターを組み合わせることで、24時間365日体制の構築や、より質の高い顧客対応を実現できるようになります。

人事労務・経理

給与計算、勤怠管理、採用業務などの人事労務関連業務、請求書処理、経費精算、決算業務などの経理業務は、定型的な作業が多い傾向にあり、BPaaSの活用に適しています。

専門知識を持つ外部リソースに委託することで、法改正への対応や業務の正確性が向上し、従業員をよりコア業務へ集中させられるようになります。

IT運用

システムの監視やメンテナンス、ヘルプデスク業務などのIT運用管理も、BPaaSが活用できる分野です。

専門的なスキルが求められるIT運用において、必ずしも常時社内に担当者を配置する必要がない場合には、BPaaSを活用することでコストを抑えながら安定したIT環境を維持できます。

マーケティング

市場調査やデータ分析、広告運用といったマーケティング業務もBPaaSの活用によって効率化できます。独自のノウハウや最新ツールを保有する外部企業に委託することで、より効果的なマーケティング戦略が実行できるようになります。

販売支援

受発注管理や在庫管理、ECサイト運営など、販売に関連するプロセスにもBPaaSが活用できます。とくに、近年のEC市場の拡大に伴って、物流を含めた包括的な販売支援サービスとしてBPaaSの需要が高まっています。

BPaaSのメリット

BPaaSはクラウドシステムを活用することによる利便性の向上だけでなく、ビジネスにおけるさまざまなメリットが期待できます。

業務効率化を図れる

業務をシステム上で遂行・管理する場合、従来の紙ベースのプロセスとは違い、従業員がITに関する知識やシステムの操作方法を新たに習得する必要があります。従業員のITリテラシーによっては、かえって業務負担が増えてしまう点がネックでした。

しかし専門知識や実績のある外部のベンダーに業務をまるごと委託することにより、社内で業務を遂行した場合にかかる時間やコストを削減できるうえ、業務品質の向上も期待できます。

外部委託によって業務が手離れした従業員は、社内で対応すべきコア業務に集中することができます。業務の効率化はもちろん、最終的には事業の成長や顧客満足度のアップにもつながる可能性があるでしょう。

コスト削減につながる

労働人口の減少や高齢化が進むなかで、専門性を持った人材の採用・育成は多くの企業が課題として掲げています。BPaaSを活用すると、本来は社内に必要な専門性を外部から調達することが可能です。

これによって自社の従業員の採用や育成にかかる人件費をはじめ、業務システムの構築や運用にかかる費用なども削減できます。また、社内で人材を確保する必要がなくなるため、オフィススペースの賃料や福利厚生などのコスト削減にもつながります。

専門知識や知見を蓄積できる

従来の一般的な業務委託の場合、外部に業務を一任すると丸投げ状態になってしまい、業務に関する専門知識やノウハウが社内に蓄積されないという課題がありました。

しかしBPaaSは、クラウド上で外部委託先とのデータ共有が可能であるため、社内の従業員がそれらのデータを閲覧・活用できます。そのため、外部委託による業務効率化と、社内での知識やノウハウの蓄積を両立させられます。

BPaaSのデメリット

よいことばかりのように思えるBPaaSにも、デメリットは存在します。メリットとデメリットを勘案したうえで、自社の環境や課題に適したシステムを導入することが重要です。

導入コストがかかる

BPaaSを活用して社内業務を外部委託するにあたっては、一定の費用がかかります。

導入時のイニシャルコストと運用のランニングコストを考えると、割高に感じられるかもしれません。ただし、従業員の人件費や育成にかかるコスト、業務効率の改善などを考慮すると、最終的にはコスト削減につながります。

セキュリティ面のリスクがある

外部委託する業務によっては個人情報や機密情報を取り扱うことがあるため、すべて社内で業務を完結させるよりも、セキュリティ面のリスクが生じるケースもありえます。

業務に必要な情報を外部に提供する以上、情報漏えいがまったく起こらないとは言い切れません。サービス導入にあたっては、委託先のセキュリティ体制が十分に整備されているか、あらかじめ精査する必要があります。

ベンダーの変更や解約に手間がかかる

BPaaSの場合は一作業ではなく、システム上で業務プロセスごと委託します。導入後に思ったような効果が出なかったとしても、ベンダーをすぐに変更したり、解約したりすることは簡単にはできません。

ベンダーを選定する際は価格面だけで選ぶのではなく、自社の状況にあわせて柔軟な対応をしながら中長期的に支援してくれるベンダーを選ぶことが重要です。

BPaaSの導入に向いている企業

さまざまなメリットのあるBPaaSですが、とくに次のような課題やニーズのある企業にとっては導入メリットが大きいといえます。

生産性を向上させたい企業

従業員のリソースがノンコア業務に多く割かれており、本来注力すべきコア業務に集中できていないことを課題としている企業であれば、BPaaSの活用によって従業員をより戦略的な業務に配置転換でき、生産性向上につながる可能性があります。

