新しいユーザーへのリーチを広げる足がかりに freeeアプリストアに掲載して変わった現場の声
バックオフィス業務をもっと簡単に、快適にすることを目的にリリースされた「freeeアプリストア」。現在、およそ30のアプリを掲載し、サービス提供先の事業者とfreeeユーザーを繋いでいる。
前編では、「日本最大級のアプリケーションプラットフォーム」を目指すfreeeアプリストア開発の経緯や、リリース後の手応えについて開発者に話を聞いた。一方、実際にサービスを掲載する側としては、どのような影響を感じているのだろうか? 農業者向けクラウドサービス「Agrion」を提供する株式会社TrexEdgeAgrion製品責任の斎藤脩平さんと、スケジュール管理と経路検索サービス「RODEM」を提供する株式会社ヴァル研究所ソリューション開発チームの鈴木隼人さんにお話を聞いた。
ユーザーが求めたのはfreeeの「シンプルさ」
――まずは、どんなサービスを提供しているのか教えてください。
斎藤 Agrionは農業者向けのクラウドサービスで、作業時間を記録・分析する労務管理「Agrion農業日誌」と、受注・販売に係わる「Agrion販売管理」の二つの機能を提供しています。農業日誌の主な目的は、作業効率の改善です。準備・作業・片付けにいたるすべての作業時間を記録するとグラフとして見える化され、ムダを省くための有効なデータとなるんです。一方、販売管理の目的としては、注文管理・伝票作成・売上管理などの機能を一気に集約し、面倒な事務作業を効率化するというところにあります。
鈴木 弊社では経路検索サービス「駅すぱあと」を開発・運営しているのですが、「RODEM」はそれに連携した新しいサービスとして開発されました。アプリのテーマはずばり、「ビジネスマンを『めんどくさい』から解放する」。カレンダー上にアポイント先と時間を入力すると、駅すぱあとを経由して自動的に経路と交通費が検索されます。検索結果はカレンダーに記録されるので、当日改めて検索し直す必要もありませんし、月末の経費精算まで引き継ぐことができるんです。
――freeeとの連携を決めたきっかけは?
斎藤 実はAgrionを使ってくださっていた方の中に、freeeのユーザーさんがいて。昨年11月にfreee会計の方で農業対応が始まったことを知り、「請求書のデータを連携できるようになったら、ユーザーさんに喜ばれるのでは?」と考えたところが大きかったですね。普段の作業でパソコンやスマホを利用しない方からも、「freeeってシンプルなので使いやすいよね」という声が上がっていたんです。
鈴木 RODEMとfreeeを連携させようと考えたのは、RODEMの「スケジュール管理から経費精算まで」というサービスの特性上、業務が色々な部署をまたぐという問題があったからです。
freeeとの連携で、取りこぼしていた層へのリーチが可能に
――具体的にはどのような問題があったのでしょうか?
鈴木 営業担当の方がRODEMのサービスを気に入ってくださって、トライアルまで進んでも、経理の方で「その企業が使っている経費精算システムに連携しない」ということで導入に至らないことがあったんです。「freeeと提携していないの?」とピンポイントで聞かれることもあって。特に、弊社では営業力の行き届かない小さな企業や個人事業主へも比較的リーチしやすいという理由で、freeeとの提携はメリットがあると感じました。
斎藤 ユーザーにリーチしやすいというところでは、Agrionも同様の実感を得ることができています。肌感覚ではありますが、Agrionのユーザーの多くが二代目の方だったり、一度企業で働いてから就農されたりしている方が多く、freeeにも馴染みが深いです。また、freeeアプリストアを閲覧している方は導入の意思決定ができる立場にいる方が多いと思います。すでにクラウドサービスを利用している意思決定者に訴求できることはやはり価値があることだな、と。
――freeeとの連携により、以前は届かなかった層にもリーチしやすくなった、と。その他、freeeとの連携で発見できたことなどは何かありますか?
鈴木 相談に行ってから実装までがとにかく速かったんですよ。商談からモック作成、freee社内での検証を経て、リリースまで2週間ほどでした。「こんなに簡単に連携ってできるんだ!」と社内からも驚きの声が上がったくらいで。
鈴木 従来、連携機能の実装には時間がかかることも多く、開発リソースとの兼ね合いで対応出来ないこともあったのですが、APIが整備されていることでこんなに簡単に連携できるなら他のサービスもやってみてもいいんじゃないか、という雰囲気になりました。
斎藤 うちはどちらかというと、「弊社とも連携しませんか」という声をかけていただくことが増えました。これは思わぬ収穫で、freeeと連携することで業界内でも注目されるんだ、ということを実感していますね。
法人から個人事業主までターゲット層を拡大したい
――アプリストアにサービスを掲載して、エンドユーザーからはどんな反応がありましたか?
斎藤 実は今日も、freeeと連携しているユーザーの方から「神機能ですね」という感想をいただきました(笑)。できるだけ細かいデータを付与して渡すというのはコンセプトとしてやっていて、freeeとの連携によって「どの取引先でどの品目がいくつ売れたか」というのが明細レベルで可視化できるようになったことがすごく喜ばれています。
鈴木 アプリストアからいらっしゃったかどうかまではまだ見えていないのですが、トライアル申込時の備考欄に「freee連携したいです」と書かれる方が増えてきました。freeeとの連携で課金システムなどが可能になれば、今後は個人事業主の方も広くターゲットにしていけるな、と期待が持てます。
斎藤 今後、freee連携のメリットをさらに活かすために欲しいのは、PV計測など流入数がわかるような機能ですね。「こんなに見られているんだ」と知ることができれば、掲載者にとってはインパクトが大きいと思います。あとは、どうしても放ったらかしになってしまいがちなメンテナンス機能が充実するとうれしいですね。今後とも、freeeeさんとはアライアンスを強化していきたいと考えています。
前編:freeeアプリストアで加速するAPI連携 開発者と一緒にユーザーの課題を解決するために
(取材・執筆:波多野 友子 編集:阿部綾奈/ノオト)