また、専門知識やノウハウが必要な業務が発生しているものの、社内に十分なスキルをもつ人材がいないという場合も、BPaaSの活用で業務品質と生産性の向上が期待できるでしょう。

事業拡大を目指している企業

BPaaSは、急速な事業拡大を目指す企業や新規事業を立ち上げるスタートアップなど、柔軟かつ迅速に業務体制を構築したい企業にも適しています。

自社で専任の人材を採用して一から教育するよりも、BPaaSを活用するほうがスピーディーに業務を開始できます。

BPaaS導入を成功させるポイント

前述のとおり、BPaaSは一度導入すると、すぐには変更できません。導入を成功させるために、以下のポイントを押さえて検討を進めましょう。

目的を明確化する

BPaaSの導入は、あくまでも目的のための手段です。導入して満足してしまっては意味がないため、「従業員の残業時間を減らしたい」「専門的な知見から業務をスムーズに進めたい」など、導入する目的を明らかにしましょう。

さらに十分な成果を得るには、目的を明確にしたうえで、成果を評価する指標を設定することも大切です。従業員にも目的や評価指標などを共有することで、BPaaS導入への理解促進とモチベーションアップにつながります。

導入後の運用体制を整備する

BPaaS導入後は、自社とベンダーとの業務分掌と責任範囲を明確にし、万が一トラブルやエラーが発生した場合にも迅速に対処できるように運用体制を整備しておくことが重要です。

また、最初に設定した評価指標に基づいて、どの程度の業務効率化や生産性向上が図れているかを定期的に可視化しましょう。PDCAを回しながら改善を重ねることで、スムーズな運用を実現できます。

適切なBPaaSベンダーを選ぶ

BPaaSを提供するベンダーは数多く存在するため、検討する段階で複数のベンダーが候補となるケースもあります。委託したい業務内容や自社ならではの環境や状況を踏まえて、成果が期待できる実績豊富なベンダーを選びましょう。

想定しうるトラブルやエラーに対して、どのようなフォローが可能なのかをあらかじめベンダーに確認し、導入後もスムーズな運用を実現できそうなベンダーを見極めることが大切です。

また、BPaaSを提供するベンダーには、自社製品のSaaSを利用するベンダーと、他社製品のSaaSを利用するベンダーがいます。自社製品のSaaSを利用するベンダーのサービスのほうが、機能や操作の理解度が高く、トラブルやエラーへの対応も迅速であるため、運用リスクが低い傾向にあります。

BPaaS導入の成功事例

介護支援システム「ライブコネクト」の開発と販売を行うZ-Worksは、IoT介護分野でパイオニア的存在になっている企業です。

設立時にはIoTサービスの提供をメインとしていましたが、よりよいサービスを提供できるように、当初の「センサー機器の提供」だけでなくクラウドサービスやアプリの開発まで行う形に事業転換を行いました。

その際、課題として噴出したのがバックオフィスの人材不足です。それを解消するべく導入されたのが「freee人事労務アウトソース」でした。 給与や賞与の計算、入退社の手続き、年末調整など人事労務の業務を全般的にアウトソースすることで、限られた従業員数でもコア事業に集中できる環境を確立し、安定して業務を回すことに成功しています。

出典:フリー株式会社「事例紹介|株式会社Z-Works」

まとめ

BPaaS(ビーパース)の導入は、業務効率化やコスト削減が図れる点でメリットは大きいといえますが、セキュリティ面でのリスクが高まったり、導入コストがかかったりといったデメリットもあります。

BPaaSは一度導入すると、短期間では解約が難しいため、自社に適したベンダー選びとサービス選定が肝要です。

よくある質問

BPaaSとBPO・SaaSとの違いは?

BPOはBPOは「Business Process Outsourcing」の略称で、企業が有する業務プロセスを外部委託する取り組みのことです。

SaaSとは事業者側のサーバー上にあるソフトウェアをインターネットを介して利用できるサービスを指します。BPaaSはこれら2つを組み合わせたもので「クラウドシステムを通し、社内業務を外部に委託できるサービス」です。

詳しくは記事内「BPaaSとは」をご覧ください。

BPaaSを導入するメリットは?

BPaaSを導入した際、以下のようなメリットが期待できます。

  • 業務効率化を図れる
  • コスト削減につながる
  • 専門知識や知見を蓄積できる

詳しくは記事内「BPaaSのメリット」をご覧ください。

見たい数字をリアルタイムに出力できる会計ソフト

freee会計は短期での導入と運用開始が実現できる統合型の会計システムです。紙の管理や保管等の業務を一掃し、クラウドを活用したデジタル化をスムーズに実現できるので、経理業務にかかる作業時間もコストも削減できます。

freee会計なら経営管理に必要なデータがいつでも出力できる